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第79話 リンに任せたら失敗する
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驚き過ぎて、叫んでいた。だって、王子様なのよ? なんで深夜の墓所にいるのよ! てっきり墓所の番人だと思ったのに。うろうろ出歩いて、所有する屋敷の屋根に現れた。あそこでおにぎり頬張った子が、王子様だなんて思わないじゃない!!
「リン、あの……黙ってて悪かった。でも言い出せなくて」
素直に謝られてしまい、アイリーンは深呼吸する。申し訳なさそうなルイの表情に嘘はなくて、墓所を守ってた理由はともかく、何か理由があるんだろうなと感じた。アイリーン自身も、人に言えない失敗でフルール大陸にいたのだし。
文句を言うのは筋違いかも。冷静になって深呼吸する。アイリーンはぼそぼそと口の中で言い訳じみた謝罪を並べた。
「そりゃ、私だって言わなかったから? お互い様だけれど。驚いちゃったのよ。そんなに怒ってないわ」
律儀に理由を混ぜるアイリーンの膝で、ココはぺしんと尻尾で畳を叩いた。いろいろ気に入らないが、楽しそうな顔の帝が一番腹立たしい。その尻尾にじゃれるネネが、翻弄されて転がった。腹を見せて転がる子犬に、視線が集まる。
「えっと……」
「以前は神狐のココしか知らなかったわよね。この子は狗神のネネというの」
私と契約しているのよ。気づけば本題を避けて会話を続ける二人に、軌道修正する父が口を挟んだ。
「リン、話が逸れている。この二人は罪人なんだよ? このままだと強制送還になるが……」
帝である父が濁した言葉の先は「二度とこの国の土を踏めないからね」が含まれていた。入国禁止措置は、倭国で罪を犯した異国人に適用される。今までは陸続きの国に対して適用した事例しかないが、不名誉なことにフルール大陸初の適用者になりそうだ。
遠回しに、ここで願いを使わないと二度と会えないと脅された。アイリーンはそう受け取る。他に願いがあるわけじゃないし、使ってもいいかしら。そう思い口を開きかけたところで、ココが伸びあがって前足で唇を押さえた。
『本当に君は欲がないね。素直に願ったら損するだろ』
文句を言われて目を瞬く。そういうものなの? でも他に何が得られるのか、彼女は皆目見当がつかなかった。黙っていると示した途端、ココは膝から下りて巨大化する。
「う、うわっ!」
「……っ」
後ろに尻餅をついたルイの隣で、無言で震えるバロー。もしかして罪人だから生贄よろしく食べさせると思った? 堂々と立つ神狐は、にやりと笑う。牙が見えて恐ろしいかも知れないわね。アイリーンはくすくすと笑って、ココの尻尾を撫でた。
『セイラン帝、リンの願いは僕が使う。いいね?』
「畏まりまして」
人の世界で倭国の頂点に立とうと、神の一柱であるココより下だ。その意味で、主人となる巫女の特別さが際立つ。本来はココやネネの契約主であるアイリーンは、倭国で最も上位者だった。本人がその権限に気づいていないのが、ある意味残念だけれど。
『僕はそこの二人の所有権を主張する』
「リン、あの……黙ってて悪かった。でも言い出せなくて」
素直に謝られてしまい、アイリーンは深呼吸する。申し訳なさそうなルイの表情に嘘はなくて、墓所を守ってた理由はともかく、何か理由があるんだろうなと感じた。アイリーン自身も、人に言えない失敗でフルール大陸にいたのだし。
文句を言うのは筋違いかも。冷静になって深呼吸する。アイリーンはぼそぼそと口の中で言い訳じみた謝罪を並べた。
「そりゃ、私だって言わなかったから? お互い様だけれど。驚いちゃったのよ。そんなに怒ってないわ」
律儀に理由を混ぜるアイリーンの膝で、ココはぺしんと尻尾で畳を叩いた。いろいろ気に入らないが、楽しそうな顔の帝が一番腹立たしい。その尻尾にじゃれるネネが、翻弄されて転がった。腹を見せて転がる子犬に、視線が集まる。
「えっと……」
「以前は神狐のココしか知らなかったわよね。この子は狗神のネネというの」
私と契約しているのよ。気づけば本題を避けて会話を続ける二人に、軌道修正する父が口を挟んだ。
「リン、話が逸れている。この二人は罪人なんだよ? このままだと強制送還になるが……」
帝である父が濁した言葉の先は「二度とこの国の土を踏めないからね」が含まれていた。入国禁止措置は、倭国で罪を犯した異国人に適用される。今までは陸続きの国に対して適用した事例しかないが、不名誉なことにフルール大陸初の適用者になりそうだ。
遠回しに、ここで願いを使わないと二度と会えないと脅された。アイリーンはそう受け取る。他に願いがあるわけじゃないし、使ってもいいかしら。そう思い口を開きかけたところで、ココが伸びあがって前足で唇を押さえた。
『本当に君は欲がないね。素直に願ったら損するだろ』
文句を言われて目を瞬く。そういうものなの? でも他に何が得られるのか、彼女は皆目見当がつかなかった。黙っていると示した途端、ココは膝から下りて巨大化する。
「う、うわっ!」
「……っ」
後ろに尻餅をついたルイの隣で、無言で震えるバロー。もしかして罪人だから生贄よろしく食べさせると思った? 堂々と立つ神狐は、にやりと笑う。牙が見えて恐ろしいかも知れないわね。アイリーンはくすくすと笑って、ココの尻尾を撫でた。
『セイラン帝、リンの願いは僕が使う。いいね?』
「畏まりまして」
人の世界で倭国の頂点に立とうと、神の一柱であるココより下だ。その意味で、主人となる巫女の特別さが際立つ。本来はココやネネの契約主であるアイリーンは、倭国で最も上位者だった。本人がその権限に気づいていないのが、ある意味残念だけれど。
『僕はそこの二人の所有権を主張する』
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