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70.狭い選択肢がさらに減った

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 普通に考えて、派遣した騎士団の精鋭を逆さ吊りにしたら、新たな国交は難しいわけだ。琥珀が悪いんじゃない。的確に指示しなかった僕が悪い。結界で追い出してと頼めばよかった。

『反省は次回に生かすとして』

 次のチャンスがあればいいけど。ひとまず人を離して、結界で森に入れないようにしてくれと頼み直した。琥珀は疑問も持たず、素直に従ってくれる。やっぱり僕の頼み方が悪かったんだな。琥珀は素直ないい子だ。

「こうなったら脅し一択だろ。攻め込まれるぞ」

 シェンの言い分も最もだ。僕らにその意思はなかったと説明しても、突然森の木に襲われ逆さに吊るされた騎士は納得しない。現場を見た人や、その報告を受けた王族も同様だろう。だったら手を出したら滅ぼされると身に染みるまで脅して、こちらに手出しする気を無くさせる。

 なんて事だ。わざわざ却下した方法へ向かって事態が転がるなんて。

「人間は姑息で貪欲です。早めに手を打たないと、手遅れになりますよ」

 ベリアルも好戦的な態度だ。まあ、彼の言ってることも分かる。目に見える魔王という脅威があっても、人間は襲ってくるのだから。

『勇者って本当に生まれてないの?』

 琥珀が魔王と仮定して、次の勇者がまだ幼児なだけなんじゃないか。普通なら琥珀の年齢で、自覚はないだろう。

「生まれた可能性はあります。ただ琥珀王は魔王ではありません」

「理でいけば、琥珀王は別物だな」

 シェンも肯定した。つまり魔王じゃないから、対になる勇者は発生しない。となれば、圧倒的チートな琥珀の世界征服も可能だった。危険だから、今後はしっかり指示しよう。間違えると世界を滅ぼしかねない。

 にゃーと頭を擦り付けて甘える母猫ニーが僕の腹部に潜り込み、続いて子狼達も集まってきた。僕は知らなかったが、教育係の魔狼の話では、この子達は魔狼と普通の灰色狼の僕の間に生まれたハーフらしい。能力的には魔狼に近いとか。

『人間の国を攻めるとして、今いくつ国があるのかな』

 僕が知ってる知識は古いから、当てにならない。ベリアルがちらりとシェンに視線を送った。肩を竦め、古龍はあっさりと数を口にする。

「つい数日前に3つに割れた」

 ……僕が知ってる人間の国は2つだった。つまり、どちらかが分裂したのか。

『3つとも交渉した方がいいかな』

「簡単ですよ、古龍殿、私、琥珀王で手分けして脅せばいいのです。不安なので、琥珀王にはシドウ様が同行してください。森はバルテル殿が守ってくださるでしょう」

『それが一番いいか』

 全員で回ったら明らかに過剰戦力だ。3つの国が一致団結して「退治すべし」となったら面倒臭い。僕はこの時点で最良の策だと思った。もう少し冷静に考えるべきだったんだよ。だって、出向くメンバーが僕を除いて危険過ぎる。それに気づくべきだった。

 世の中は後悔で満ちている――たぶんね。
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