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98章 とんとん拍子に準備は進む
1337. ドレス選びは時間をかけて
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仕事を片付け、届く問題を処理しつつ……今日もまた執務室でリリスの準備で盛り上がる。お目付役のアスタロトが強制的に休暇療養中なので、止める者がいなかった。
「こっちはどうかしら」
「顔色が悪く見えるぞ」
新しいドレスの色が決まらず、アラクネも困惑気味だ。結婚式の前夜祭で着るドレスである。気合が入っていた。色と質感だけ決まれば、模様を織り込んで仕上げる予定だ。先が決まっているので、早く準備にかかりたい彼女達の言い分はわかる。だが迷うリリスの気持ちも理解できた。
「ラベンダーだと暗いのね」
「ミントはダメか?」
「それならピンクがいいわ」
結局ここに落ち着いてしまう。リリスの好きな色といえばピンク、これは幼い頃から変わらない。だが、結婚式に純白の絹にパールやピンクの宝石を縫い止めたドレスが決まっており、ピンクを前日に着ると被ってしまうのだ。
大公女達は、公式用ドレスの模様から連想される色付きドレスを着用し、ヴェールやコサージュなどの小物に共通の白を飾る。前日用のドレスは、公式ドレスを流用する予定だった。つまり、決まっていないのはリリスだけ。
「髪を完全に結い上げるなら、黒いドレスはどうだ?」
逆転の発想だった。白い肌が浮き上がって映えるだろう。慌ててアラクネが用意する。ルシファーの意見なら一度は検討するべきと考える彼女らは、思ったよりしっくりくるリリスの姿に目を瞬く。前日が黒で、翌日が白……意外といいかもしれない。
「お綺麗ですわね」
「白い肌に映えますわ」
「暗くならないかしら」
いつもと違い、前夜祭は夜だから。そう呟くリリスに、ルシファーが収納から大量の宝石を取り出した。きらきらと光を弾く宝石はどれも小粒だ。砕けてしまった残りや、小粒だが質の良い物を残してあった。
「これを散りばめてみてくれ。すごく大人っぽく仕上げると思うが」
「大人? ルシファーと並んでもおかしくないくらい、魅力的に見えるかしら」
黒い絹の上に両手で宝石を散らし、リリスは嬉しそうに笑う。この時点で前夜祭のドレスは決まりだった。本人の意向で、百合の花に似たデザインを採用する。ドレスのデザイン見本を指差して決めたリリスは、うっとりと目を閉じた。
「もうすぐルシファーのお嫁さんになれるのね」
「あんなに幼かったリリスが、もうお嫁さんか。とても美しく育ってくれて嬉しいぞ」
にっこり笑うルシファー、幸せそうなリリス。近づいて唇が触れそうな光景に、アラクネ達はうっとりと見惚れた。似合いの二人だが、ここでキスシーンが拝めるのか。人気小説家トリィ先生の新作に出てきそうなシーンだわ。
「ルシファー、魔法陣できたよ!! 早く来て……っ、ごめん」
自動的に異世界の裂け目を感知する魔法陣を作ったと、誇らしげに飛び込んだルキフェルが真っ赤になって顔を両手で覆った。後ろから入室しようとしたベールも足を止め、そっと視線を逸らす。
凝視する女性達と、目を逸らす男性達。明らかに反応が分かれた部屋で、ルシファーは溜め息を吐いた。私室じゃないから、キスを邪魔されても怒ることも出来ない。
「魔法陣が出来たのか? ルキフェル」
意図的に話を逸らすために尋ねれば、「あ、うん」と曖昧な返事をしながら魔法陣を描いた。すらすらと空中に描き出された魔法陣をじっくり確認し、その仕組みに気づく。なるほど、よく出来ていた。普段から周辺の魔力量を計測し続け、その数値が一定基準以上変化したら通報する。通報を確認した魔王城から、都度動けばいい。
「完璧だ。設置間隔は?」
「この魔法陣の範囲が100キロ四方だから、その中央に設置したとして200キロおきかな」
すぐさま設置にかかる費用と、管理のための部署設置の申請書類を作り上げ、その場で署名押印した。これで対策としては、打てる手を打った形だ。
根本的な解決が見られれば良いが、しばらくは対処療法で頑張るしかなさそうだった。
「こっちはどうかしら」
「顔色が悪く見えるぞ」
新しいドレスの色が決まらず、アラクネも困惑気味だ。結婚式の前夜祭で着るドレスである。気合が入っていた。色と質感だけ決まれば、模様を織り込んで仕上げる予定だ。先が決まっているので、早く準備にかかりたい彼女達の言い分はわかる。だが迷うリリスの気持ちも理解できた。
「ラベンダーだと暗いのね」
「ミントはダメか?」
「それならピンクがいいわ」
結局ここに落ち着いてしまう。リリスの好きな色といえばピンク、これは幼い頃から変わらない。だが、結婚式に純白の絹にパールやピンクの宝石を縫い止めたドレスが決まっており、ピンクを前日に着ると被ってしまうのだ。
大公女達は、公式用ドレスの模様から連想される色付きドレスを着用し、ヴェールやコサージュなどの小物に共通の白を飾る。前日用のドレスは、公式ドレスを流用する予定だった。つまり、決まっていないのはリリスだけ。
「髪を完全に結い上げるなら、黒いドレスはどうだ?」
逆転の発想だった。白い肌が浮き上がって映えるだろう。慌ててアラクネが用意する。ルシファーの意見なら一度は検討するべきと考える彼女らは、思ったよりしっくりくるリリスの姿に目を瞬く。前日が黒で、翌日が白……意外といいかもしれない。
「お綺麗ですわね」
「白い肌に映えますわ」
「暗くならないかしら」
いつもと違い、前夜祭は夜だから。そう呟くリリスに、ルシファーが収納から大量の宝石を取り出した。きらきらと光を弾く宝石はどれも小粒だ。砕けてしまった残りや、小粒だが質の良い物を残してあった。
「これを散りばめてみてくれ。すごく大人っぽく仕上げると思うが」
「大人? ルシファーと並んでもおかしくないくらい、魅力的に見えるかしら」
黒い絹の上に両手で宝石を散らし、リリスは嬉しそうに笑う。この時点で前夜祭のドレスは決まりだった。本人の意向で、百合の花に似たデザインを採用する。ドレスのデザイン見本を指差して決めたリリスは、うっとりと目を閉じた。
「もうすぐルシファーのお嫁さんになれるのね」
「あんなに幼かったリリスが、もうお嫁さんか。とても美しく育ってくれて嬉しいぞ」
にっこり笑うルシファー、幸せそうなリリス。近づいて唇が触れそうな光景に、アラクネ達はうっとりと見惚れた。似合いの二人だが、ここでキスシーンが拝めるのか。人気小説家トリィ先生の新作に出てきそうなシーンだわ。
「ルシファー、魔法陣できたよ!! 早く来て……っ、ごめん」
自動的に異世界の裂け目を感知する魔法陣を作ったと、誇らしげに飛び込んだルキフェルが真っ赤になって顔を両手で覆った。後ろから入室しようとしたベールも足を止め、そっと視線を逸らす。
凝視する女性達と、目を逸らす男性達。明らかに反応が分かれた部屋で、ルシファーは溜め息を吐いた。私室じゃないから、キスを邪魔されても怒ることも出来ない。
「魔法陣が出来たのか? ルキフェル」
意図的に話を逸らすために尋ねれば、「あ、うん」と曖昧な返事をしながら魔法陣を描いた。すらすらと空中に描き出された魔法陣をじっくり確認し、その仕組みに気づく。なるほど、よく出来ていた。普段から周辺の魔力量を計測し続け、その数値が一定基準以上変化したら通報する。通報を確認した魔王城から、都度動けばいい。
「完璧だ。設置間隔は?」
「この魔法陣の範囲が100キロ四方だから、その中央に設置したとして200キロおきかな」
すぐさま設置にかかる費用と、管理のための部署設置の申請書類を作り上げ、その場で署名押印した。これで対策としては、打てる手を打った形だ。
根本的な解決が見られれば良いが、しばらくは対処療法で頑張るしかなさそうだった。
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