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95章 結婚式が近づくと
1292. 魔族は必ず宴会がセット
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魔王城から届く指示書を見ながら、各種族は動き出した。手配を指示された品物を集め、次々と送り出す。転移魔法陣設置が終わった地域は利用し、ない地域はドラゴンやペガサスなど、空を飛べる種族に依頼した。
急ぎ運ばれた品物を、門番のアラエル達が手早く仕分ける。ピヨも手伝うものの途中で遊び始めてしまい、エルフ達に遠ざけられた。生鮮食料品は保存が効く収納空間へ、それ以外の品物は倉庫へ積まれていく。
「これだけ揃うと壮観ね」
ハイエルフのオレリアは、指示書片手に品物の数をチェックした。足りない物を書き足し、数量が合わない物も記載していく。手伝いに駆けつけたデュラハンも運搬を担当し、手際よく品物は城の地下に収められた。
アデーレは侍女からの指示で、一段落したことを知る。今日の搬入作業は終わったので、魔王ルシファーが外へ出ても問題ない。彼に内緒で運ばれてくる各地の品々を、見せるわけにいかなかった。
「本日はここまでにいたしましょう。陛下は大変お上手でした。リリス様の練習に付き合ってくださいませ」
「わかった。リリス、夕食の後に少し踊ろうか」
「いいわ。前に覚えた時とステップが違う気がするのよ」
ステップは数万年単位で変更されておらず、前回彼女が覚えた時と同じだ。しかしルシファーは否定せずに苦笑いした。
「体の感覚が変わったせいだろう。前回も綺麗に踊れたし、すぐに上達するよ。オレのお姫様だからな」
よく分からない理屈だが、リリスは納得した。
「そうね、ルシファーのお嫁さんだもの」
だから踊れるという理屈は通らないのだが、不思議と誰も指摘しない。微笑ましい婚約者同士の会話を見守るだけだった。
結婚式の準備は着々と進められ、事前練習と呼ぶべき、ベルゼビュートの結婚式も近づいて来る。
「先にベルゼ姉さんが結婚よね」
「合同結婚式まで待てないそうだ」
初婚だから、8万年は相手を探していた。だからこそ気が急くのか、先に結婚式を挙げると言い張って譲らない。ルシファーは自由にすればいいと許可した。他の大公も反対しなかったので、半月後には彼女の結婚式が執り行われる。
「結婚式って何をするの?」
具体的な内容を尋ねるリリスを風呂に入れて、黒髪を洗いながら説明する。
「まず愛を誓う。魔の森や集まった人々に宣言する形だ。それから宴会が始まるだろうな。ダンスを披露するなら、その時か」
人前式と呼ばれる形式が近い。人々に自分の言葉で、伴侶を愛し抜くと誓うのだ。魔の森は魔族にとって母であり、創造主に等しい存在だ。そのため森に対しても誓いの言葉を向けるのが一般的だった。
「宴会なの?」
「何を執り行っても、最後は宴会だ」
戦っていた魔族の仲介が終わっても宴会、嬉しいことがあれば宴会。集まったら最後は宴会が決まり事になっていた。貴族と平民の区別がない魔族にとって、無礼講は魔王や大公に対して効果を発揮する。宴会時は魔王ルシファーが無礼講を宣言することが多く、わいわい盛り上がるのが恒例だった。
「私も飲みたいわ」
「リリスは飲めないぞ」
「どうして?」
「法律を作ったからな」
酷いと頬を膨らませて怒る彼女の髪を丁寧に濯いで、泡で体を洗っていく。これまた優しくお湯を掛けて、湯船に入るよう促した。
「リリスが飲むと、大変なことになるんだ」
「平気よ」
「……過去、平気だった記憶がない」
珍しく譲ってくれないルシファーに、唇を尖らせて不満を表明する。湯船に浮かぶ薔薇の花びらを千切りながら、ちらちらと譲歩を促した。だがルシファーも折れる気はない。いくら可愛くても、後が大変なのだ。またあんな誘惑を向けられたら、婚前交渉間違いなし。
「結婚後なら考えよう」
許可すると言わない辺り、小狡い魔王であった。
*********************
新作のお知らせです_( _*´ ꒳ `*)_
【膨大な魔力と知識ありのチートだけど、転生先がツノはないよね?】
異世界転生、胸躍らせる夢の展開のはず。しかし目の前で繰り広げられる勇者vs魔王の激戦に、僕は飽きていた。だって王の頭上で、魔力を供給するだけのツノが僕だ。魔王が強いからツノがあるのではなく、ツノである僕がいるから彼が最強だった。
ずっと動けない。声は誰にも聞こえない。膨大な魔力も知識チートも披露できぬまま、魔王の頭上で朽ちるのか。諦めかけていた。
勇者の聖剣が僕を折るまでは……!
動けなかったツノは、折れたことで新たな仲間と出会う。チート無双はできないが、ツノなりに幸せを掴めるのか!? いつか自力で動ける日を夢見て、僕は彼と手を組んだ。
※基本ほのぼの、時々残酷表現あり(予告なし)ハッピーエンド確定
急ぎ運ばれた品物を、門番のアラエル達が手早く仕分ける。ピヨも手伝うものの途中で遊び始めてしまい、エルフ達に遠ざけられた。生鮮食料品は保存が効く収納空間へ、それ以外の品物は倉庫へ積まれていく。
「これだけ揃うと壮観ね」
ハイエルフのオレリアは、指示書片手に品物の数をチェックした。足りない物を書き足し、数量が合わない物も記載していく。手伝いに駆けつけたデュラハンも運搬を担当し、手際よく品物は城の地下に収められた。
アデーレは侍女からの指示で、一段落したことを知る。今日の搬入作業は終わったので、魔王ルシファーが外へ出ても問題ない。彼に内緒で運ばれてくる各地の品々を、見せるわけにいかなかった。
「本日はここまでにいたしましょう。陛下は大変お上手でした。リリス様の練習に付き合ってくださいませ」
「わかった。リリス、夕食の後に少し踊ろうか」
「いいわ。前に覚えた時とステップが違う気がするのよ」
ステップは数万年単位で変更されておらず、前回彼女が覚えた時と同じだ。しかしルシファーは否定せずに苦笑いした。
「体の感覚が変わったせいだろう。前回も綺麗に踊れたし、すぐに上達するよ。オレのお姫様だからな」
よく分からない理屈だが、リリスは納得した。
「そうね、ルシファーのお嫁さんだもの」
だから踊れるという理屈は通らないのだが、不思議と誰も指摘しない。微笑ましい婚約者同士の会話を見守るだけだった。
結婚式の準備は着々と進められ、事前練習と呼ぶべき、ベルゼビュートの結婚式も近づいて来る。
「先にベルゼ姉さんが結婚よね」
「合同結婚式まで待てないそうだ」
初婚だから、8万年は相手を探していた。だからこそ気が急くのか、先に結婚式を挙げると言い張って譲らない。ルシファーは自由にすればいいと許可した。他の大公も反対しなかったので、半月後には彼女の結婚式が執り行われる。
「結婚式って何をするの?」
具体的な内容を尋ねるリリスを風呂に入れて、黒髪を洗いながら説明する。
「まず愛を誓う。魔の森や集まった人々に宣言する形だ。それから宴会が始まるだろうな。ダンスを披露するなら、その時か」
人前式と呼ばれる形式が近い。人々に自分の言葉で、伴侶を愛し抜くと誓うのだ。魔の森は魔族にとって母であり、創造主に等しい存在だ。そのため森に対しても誓いの言葉を向けるのが一般的だった。
「宴会なの?」
「何を執り行っても、最後は宴会だ」
戦っていた魔族の仲介が終わっても宴会、嬉しいことがあれば宴会。集まったら最後は宴会が決まり事になっていた。貴族と平民の区別がない魔族にとって、無礼講は魔王や大公に対して効果を発揮する。宴会時は魔王ルシファーが無礼講を宣言することが多く、わいわい盛り上がるのが恒例だった。
「私も飲みたいわ」
「リリスは飲めないぞ」
「どうして?」
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酷いと頬を膨らませて怒る彼女の髪を丁寧に濯いで、泡で体を洗っていく。これまた優しくお湯を掛けて、湯船に入るよう促した。
「リリスが飲むと、大変なことになるんだ」
「平気よ」
「……過去、平気だった記憶がない」
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「結婚後なら考えよう」
許可すると言わない辺り、小狡い魔王であった。
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動けなかったツノは、折れたことで新たな仲間と出会う。チート無双はできないが、ツノなりに幸せを掴めるのか!? いつか自力で動ける日を夢見て、僕は彼と手を組んだ。
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