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62章 数十回目の魔王城襲撃騒動
858. 若く見えるぞ?
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卵ごと降ってきた子供は、ひとまずルキフェル預かりとなる。養い子として認識されるため、何か問題が起きればルキフェルが始末をつける役目を負う。心配そうなベールだが、ルキフェル自身は楽しそうだった。
年の離れた弟感覚なのだろう。実際は1万5千歳ほど離れているが、外見だけを見るなら15歳程度の差だ。卵の素材も調べるらしく、研究所からストラス達が駆り出されて結界に包んで持ち帰った。
研究熱心なところは所長のルキフェル顔負けだ。目を輝かせていたが……これが原因でイポスとの視察旅行を断ったりしたら大事件だった。ちくちくと痛む胸を押さえながら、アスタロトの説教を聞き終える。
「明日の準備はできましたか?」
「ああ、オレ達は問題ない」
持っていくものを用意する必要はない。自由に転移で行き来できる上、空間魔法で欲しい物は部屋から転送すればいい。けろりと告げるルシファーは気づかない。自分達の魔法がいかに非常識なレベルにあるのか。しかし側近達も十分非常識だった。
「そうでしたね。必要なら取りにくればいいのですから」
「ああ、着ていくものも夜に決めれば間に合う」
視察に行く際は身軽な恰好の方がいい。大公女達も普段着を持っていくだろうし、あまりに荷物が多ければ預かればいいだけの話だった。女性の旅行荷物が多いのはよく知っている。ベルゼビュートが家ごと引っ越す勢いで持ち歩くのを何度も見てきた。
さすがに彼女は極端だと思うが、それでも幼いリリスと一緒に行った視察旅行の荷物を思い出せば、ある程度察しがついた。向こうに行って足りないと困るから多めに持っていく。使わないと思うけど、もしかしたら必要になるかも? そんな懸念を抱える彼女達を想像し、アスタロト達にバレない範囲で預かってやろうと決めた。
「見て、ルシファー。すごく似てるわ」
ルキフェルが抱っこした子供を覗き込み、リリスは無邪気に喜んでいる。
「ルシファーが小さい頃って、こんな感じだったのかしら」
くすくす笑って、まだ眠り続ける子供の頬を突いた。1歳の子を抱いた16歳前後に見えるルキフェルを膝に乗せるベールは、まるで孫が出来た祖父のような立ち位置だ。外見は麗しい20歳代前半を維持しているため、年の離れた兄弟に見えなくもない。
「ベールの子を抱っこする年の離れた弟ルキフェル……っぽく見えるな」
余計な発言をしたルシファーは、慌てて口を両手で押さえた。考えるより早く言い訳が零れだす。
「いや、でも若く見えるし……兄弟か?」
「若く見える、ですか?」
実際若いつもりですが。そんなニュアンスの繰り返しに、ルシファーは「大丈夫、若い」と返して後退る。膝にルキフェルを乗せている間に逃げなくては――しかしリリスはベールの手が届く位置で、赤子の顔を触っていた。これは危険だ。
「リ、リリス……おいで」
「どうして?」
きょとんとしたリリスに、ベールがにやりと笑った。美形のどこか黒い笑みにルシファーが慌てる。しかし時すでに遅し。リリスにベールが話しかけた。
「ほら、もっと近くで見るといいですよ」
「そうだね。どうせなら抱っこしてみる?」
ルキフェルも空気を読まずに同意したため、リリスは嬉しそうに近づいた。ルキフェルの腕から抱っこさせてもらい、嬉しそうに頬を緩める。自分似の赤子を抱っこするリリスの姿に、ルシファーがうっとりと表情を和らげた。
なんという眼福――我が子が生まれたら、こんな感じだろうか。
ルキフェルを下したベールに捕まり、吸血鬼王の説教から幻獣霊王の嫌味に繋がった長いお叱りの時間を経て、ルシファーが解放されたのは夕方だった。
年の離れた弟感覚なのだろう。実際は1万5千歳ほど離れているが、外見だけを見るなら15歳程度の差だ。卵の素材も調べるらしく、研究所からストラス達が駆り出されて結界に包んで持ち帰った。
研究熱心なところは所長のルキフェル顔負けだ。目を輝かせていたが……これが原因でイポスとの視察旅行を断ったりしたら大事件だった。ちくちくと痛む胸を押さえながら、アスタロトの説教を聞き終える。
「明日の準備はできましたか?」
「ああ、オレ達は問題ない」
持っていくものを用意する必要はない。自由に転移で行き来できる上、空間魔法で欲しい物は部屋から転送すればいい。けろりと告げるルシファーは気づかない。自分達の魔法がいかに非常識なレベルにあるのか。しかし側近達も十分非常識だった。
「そうでしたね。必要なら取りにくればいいのですから」
「ああ、着ていくものも夜に決めれば間に合う」
視察に行く際は身軽な恰好の方がいい。大公女達も普段着を持っていくだろうし、あまりに荷物が多ければ預かればいいだけの話だった。女性の旅行荷物が多いのはよく知っている。ベルゼビュートが家ごと引っ越す勢いで持ち歩くのを何度も見てきた。
さすがに彼女は極端だと思うが、それでも幼いリリスと一緒に行った視察旅行の荷物を思い出せば、ある程度察しがついた。向こうに行って足りないと困るから多めに持っていく。使わないと思うけど、もしかしたら必要になるかも? そんな懸念を抱える彼女達を想像し、アスタロト達にバレない範囲で預かってやろうと決めた。
「見て、ルシファー。すごく似てるわ」
ルキフェルが抱っこした子供を覗き込み、リリスは無邪気に喜んでいる。
「ルシファーが小さい頃って、こんな感じだったのかしら」
くすくす笑って、まだ眠り続ける子供の頬を突いた。1歳の子を抱いた16歳前後に見えるルキフェルを膝に乗せるベールは、まるで孫が出来た祖父のような立ち位置だ。外見は麗しい20歳代前半を維持しているため、年の離れた兄弟に見えなくもない。
「ベールの子を抱っこする年の離れた弟ルキフェル……っぽく見えるな」
余計な発言をしたルシファーは、慌てて口を両手で押さえた。考えるより早く言い訳が零れだす。
「いや、でも若く見えるし……兄弟か?」
「若く見える、ですか?」
実際若いつもりですが。そんなニュアンスの繰り返しに、ルシファーは「大丈夫、若い」と返して後退る。膝にルキフェルを乗せている間に逃げなくては――しかしリリスはベールの手が届く位置で、赤子の顔を触っていた。これは危険だ。
「リ、リリス……おいで」
「どうして?」
きょとんとしたリリスに、ベールがにやりと笑った。美形のどこか黒い笑みにルシファーが慌てる。しかし時すでに遅し。リリスにベールが話しかけた。
「ほら、もっと近くで見るといいですよ」
「そうだね。どうせなら抱っこしてみる?」
ルキフェルも空気を読まずに同意したため、リリスは嬉しそうに近づいた。ルキフェルの腕から抱っこさせてもらい、嬉しそうに頬を緩める。自分似の赤子を抱っこするリリスの姿に、ルシファーがうっとりと表情を和らげた。
なんという眼福――我が子が生まれたら、こんな感じだろうか。
ルキフェルを下したベールに捕まり、吸血鬼王の説教から幻獣霊王の嫌味に繋がった長いお叱りの時間を経て、ルシファーが解放されたのは夕方だった。
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