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96章 迷探偵は魔王城に住んでいる
1313. 調査対象がミンチになっただけ
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激痛から解放されたエリゴスに、魔王以下男性陣が気の毒そうな眼差しを向けた。分かる、その痛みは察して余りある。そんな彼らに涙目で頷くエリゴスは、茫然とするベルゼビュートに向き直った。
「隠していたわけではないのですが、私は以前あなたに求婚して断られた魔獣のメスです」
「はぁ……」
間抜けな声が漏れるベルゼビュートがふらりとよろめき、空中に椅子を作り出して座る。きらきらとした椅子は長椅子のようで、隣に座れとエリゴスを促した。股間に軽い一撃を食らったのに、警戒する様子のないエリゴスが腰掛ける。
「彼はある意味、勇者ですな」
「俺らには無理です」
ドラゴン系の兵士達が顔を見合わせ、将軍サタナキアとひそひそ話を始めた。結構聞こえてるから音量に注意、ルシファーはそれだけ伝えると様子を見守った。腕の中でリリスは背中から包み込まれる状態で、真上のルシファーを見上げる。
純白の長い髪がさらりと肩を滑り、ひと房掴んだリリスは溜め息を吐いた。
「せっかくベルゼ姉さんのために、魔の森が選んでくれたのよ。仲直り出来るかしら」
「安心しろ。ベルゼビュートは事情も聞かずに、相手を一方的に責める奴じゃない」
ほっとした顔で頷くリリスの黒髪を撫でて、ルシファーは心の中で付け加えた。……たぶん、な。
「人化するとオスで、魔獣になるとメス。どっちつかずで……仲間もいなくて、そんな時あなたが助けてくださったのです。覚えていますか?」
手傷を負った魔獣を助けて、求婚された。たしかに記憶にある。あの魔獣が、このエリゴス? そういえば、エリゴスの求婚を受け入れた時に精霊達が騒がしかったけど……そういうことね。なんだ、そうなのね。
「覚えてるわ、あたくしの夫は人化したエリゴスよ」
どちらにも取れる言葉に、ルシファーが目を細めてベルゼビュートの顔を確認してから口元を緩めた。悪い意味ではなく、ベルゼビュートは前向きだ。最悪の状況になった戦いでも、いつも切り抜けてきた。彼女に心配は要らないな。
「……それは」
魔獣の私は不要ですか。そう問おうとしたエリゴスの唇に、ちゅっと軽い音を立ててキスをしたベルゼビュートが笑う。
「人の姿をした夫と、魔獣姿の可愛い友人が出来ただけ。どちらもあたくしのエリゴスだわ」
「姉さんって、考え方がカッコよくて豪快よね」
「わかる」
魔王妃と魔王の会話に、護衛達も無言で同意した。大切な夫と仲の良い友人、どちらも手に入れたと笑う彼女は幸せそうだ。
「結婚っていいっすね」
「相手探そうかな」
兵士の声を聞くと、リリスが目を輝かせた。ルシファーの耳元に口を寄せて「ねえ、お見合いパーティーをしましょう」と囁く。結婚を希望する者を各種族から集めて参加させ、気の合う者同士を引き合せる計画だった。結婚率が上がることは歓迎だし、結婚したい者同士が集うなら問題ない。
親の命令などによる強制参加を取り締まればいいか。軽く考えたルシファーは提案してみようと頷く。問題があればアスタロト達が止めるだろう。その辺の判断を丸投げした魔王は、ふと気づく。大量に現れた人族が異世界人か、確認に来たんだよな? 調査対象がミンチになっただけで、何も片付いていない。
目の前で肉片になった元人族は、異世界人で間違いないと思うが……当初の予定では調査だけだったのに、殲滅になってる。しかもまだ奇妙な魔力を持つ人族の違和感は消えなかった。まだいるという意味だよな。渋い顔で考え込むルシファーをよそに、リリスは無邪気に魔獣の頭を撫でる。
「これって猫?」
「豹です」
すぱっと返答するエリゴスを抱き寄せ、ベルゼビュートが口を開いた。
「よいですか? リリス様。猫と豹の間には大きな違いがありますのよ。毛皮の模様もそうですけど、大きさも習性も違いますわ」
妻となったベルゼビュートの擁護に、エリゴスの細い尻尾がひゅんと揺れた。
「隠していたわけではないのですが、私は以前あなたに求婚して断られた魔獣のメスです」
「はぁ……」
間抜けな声が漏れるベルゼビュートがふらりとよろめき、空中に椅子を作り出して座る。きらきらとした椅子は長椅子のようで、隣に座れとエリゴスを促した。股間に軽い一撃を食らったのに、警戒する様子のないエリゴスが腰掛ける。
「彼はある意味、勇者ですな」
「俺らには無理です」
ドラゴン系の兵士達が顔を見合わせ、将軍サタナキアとひそひそ話を始めた。結構聞こえてるから音量に注意、ルシファーはそれだけ伝えると様子を見守った。腕の中でリリスは背中から包み込まれる状態で、真上のルシファーを見上げる。
純白の長い髪がさらりと肩を滑り、ひと房掴んだリリスは溜め息を吐いた。
「せっかくベルゼ姉さんのために、魔の森が選んでくれたのよ。仲直り出来るかしら」
「安心しろ。ベルゼビュートは事情も聞かずに、相手を一方的に責める奴じゃない」
ほっとした顔で頷くリリスの黒髪を撫でて、ルシファーは心の中で付け加えた。……たぶん、な。
「人化するとオスで、魔獣になるとメス。どっちつかずで……仲間もいなくて、そんな時あなたが助けてくださったのです。覚えていますか?」
手傷を負った魔獣を助けて、求婚された。たしかに記憶にある。あの魔獣が、このエリゴス? そういえば、エリゴスの求婚を受け入れた時に精霊達が騒がしかったけど……そういうことね。なんだ、そうなのね。
「覚えてるわ、あたくしの夫は人化したエリゴスよ」
どちらにも取れる言葉に、ルシファーが目を細めてベルゼビュートの顔を確認してから口元を緩めた。悪い意味ではなく、ベルゼビュートは前向きだ。最悪の状況になった戦いでも、いつも切り抜けてきた。彼女に心配は要らないな。
「……それは」
魔獣の私は不要ですか。そう問おうとしたエリゴスの唇に、ちゅっと軽い音を立ててキスをしたベルゼビュートが笑う。
「人の姿をした夫と、魔獣姿の可愛い友人が出来ただけ。どちらもあたくしのエリゴスだわ」
「姉さんって、考え方がカッコよくて豪快よね」
「わかる」
魔王妃と魔王の会話に、護衛達も無言で同意した。大切な夫と仲の良い友人、どちらも手に入れたと笑う彼女は幸せそうだ。
「結婚っていいっすね」
「相手探そうかな」
兵士の声を聞くと、リリスが目を輝かせた。ルシファーの耳元に口を寄せて「ねえ、お見合いパーティーをしましょう」と囁く。結婚を希望する者を各種族から集めて参加させ、気の合う者同士を引き合せる計画だった。結婚率が上がることは歓迎だし、結婚したい者同士が集うなら問題ない。
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「これって猫?」
「豹です」
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