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76章 一難去るとまた……
1051. 隠す事を決めた
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大量の魔力が流れ込んだら、魔の森は眠りに入った。前提が違うか。魔の森の立場を自分に置き換えてみたら分かる。
何らかの形で自分の力を奪われた。徐々に足りなくなり苦しくなる。だけどある日、奪われた力が一度に戻ってきた。大量に流れ込んで飽和し、満タンに近くなる。
……それって自己回復の条件じゃないか? 空腹時にいきなり大量の食べ物を摂取すると眠くなる。ケガをした後に治癒魔法で回復したら、やっぱり眠くなるだろう。マイナスになった魔力がプラスに転じた瞬間、森に同じ現象が起きたとしたら?
森は大量の魔力を失わないように吸収し、満腹状態に陥った。回復の眠りが森にあるかわからないが、同様の症状が出たなら……すべての機能が停止する。
「自己回復で眠ったのなら、リリスが言ってた表現と一致するんだ。魔の森は眠った……その際に全機能が休眠状態になれば、生命力も魔力も凍結されたんじゃない?」
完全に仮定だ。何の証拠もない。ただの状況証拠から類推しただけ。過去に事例がない現象だから、他に考えようがないけど。
そこで思い出した。
「ねえ、レラジェ。レラジェはどうしてるの?」
問われ、初めてベールが口を開いた。
「あの子なら、アデーレ夫人が預かっていますよ」
「レラジェは森の一部だってリリスは言ってた。たぶん、だけど……動けなくなる未来を知る森が生んだのなら、森を起こすのはレラジェの役目じゃないかな」
人族を滅ぼす最終的な決断は、魔王ルシファーが下した。しかしその手前で決定的な情報を与えたのは、レラジェだ。眠る森は何かあった時のために、目覚めるための手段を残した。そう考えると、レラジェの存在に説明がつく。
「あ~あ、嫌なことに気づいちゃった」
頭を抱えて唸る。両手で顔を覆って、ルキフェルは呻いた。その姿に察したベールも顔を歪める。
人族を壊滅させて魔力を回収し、その後に確実に訪れる眠りからの回復が子供の役目なら――すべてを果たしたレラジェは?
「どうしましょうか?」
この話はここで収めて、外に漏らさないことも可能です。そう匂わせるベールの膝に乗せた頭をぐりぐりと擦り付け、ルキフェルはゴロンと転がった。横向きになり、ベールの腹に顔を押し付ける。
「僕がルシファーに言うから、聞かなかったことにしてよ」
「それは出来ませんよ。わかっているでしょう? ルキフェル」
この話は無かったことにする。責任はすべて僕が負うよ。そう告げた愛し子に、ベールは首を横に振って否定した。
話は聞いた。その上で自分も同意して魔王に報告しなかったのだ。同じように責任を負う。宣言したベールと視線を合わせ、ルキフェルは再び顔を埋めた。
「うん、わかってる。ありがと」
責任を問われても、話さず隠したことを責められるのも、全部一緒だ。ベールの想いは否定せず、素直に受け止めた。
レラジェが生まれてわずか1年未満、大公から見れば瞬き程度だった。楽しいことや嬉しい事を知らずに消滅させるのは嫌だった。それが自分達のエゴであるのは承知している。レラジェは早く帰りたいかも知れない。それでも……自分達との思い出を作り、満足して納得した上で森に戻って欲しい。幼子だった彼の天真爛漫な振る舞いを思い浮かべ、そう考えずにいられなかった。
食糧難を何とかする方法を見つけた今、こちらの話は多少時期をずらしても問題ない。人族が生きて死ぬ期間くらい、数十年は隠して遅らせても構わないはずだ。少なくとも、レラジェが育っていろいろ体験して満足し、自ら言い出すまで……隠してやろうと決めた。
何らかの形で自分の力を奪われた。徐々に足りなくなり苦しくなる。だけどある日、奪われた力が一度に戻ってきた。大量に流れ込んで飽和し、満タンに近くなる。
……それって自己回復の条件じゃないか? 空腹時にいきなり大量の食べ物を摂取すると眠くなる。ケガをした後に治癒魔法で回復したら、やっぱり眠くなるだろう。マイナスになった魔力がプラスに転じた瞬間、森に同じ現象が起きたとしたら?
森は大量の魔力を失わないように吸収し、満腹状態に陥った。回復の眠りが森にあるかわからないが、同様の症状が出たなら……すべての機能が停止する。
「自己回復で眠ったのなら、リリスが言ってた表現と一致するんだ。魔の森は眠った……その際に全機能が休眠状態になれば、生命力も魔力も凍結されたんじゃない?」
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「レラジェは森の一部だってリリスは言ってた。たぶん、だけど……動けなくなる未来を知る森が生んだのなら、森を起こすのはレラジェの役目じゃないかな」
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「あ~あ、嫌なことに気づいちゃった」
頭を抱えて唸る。両手で顔を覆って、ルキフェルは呻いた。その姿に察したベールも顔を歪める。
人族を壊滅させて魔力を回収し、その後に確実に訪れる眠りからの回復が子供の役目なら――すべてを果たしたレラジェは?
「どうしましょうか?」
この話はここで収めて、外に漏らさないことも可能です。そう匂わせるベールの膝に乗せた頭をぐりぐりと擦り付け、ルキフェルはゴロンと転がった。横向きになり、ベールの腹に顔を押し付ける。
「僕がルシファーに言うから、聞かなかったことにしてよ」
「それは出来ませんよ。わかっているでしょう? ルキフェル」
この話は無かったことにする。責任はすべて僕が負うよ。そう告げた愛し子に、ベールは首を横に振って否定した。
話は聞いた。その上で自分も同意して魔王に報告しなかったのだ。同じように責任を負う。宣言したベールと視線を合わせ、ルキフェルは再び顔を埋めた。
「うん、わかってる。ありがと」
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