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86章 溢れ出たあれこれの後始末
1193. 手際が良いイベントは大盛況
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野外の宴。そんな意味でバーベキューという単語が普及した魔族は、大きな声で賛同した。そこからは話が早い。あっという間に大柄な種族がかまどを作り、魔法の得意な種族が火をつけた。薪を集めた小柄な魔獣を労いながら、ドワーフが次々と鉄板を運ぶ。
エルフ達は歌いながら森の蔦を呼び寄せ、城門前の広場はあっという間に宴の会場へと変わった。森の木々が遠慮がちに伸ばした根を育て、大木をテントの支柱がわりにする。そこへ蔦を這わせてロープにし、魔王軍のテント布が提供された。
テントの下にはテーブルや、酒を出す屋台が並ぶ。華やかな宴の会場が出来上がる様を、リリスと一緒にヤンの背中で見物した。リリスを拾ってからイベントが多かったこともあり、手際のいい魔族は準備を終えてグラスを手に、声掛かりを待つ。
「今日は難しい話はなしだ。問題が解決したことを祝おう!」
ルシファーの音頭に、わっと湧き立った。提供された肉が焼かれ、酒が振る舞われ、いつの間にか人数が増えていく。どんちゃん騒ぎは夜通し盛り上がり、朝には屍のように転がる人々の絨毯が出来上がっていた。城下町から合流する人数が増え、中庭に転移した種族が流れてくる。
「私も肉を焼くわ!!」
張り切ったリリスに、駆け寄ったルーサルカがエプロンを付けさせた。可愛いドレスが汚れてしまうと言われて、リリスも素直に装着する。裏側に火傷防止や防汚効果が付与されたエプロンは、周囲にフリルがついた愛らしい物だった。
「あれは?」
「以前からルーサルカとルーシアが用意していました。また祭りがあれば、手伝いたいと騒ぐことを見越しての準備ですね」
アスタロトは知っていたらしく、エプロンを見て微笑ましそうに教えてくれた。納得しながらルシファーが大公女らを労う。リリスは置いてあったトングを掴もうとして、慌てたレライエに特別性トングを渡された。白い手が汚れたり焼けたりしないよう、ミトン型の手袋付きだ。
「至れり尽くせりだな」
感心していると、シトリーが慣れた手つきでリリスの黒髪を結い上げた。そのまま固定魔法陣がついた髪飾りで留めていく。
「リリス様、御髪が鉄板に触れてしまいます」
「ありがとう」
驚くべき連係プレイで完璧に仕立てられたリリスは、ご機嫌で肉をひっくり返す。真剣に肉と対面する横で、ルシファーも手伝い始めた。大公達も手分けして魚や野菜の調理に加わる。偉い人ほど積極的に動き、民の娯楽を助けるべし――魔族特有の掟だった。明文化されず不文律として存在する。自主的な手伝いが推奨されるためだろう。
「ほら、これは焼けたぞ」
自らも純白の髪を三つ編みにしたルシファーが、肉を見つめる猫耳少年の器に肉を入れる。お礼を言って走っていく後ろ姿を見送り、並んだ人が手にした器に肉を次々と放り込んだ。さりげなく魔法で補助しているため、落ちる心配はない。長い列の最後尾までに肉が切れそうなので、追加を要請した。
後ろでドワーフの若者が肉を切り始める。新しい刃物のテストを兼ねているようだ。手際よく捌いた肉が運ばれ、リリスが無造作に手を伸ばした。
「リリス、トングで掴むな」
たいていの魔族は生焼けでも問題ないが、胃腸の弱い種族もいた。日本人なども含まれる。腹を壊すと可哀想だから、と魔法で肉を鉄板まで運ぶ。
「わかったわ」
リリスが肉の運搬を試み、上に積んだ数枚を零しながらも鉄板に肉を広げる。ここからは慣れの問題だった。徐々に手際よく上手になる。最初の頃のベールなんて酷かった。運んだ量より落とした量の方が多かったぐらいだ。今ではそつなくこなすが、実は一番不器用な大公かも知れない。その分努力で補ってきたので、今さら口にして揶揄う気はなかった。
「ルシファー、これ……熱くて大変だけど、楽しい」
「皆が喜んでくれるのが一番だ」
白い翼があるルシファーとリリスの列は一番人気で、いつまでも列が途切れることはなかった。
エルフ達は歌いながら森の蔦を呼び寄せ、城門前の広場はあっという間に宴の会場へと変わった。森の木々が遠慮がちに伸ばした根を育て、大木をテントの支柱がわりにする。そこへ蔦を這わせてロープにし、魔王軍のテント布が提供された。
テントの下にはテーブルや、酒を出す屋台が並ぶ。華やかな宴の会場が出来上がる様を、リリスと一緒にヤンの背中で見物した。リリスを拾ってからイベントが多かったこともあり、手際のいい魔族は準備を終えてグラスを手に、声掛かりを待つ。
「今日は難しい話はなしだ。問題が解決したことを祝おう!」
ルシファーの音頭に、わっと湧き立った。提供された肉が焼かれ、酒が振る舞われ、いつの間にか人数が増えていく。どんちゃん騒ぎは夜通し盛り上がり、朝には屍のように転がる人々の絨毯が出来上がっていた。城下町から合流する人数が増え、中庭に転移した種族が流れてくる。
「私も肉を焼くわ!!」
張り切ったリリスに、駆け寄ったルーサルカがエプロンを付けさせた。可愛いドレスが汚れてしまうと言われて、リリスも素直に装着する。裏側に火傷防止や防汚効果が付与されたエプロンは、周囲にフリルがついた愛らしい物だった。
「あれは?」
「以前からルーサルカとルーシアが用意していました。また祭りがあれば、手伝いたいと騒ぐことを見越しての準備ですね」
アスタロトは知っていたらしく、エプロンを見て微笑ましそうに教えてくれた。納得しながらルシファーが大公女らを労う。リリスは置いてあったトングを掴もうとして、慌てたレライエに特別性トングを渡された。白い手が汚れたり焼けたりしないよう、ミトン型の手袋付きだ。
「至れり尽くせりだな」
感心していると、シトリーが慣れた手つきでリリスの黒髪を結い上げた。そのまま固定魔法陣がついた髪飾りで留めていく。
「リリス様、御髪が鉄板に触れてしまいます」
「ありがとう」
驚くべき連係プレイで完璧に仕立てられたリリスは、ご機嫌で肉をひっくり返す。真剣に肉と対面する横で、ルシファーも手伝い始めた。大公達も手分けして魚や野菜の調理に加わる。偉い人ほど積極的に動き、民の娯楽を助けるべし――魔族特有の掟だった。明文化されず不文律として存在する。自主的な手伝いが推奨されるためだろう。
「ほら、これは焼けたぞ」
自らも純白の髪を三つ編みにしたルシファーが、肉を見つめる猫耳少年の器に肉を入れる。お礼を言って走っていく後ろ姿を見送り、並んだ人が手にした器に肉を次々と放り込んだ。さりげなく魔法で補助しているため、落ちる心配はない。長い列の最後尾までに肉が切れそうなので、追加を要請した。
後ろでドワーフの若者が肉を切り始める。新しい刃物のテストを兼ねているようだ。手際よく捌いた肉が運ばれ、リリスが無造作に手を伸ばした。
「リリス、トングで掴むな」
たいていの魔族は生焼けでも問題ないが、胃腸の弱い種族もいた。日本人なども含まれる。腹を壊すと可哀想だから、と魔法で肉を鉄板まで運ぶ。
「わかったわ」
リリスが肉の運搬を試み、上に積んだ数枚を零しながらも鉄板に肉を広げる。ここからは慣れの問題だった。徐々に手際よく上手になる。最初の頃のベールなんて酷かった。運んだ量より落とした量の方が多かったぐらいだ。今ではそつなくこなすが、実は一番不器用な大公かも知れない。その分努力で補ってきたので、今さら口にして揶揄う気はなかった。
「ルシファー、これ……熱くて大変だけど、楽しい」
「皆が喜んでくれるのが一番だ」
白い翼があるルシファーとリリスの列は一番人気で、いつまでも列が途切れることはなかった。
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