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94章 突然のベビーラッシュ
1278. ティアラの宝石を選べ
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リリスが忙しくて構ってくれない。しょんぼりと肩を落として訴えたルシファーに、アスタロトはさらっと切り返した。
「当然でしょう、正式に魔王妃となる結婚式が迫っています。最低限の礼儀作法と知識の確認は必要ですし、準備も進めなければなりません」
「結婚、式……」
呆然としながら繰り返した後、慌てて両手を振った。
「大丈夫、ちゃんと覚えているぞ」
「おや、そうですか? ルシファー様にお伝えするのを忘れておりましたが、覚えておられるのですか」
故意に忘れやがったな。睨み付けてから、数年前に定めた結婚式の予定を思い浮かべた。リリスのドレスは全部で3着、メインのドレス以外は決まっていない。式、お披露目、宴会用と3着用意するのだが……最後の宴会用は必要か? リリスが可愛くなるドレスを作るのは賛成なので、余計な口は叩かなかった。
靴も当然3足だが、正確には3種類で各2足ずつだ。不足の事態に備えて用意される。靴は後日別のドレスと合わせてもいいので、多めに発注するのが常だった。魔王妃候補として正式にお披露目した婚約の光景の時は、靴を片方汚してしまい交換した。やはり予備も発注すべきだろう。
お飾りも必要だし、化粧品の類を用意しなくてはならない。唸りながら手早くリストを書き出した。
「何が優先だろうか」
「お飾り、ティアラでしょうね。魔王妃殿下の王冠と同じですから」
「王冠じゃない?」
なぜティアラなのか。そう尋ねるルシファーへ、アスタロトは根拠を示した。
「まず、魔王である貴方様が王冠を嫌って、髪飾りを7つにしましたね。隣で魔王妃殿下が王冠を被るのは問題でしょう」
遠目に王冠の方が目立つので、魔王の立場として問題があると言われた。王がどちらか迷う魔族はいないだろうが、魔王より豪華な王冠は反感を買うかも知れない。
「あとは、リリス様のご希望です。可愛いティアラが欲しいそうですよ」
アデーレ経由だろう。人伝に聞いた、とぼかさず伝えるアスタロトへ頷く。なるほど、王冠は豪華だが可愛いという表現からは遠い。その意味で、リリスが望みそうな飾りはティアラの形か。
「ティアラの宝石は……」
「幼いリリス様に使った宝石を利用します。勝手に採掘とかしないでくださいね」
オレが掘ってくる。そういう前に、釘を刺された。過去にお披露目で使ったミニティアラに、豪華な宝石が山と使ったが、残った宝石も多い。一級品の宝石があるのに、新しく採掘は許可できない。アスタロトの言い分に、渋々頷いた。
ルシファーの治世を祝う王冠代わりの髪飾りは1万年にひとつ追加される。髪が足元まで長いため問題になっていないが、普通の人なら飾る場所に悩む状況だった。結い上げたとしても、まだ10点くらいは追加可能だ。
「オレの髪飾りの宝石をいくつか回そう」
「却下です。お忘れですか? ベールの即死の呪いが掛かった宝石ですよ。リリス様を即死させる気ですか」
「……宝石にも適用されてるのか?」
「ええ、間違いなく」
そう言われると使うわけにいかない。仕方なく手持ちの宝石を収納からかき集め、膨大な宝石の山から選ぶこととなった。これだけあるのに、どうして新しい宝石に拘るんでしょうね。首を傾げるアスタロトの前で、ルシファーはぶつぶつ呟きながら選別する。
「これは小さい、色がイマイチ、ヒビが入ってる、こっちは……うーん。好みじゃない」
最後の理由はおかしくありませんか? 尋ねるアスタロトの声を無視する集中力を見せたルシファーは、半日かけて宝石を分類した。山に積むほどの量があったのに、合格したのは一握り。狭き関門を突破した宝石は、宝飾品加工の専門家スプリガン達に引き渡されることが決まった。
「当然でしょう、正式に魔王妃となる結婚式が迫っています。最低限の礼儀作法と知識の確認は必要ですし、準備も進めなければなりません」
「結婚、式……」
呆然としながら繰り返した後、慌てて両手を振った。
「大丈夫、ちゃんと覚えているぞ」
「おや、そうですか? ルシファー様にお伝えするのを忘れておりましたが、覚えておられるのですか」
故意に忘れやがったな。睨み付けてから、数年前に定めた結婚式の予定を思い浮かべた。リリスのドレスは全部で3着、メインのドレス以外は決まっていない。式、お披露目、宴会用と3着用意するのだが……最後の宴会用は必要か? リリスが可愛くなるドレスを作るのは賛成なので、余計な口は叩かなかった。
靴も当然3足だが、正確には3種類で各2足ずつだ。不足の事態に備えて用意される。靴は後日別のドレスと合わせてもいいので、多めに発注するのが常だった。魔王妃候補として正式にお披露目した婚約の光景の時は、靴を片方汚してしまい交換した。やはり予備も発注すべきだろう。
お飾りも必要だし、化粧品の類を用意しなくてはならない。唸りながら手早くリストを書き出した。
「何が優先だろうか」
「お飾り、ティアラでしょうね。魔王妃殿下の王冠と同じですから」
「王冠じゃない?」
なぜティアラなのか。そう尋ねるルシファーへ、アスタロトは根拠を示した。
「まず、魔王である貴方様が王冠を嫌って、髪飾りを7つにしましたね。隣で魔王妃殿下が王冠を被るのは問題でしょう」
遠目に王冠の方が目立つので、魔王の立場として問題があると言われた。王がどちらか迷う魔族はいないだろうが、魔王より豪華な王冠は反感を買うかも知れない。
「あとは、リリス様のご希望です。可愛いティアラが欲しいそうですよ」
アデーレ経由だろう。人伝に聞いた、とぼかさず伝えるアスタロトへ頷く。なるほど、王冠は豪華だが可愛いという表現からは遠い。その意味で、リリスが望みそうな飾りはティアラの形か。
「ティアラの宝石は……」
「幼いリリス様に使った宝石を利用します。勝手に採掘とかしないでくださいね」
オレが掘ってくる。そういう前に、釘を刺された。過去にお披露目で使ったミニティアラに、豪華な宝石が山と使ったが、残った宝石も多い。一級品の宝石があるのに、新しく採掘は許可できない。アスタロトの言い分に、渋々頷いた。
ルシファーの治世を祝う王冠代わりの髪飾りは1万年にひとつ追加される。髪が足元まで長いため問題になっていないが、普通の人なら飾る場所に悩む状況だった。結い上げたとしても、まだ10点くらいは追加可能だ。
「オレの髪飾りの宝石をいくつか回そう」
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「……宝石にも適用されてるのか?」
「ええ、間違いなく」
そう言われると使うわけにいかない。仕方なく手持ちの宝石を収納からかき集め、膨大な宝石の山から選ぶこととなった。これだけあるのに、どうして新しい宝石に拘るんでしょうね。首を傾げるアスタロトの前で、ルシファーはぶつぶつ呟きながら選別する。
「これは小さい、色がイマイチ、ヒビが入ってる、こっちは……うーん。好みじゃない」
最後の理由はおかしくありませんか? 尋ねるアスタロトの声を無視する集中力を見せたルシファーは、半日かけて宝石を分類した。山に積むほどの量があったのに、合格したのは一握り。狭き関門を突破した宝石は、宝飾品加工の専門家スプリガン達に引き渡されることが決まった。
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