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95章 結婚式が近づくと
1296. 精霊女王の結婚式
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着替えたベルゼビュートは3人の大公に見送られ、花婿まで進む。以前までならルシファーが担当した役だが、リリスとの結婚式を控える今となっては無理だった。婚約者以外をエスコートするのもどうか。そんな話になり、最終的にベール達で落ち着いた。
魔王の代理は恐れ多いと言われ、多少もめた。アスタロトは既婚者だからと遠慮し、ベールも困惑顔だった。ルキフェルは引き受けてもいいと口にするが、今度はベールが「だったら代理で」と名乗りを上げる始末。全員がベルゼビュートを嫌っていないのに決まらない、不思議な状況だ。3人も大公が付き添う結果になったのは、その辺の事情だった。
「行きましょう、ルシファー」
婚約者と腕を組む役を譲る気はないが、先導役を買って出たリリスはルシファーのエスコートで歩き出す。花嫁を引き立てるために、装飾が控えめなドレスだった。淡い緑のドレスを纏うリリスが、踊るように足を踏み出す。彼女の手を取って歩くルシファーは、式典用のローブだった。
純白の魔王が羽を広げて花嫁を隠し、リリスも己の翼を重ねる。式典会場として整備した中庭は、温室の薔薇が彩っていた。期待が高まる中、鳳凰が祝福の歌を献上する。重なるのはラミアやエルフの歌だった。どの種族も祝いの歌は同じ旋律だ。種族によりアレンジが重ねられるため、複数の種族が集まって歌うと不思議なハーモニーが場を満たす。
「綺麗ね」
「素晴らしいな」
感嘆の声が上がる人々の期待はさらに高まる。客間からテラスを通って庭に出られるよう直した扉の前で、リリスが羽を消した。それを合図にベルゼビュートが妖精の羽を広げる。隙間から見える透ける蝶の羽に、祝福の声が飛んできた。
ベルゼビュートの姿を隠すルシファーの翼が消えていく。演出も兼ねて、三対を順番に消したのでカウントダウンのようになった。すべてが消えて精霊女王ベルゼビュートがお披露目された瞬間、集まった人達から歓声と祝いが迸る。大騒ぎで言葉が聞き取れないほどの盛り上がりだった。
「ありがとう」
集まった人達に手を振り、ベルゼビュートは少し先の壇上で待つ婚約者へ歩き出す。あと少しで夫になる人が、微笑んで手を伸ばした。エスコートするベールから手を離し、彼の手を取った。エリゴスと誓いの言葉を考えた日が遠く感じる。
「やだわ、忘れちゃいそう」
胸がいっぱいになる。段取りが全て頭から消えそうで、ぽっかりと空いた穴にこれ以上ないほど幸せが詰まっていた。ほわりと微笑んだベルゼビュートは、精霊達を統べる幻想的な女王の名に相応しい、華やかさと清純さを匂わせる。
「私に合わせて」
エリゴスの言葉に、己の声を重ねる。
「「互いを愛し、互いに尊重し合い、決して裏切らないことを誓う。あたくし(私)は死が分かつまで、共に寄り添うことを宣言する」」
その後に続くはずだった言葉は涙と一緒に流れてしまった。しかし最も重要な部分は言い終えた。盛り上がる人々は喝采と拍手を送り、続きは飲み込まれた。集まった精霊が花やしゃぼん、蜜で作った飴を降らせる。
「今夜は一緒に眠れるのだから、その時に2人きりで誓いあえばいいよ」
ささやくエリゴスに、真っ赤になったベルゼビュートが頷く。その仲睦まじい姿に、人々は高いテンションを保ったまま宴会に突入した。飲めや歌えやの大騒ぎだが、花嫁花婿に絡む愚か者はいない。酒を勧めにいったドワーフは妻に投げ飛ばされた。
リリスに酒を飲ませないよう見守るルシファーは、宵闇に姿を溶け込ませる2人を穏やかに見送った。リリスに教えてやろうと振り向いたら、彼女はワインのグラスに口をつけるところだった。慌ててグラスに結界で蓋をして、中身を別の人のグラスへ転送する。ワインが増えたと騒いで、飲み過ぎだと嗜められる青年をよそに、リリスは葡萄ジュースで我慢させられたとか。
翌朝、ベルゼビュートは姿を見せず……長期休暇が終わるまで、魔王城に近づかなかった。しかし各種族から、こっそりと報告が上がる。幸せそうに夫エリゴスと腕を組んで歩くベルゼビュートが、各地で目撃されていた。
魔王の代理は恐れ多いと言われ、多少もめた。アスタロトは既婚者だからと遠慮し、ベールも困惑顔だった。ルキフェルは引き受けてもいいと口にするが、今度はベールが「だったら代理で」と名乗りを上げる始末。全員がベルゼビュートを嫌っていないのに決まらない、不思議な状況だ。3人も大公が付き添う結果になったのは、その辺の事情だった。
「行きましょう、ルシファー」
婚約者と腕を組む役を譲る気はないが、先導役を買って出たリリスはルシファーのエスコートで歩き出す。花嫁を引き立てるために、装飾が控えめなドレスだった。淡い緑のドレスを纏うリリスが、踊るように足を踏み出す。彼女の手を取って歩くルシファーは、式典用のローブだった。
純白の魔王が羽を広げて花嫁を隠し、リリスも己の翼を重ねる。式典会場として整備した中庭は、温室の薔薇が彩っていた。期待が高まる中、鳳凰が祝福の歌を献上する。重なるのはラミアやエルフの歌だった。どの種族も祝いの歌は同じ旋律だ。種族によりアレンジが重ねられるため、複数の種族が集まって歌うと不思議なハーモニーが場を満たす。
「綺麗ね」
「素晴らしいな」
感嘆の声が上がる人々の期待はさらに高まる。客間からテラスを通って庭に出られるよう直した扉の前で、リリスが羽を消した。それを合図にベルゼビュートが妖精の羽を広げる。隙間から見える透ける蝶の羽に、祝福の声が飛んできた。
ベルゼビュートの姿を隠すルシファーの翼が消えていく。演出も兼ねて、三対を順番に消したのでカウントダウンのようになった。すべてが消えて精霊女王ベルゼビュートがお披露目された瞬間、集まった人達から歓声と祝いが迸る。大騒ぎで言葉が聞き取れないほどの盛り上がりだった。
「ありがとう」
集まった人達に手を振り、ベルゼビュートは少し先の壇上で待つ婚約者へ歩き出す。あと少しで夫になる人が、微笑んで手を伸ばした。エスコートするベールから手を離し、彼の手を取った。エリゴスと誓いの言葉を考えた日が遠く感じる。
「やだわ、忘れちゃいそう」
胸がいっぱいになる。段取りが全て頭から消えそうで、ぽっかりと空いた穴にこれ以上ないほど幸せが詰まっていた。ほわりと微笑んだベルゼビュートは、精霊達を統べる幻想的な女王の名に相応しい、華やかさと清純さを匂わせる。
「私に合わせて」
エリゴスの言葉に、己の声を重ねる。
「「互いを愛し、互いに尊重し合い、決して裏切らないことを誓う。あたくし(私)は死が分かつまで、共に寄り添うことを宣言する」」
その後に続くはずだった言葉は涙と一緒に流れてしまった。しかし最も重要な部分は言い終えた。盛り上がる人々は喝采と拍手を送り、続きは飲み込まれた。集まった精霊が花やしゃぼん、蜜で作った飴を降らせる。
「今夜は一緒に眠れるのだから、その時に2人きりで誓いあえばいいよ」
ささやくエリゴスに、真っ赤になったベルゼビュートが頷く。その仲睦まじい姿に、人々は高いテンションを保ったまま宴会に突入した。飲めや歌えやの大騒ぎだが、花嫁花婿に絡む愚か者はいない。酒を勧めにいったドワーフは妻に投げ飛ばされた。
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