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第135話 雌雄の違いが予想外
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願いの一つは簡単だ。年に一回でいいからミミに会いたい。きょとんとした契約主に、白蛇神は淡々と説明した。このドラゴンは、巨大化したミミに締め倒されたことがある。それ以降、惚れたと公言して追い回していた。
「ミミはいいの? 私の意見より、当事者の判断が重要よ」
ほぉ……感心するドラコニクスと、これまた目を見開くミミ。どちらも驚いた様子を隠そうともしない。
『巫女として命じぬのか』
「だって、本人が嫌なら断ったほうがいいわ。私があと六十年生きたら、六十回も会うのよ?」
そんなの辛いじゃない。大陸の平和と秤にかけて、個人の感情を優先する。皇族として間違った判断だが、神様を祀る巫女ならおかしくないのか。いや、隣大陸の問題だと投げたのか。
探るようなドラコニクスの視線に、アイリーンは肩を竦めた。
「私はミミの主なの、だけど命令したくないわ。大切な神様で、私のお友達よ。辛かった時に話を聞いてくれたり、一緒に悪戯したり。無理強いなんて絶対に嫌」
間違っていても譲らない。そう言い切ったアイリーンに、ルイは額を押さえた。言いたいことはわかるが、拒まれたら……まあ、仕方ないか。元から他国の神様を頼らないと解決できないのだ。嫌だと言われたら諦めて、別の道を探るのが正解だろう。
何も知らず、悪だと決めつけて退治しようとした。その時点で、魔力の源であるドラゴンに勝てない未来があるだけ。滅びて元々なら、希望がある方へ賭けるのも手段だった。
苦笑いするルイと、悪びれないアイリーンを交互に見て、ミミは赤い舌をちろりと出した。二つに割れた先端で、アイリーンの額を舐める。ふわりと光って、文字が浮かんだ。
アイリーンは見えないし、ルイも読み取れない。だが、読めてしまったココは眉を顰めた。
『ミミは本当にそれでいいの?』
『自分で決めたことだよ。心配はいらない』
神々のわかったような会話に、人間はついていけない。何が起きたの? と尋ねるアイリーンに、神狐はさらりとバラした。
『ドラゴンと契約してもいいってさ』
「本当?! ありがとう、ミミ。嫌になったらいつでも言ってね。私が殴って止めるから」
『我が殴られるのか? それは敵わんな……無体な願いはせぬ。何しろ、白蛇は我の夫候補ゆえ』
――おっと?
目を見開いたアイリーンの前で、照れた白蛇が尾でドラゴンを叩く。小型化したドラコニクスは、あっさり吹き飛んだ。重量がないと、やや大きいトカゲなのか。思わず現実逃避したルイは、どうでもいいことを考えた。
「ミミって雄なの?」
『正確には雌雄同体、どちらでも問題ない』
問題ないんだ。へぇ……すごいね。アイリーンの顔が引き攣り、ココの冷めた声が上滑りした。神々の中でも、雌雄同体は珍しいようだ。
「それで、結婚するの?」
『結婚しないが、卵を産ませてやってもよい』
ミミがめちゃくちゃ譲歩したことで、ドラコニクスが復活した。恐ろしい速さで戻り、白蛇神の鼻先に抱きつく。二、三度振り落とされたが、まったく懲りずにうっとりとしがみついた。
ある意味、いい夫婦になるかも。ルイは許容量を超えた話に、天井を仰いで大きく息を吐き出した。俺も早く告白して、未来の話をしたい。
「ミミはいいの? 私の意見より、当事者の判断が重要よ」
ほぉ……感心するドラコニクスと、これまた目を見開くミミ。どちらも驚いた様子を隠そうともしない。
『巫女として命じぬのか』
「だって、本人が嫌なら断ったほうがいいわ。私があと六十年生きたら、六十回も会うのよ?」
そんなの辛いじゃない。大陸の平和と秤にかけて、個人の感情を優先する。皇族として間違った判断だが、神様を祀る巫女ならおかしくないのか。いや、隣大陸の問題だと投げたのか。
探るようなドラコニクスの視線に、アイリーンは肩を竦めた。
「私はミミの主なの、だけど命令したくないわ。大切な神様で、私のお友達よ。辛かった時に話を聞いてくれたり、一緒に悪戯したり。無理強いなんて絶対に嫌」
間違っていても譲らない。そう言い切ったアイリーンに、ルイは額を押さえた。言いたいことはわかるが、拒まれたら……まあ、仕方ないか。元から他国の神様を頼らないと解決できないのだ。嫌だと言われたら諦めて、別の道を探るのが正解だろう。
何も知らず、悪だと決めつけて退治しようとした。その時点で、魔力の源であるドラゴンに勝てない未来があるだけ。滅びて元々なら、希望がある方へ賭けるのも手段だった。
苦笑いするルイと、悪びれないアイリーンを交互に見て、ミミは赤い舌をちろりと出した。二つに割れた先端で、アイリーンの額を舐める。ふわりと光って、文字が浮かんだ。
アイリーンは見えないし、ルイも読み取れない。だが、読めてしまったココは眉を顰めた。
『ミミは本当にそれでいいの?』
『自分で決めたことだよ。心配はいらない』
神々のわかったような会話に、人間はついていけない。何が起きたの? と尋ねるアイリーンに、神狐はさらりとバラした。
『ドラゴンと契約してもいいってさ』
「本当?! ありがとう、ミミ。嫌になったらいつでも言ってね。私が殴って止めるから」
『我が殴られるのか? それは敵わんな……無体な願いはせぬ。何しろ、白蛇は我の夫候補ゆえ』
――おっと?
目を見開いたアイリーンの前で、照れた白蛇が尾でドラゴンを叩く。小型化したドラコニクスは、あっさり吹き飛んだ。重量がないと、やや大きいトカゲなのか。思わず現実逃避したルイは、どうでもいいことを考えた。
「ミミって雄なの?」
『正確には雌雄同体、どちらでも問題ない』
問題ないんだ。へぇ……すごいね。アイリーンの顔が引き攣り、ココの冷めた声が上滑りした。神々の中でも、雌雄同体は珍しいようだ。
「それで、結婚するの?」
『結婚しないが、卵を産ませてやってもよい』
ミミがめちゃくちゃ譲歩したことで、ドラコニクスが復活した。恐ろしい速さで戻り、白蛇神の鼻先に抱きつく。二、三度振り落とされたが、まったく懲りずにうっとりとしがみついた。
ある意味、いい夫婦になるかも。ルイは許容量を超えた話に、天井を仰いで大きく息を吐き出した。俺も早く告白して、未来の話をしたい。
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