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22章 リリス嬢、成長の証
276. お取り巻きの実力と役目
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レライエは竜人族出身なので、小さな翼がある。竜の翼は見た目がコウモリに似ているが、先端がかぎ爪になっているのが特徴だ。ばさりと広げて見せると、リリスは目を輝かせた。
「すごぉい! かっこいぃ」
午後のお勉強時間にもらった箱のお礼をしたいと少女達が言い出し、なぜか互いの能力を見せ合うことになった。しかも魔王様の見学付きである。緊張するお取り巻き4人は中庭でそれぞれの特技を披露し始めた。
最初がレライエになったのは、じゃんけんで負けた順番だから。竜の翼を大きく羽ばたかせたあと、一瞬でドラゴンの姿になる。後見人であるルキフェル大公は竜族で、竜人族と少し違うのだ。
竜族は卵生で、生まれ持った姿はドラゴンだ。竜人族は胎生で人族の姿で生まれる。そのため竜人族でドラゴン姿になるためには、膨大な魔力と魔力制御が必要だった。
ルキフェルがドラゴンの姿に戻るのは、生まれ持った形に戻るだけなので、ほとんど魔力は要らない。逆にルキフェルが人型を取る方が魔力を使っていた。どちらが優れているというわけではないが、竜族の方が数倍長生きである。
「おおきぃね!」
ルシファーが奇妙な水晶玉を手にご機嫌なのは、音を録音する為の魔法陣を開発したからだ。現在リリスの首にかかる水晶のネックレスから、ルシファーの手元にある水晶玉へ収集した音を刻んでいた。対象物を限定した魔法陣なので、他人の声が入らない力作だ。
「ありがとうございます」
ドラゴンは本来のフェンリルくらいだ。小山程度で、まだ少女であるレライエがさらに大きな竜体を作るのは無理だった。魔力量の限界だ。
しゅるしゅると元の姿に戻ったレライエに周囲も拍手する。まだ7歳の少女が披露したドラゴン化は、優秀さの証だった。ルキフェル推薦という肩書に相応しいと、中庭で作業していたエルフ達も称賛する。
照れた様子のレライエの緑の瞳が細められた。ドラゴン姿になると、オレンジの鱗に燃えるような赤い瞳になるのだが、人型になると目の色が変化する。
「目の色違うねぇ」
「魔力を大量に使うと赤くなるのです」
ドラゴン姿の時はほぼすべての魔力を解放しているため、赤く目が色づくらしい。理由を聞いたリリスは「リリスと同じ色」と手を叩いて喜んだ。
「……オレの目も赤くする方法を探すか」
真剣にとんでもない発言をするルシファーへ「バカなことを考えないでください」とアスタロトが釘をさす。放っておくと、とんでもない行動にでる。通常なら無理な話も、魔力と魔法陣で何とかしようとするから、止めるなら早いうちに手を打たないと手遅れになるのだ。
しっかり者の側近の突っ込みを前に、ルーサルカは悟った。魔王や王妃の側近とは、つまり事前に諭して厄介ごとを回避させる仕事なのだ。場合によっては、すでに起きた騒動の尻ぬぐいまで含まれるのだと。
一番年上であり現在9歳のルーサルカは、今後の方針を他の子と話し合う決意をした。
「次は誰がやるの?」
わくわくしているリリスの声に、ルーシアが手を挙げた。
「私です」
3番目はシトリーで、最後がルーサルカだった。
4人の中でもっとも白いのは、水の妖精族のルーシアだろう。続いてルーサルカ、シトリー、レライエの順番だった。この並びは、そのまま生まれ持った魔力量とイコールだ。
背中にベルゼビュートとよく似た透明の羽が広げられる。妖精や精霊の羽は透き通ったものが多く、太陽の光を弾いてきらきらと輝いた。
空中の水分を引き寄せて大きな水の球を作り出し、中央に描いた魔法陣へ魔力を注ぎ込んでいく。集中して行うルーシアの表情に、誰もが声や音を立てないよう気遣った結果、中庭全体が沈黙した。静かな中庭に、水で作られた大きなフェンリルが生まれる。
ぶわっと背中から舞い上がるように冷たい蒸気となって周囲を満たした。どうやら超音波で振動させて水を再び空中に戻したらしい。そのまま魔術を解除すると、庭が水浸しになってしまう。彼女らしい気遣いで周囲が一気に涼しくなった。
「うわぁ……涼しい!」
ルーシアが下がると、大技だっただけに次がやりづらい。迷った末、年下のシトリーを気遣ったルーサルカが前に出た。
「すごぉい! かっこいぃ」
午後のお勉強時間にもらった箱のお礼をしたいと少女達が言い出し、なぜか互いの能力を見せ合うことになった。しかも魔王様の見学付きである。緊張するお取り巻き4人は中庭でそれぞれの特技を披露し始めた。
最初がレライエになったのは、じゃんけんで負けた順番だから。竜の翼を大きく羽ばたかせたあと、一瞬でドラゴンの姿になる。後見人であるルキフェル大公は竜族で、竜人族と少し違うのだ。
竜族は卵生で、生まれ持った姿はドラゴンだ。竜人族は胎生で人族の姿で生まれる。そのため竜人族でドラゴン姿になるためには、膨大な魔力と魔力制御が必要だった。
ルキフェルがドラゴンの姿に戻るのは、生まれ持った形に戻るだけなので、ほとんど魔力は要らない。逆にルキフェルが人型を取る方が魔力を使っていた。どちらが優れているというわけではないが、竜族の方が数倍長生きである。
「おおきぃね!」
ルシファーが奇妙な水晶玉を手にご機嫌なのは、音を録音する為の魔法陣を開発したからだ。現在リリスの首にかかる水晶のネックレスから、ルシファーの手元にある水晶玉へ収集した音を刻んでいた。対象物を限定した魔法陣なので、他人の声が入らない力作だ。
「ありがとうございます」
ドラゴンは本来のフェンリルくらいだ。小山程度で、まだ少女であるレライエがさらに大きな竜体を作るのは無理だった。魔力量の限界だ。
しゅるしゅると元の姿に戻ったレライエに周囲も拍手する。まだ7歳の少女が披露したドラゴン化は、優秀さの証だった。ルキフェル推薦という肩書に相応しいと、中庭で作業していたエルフ達も称賛する。
照れた様子のレライエの緑の瞳が細められた。ドラゴン姿になると、オレンジの鱗に燃えるような赤い瞳になるのだが、人型になると目の色が変化する。
「目の色違うねぇ」
「魔力を大量に使うと赤くなるのです」
ドラゴン姿の時はほぼすべての魔力を解放しているため、赤く目が色づくらしい。理由を聞いたリリスは「リリスと同じ色」と手を叩いて喜んだ。
「……オレの目も赤くする方法を探すか」
真剣にとんでもない発言をするルシファーへ「バカなことを考えないでください」とアスタロトが釘をさす。放っておくと、とんでもない行動にでる。通常なら無理な話も、魔力と魔法陣で何とかしようとするから、止めるなら早いうちに手を打たないと手遅れになるのだ。
しっかり者の側近の突っ込みを前に、ルーサルカは悟った。魔王や王妃の側近とは、つまり事前に諭して厄介ごとを回避させる仕事なのだ。場合によっては、すでに起きた騒動の尻ぬぐいまで含まれるのだと。
一番年上であり現在9歳のルーサルカは、今後の方針を他の子と話し合う決意をした。
「次は誰がやるの?」
わくわくしているリリスの声に、ルーシアが手を挙げた。
「私です」
3番目はシトリーで、最後がルーサルカだった。
4人の中でもっとも白いのは、水の妖精族のルーシアだろう。続いてルーサルカ、シトリー、レライエの順番だった。この並びは、そのまま生まれ持った魔力量とイコールだ。
背中にベルゼビュートとよく似た透明の羽が広げられる。妖精や精霊の羽は透き通ったものが多く、太陽の光を弾いてきらきらと輝いた。
空中の水分を引き寄せて大きな水の球を作り出し、中央に描いた魔法陣へ魔力を注ぎ込んでいく。集中して行うルーシアの表情に、誰もが声や音を立てないよう気遣った結果、中庭全体が沈黙した。静かな中庭に、水で作られた大きなフェンリルが生まれる。
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「うわぁ……涼しい!」
ルーシアが下がると、大技だっただけに次がやりづらい。迷った末、年下のシトリーを気遣ったルーサルカが前に出た。
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