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外伝
外伝6.悪くないと思った(SIDEカイルス)
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動揺している間に、ドラゴン間で話が進む。婿が神族となれば、エディットの結婚式は早い方がいいと盛り上がった。自分の内面と向き合っている隙に、外堀は凄い勢いで埋められていく。
「カイルのどこが好き?」
「優しいところと押しに弱いところ」
意外とよく見てるじゃないか。自分でも呆れるほど押しに弱かった。いや、まったく気にならない相手なら突き放せるんだが……そこでまた行き当たる。結局のところ、俺はエディットが嫌いじゃない。どちらかと言えば好きだ。それが結婚する程かと問われたら、答えられない。
「拒絶じゃない時点で、かなり好意があるだろ」
ぐいぐいと押してくるタイフォンを睨み、膝の上で笑うイシスに気が抜ける。好き、なんだろうか。出会った当初、タイフォンに飽きたら俺と番えばいいと考えるくらいには、イシスが好きだった。無理やり奪う気はないし、こうして笑っているイシスを見れば満足もしている。
桃色のドラゴンを見て、こんなに自分勝手に話を勧められても嫌いじゃない時点で……俺はかなり気に入っているのだろう。迷う俺の様子に、タイフォンはイシスの黒髪に口づけながら笑った。
「オレみたいに、彼女を連れて旅に出てみろ。考えがはっきりするぞ」
なるほど。それも一考の価値がある。ちらりと視線を向けるとエディットは嬉しそうに尻尾を振った。祖父ファフニールとタイフォンが何か話し合った結果、こちらを向いた時には話が決まっている。
「致し方あるまい。数年ほどエディットを預けよう。だが間違っても手を出すでないぞ」
牙を剥いて脅されても、正直意味がよくわからん。なぜ俺が彼女を娶ること前提で話が進んでる? 首を傾げる間に、ほらほらと押しだされた。笑顔のイシスが「大切にしてくれるよ」と勝手に約束している。頷くエディットの頬が赤く染まって、それはまあ……愛らしいんだが。
ん? 愛らしい? 自分の感情に疑問を持ったが、あれよあれよと洞窟から追い出される。ご機嫌のエディットの背に乗せられ、また空を舞うこととなった。今度は落とさないと気合を入れる彼女の首筋を撫でて、なるようになるさと笑う。
こんな気分は久しぶりだ。先が見えない旅も悪くないな。ひらりと追いかけた緑竜エルランドが娘に何か言い聞かせた後、俺にぺこりと頭を下げる。通常、父親は娘を嫁に出したくないのではないか?
「数年、好きにさせてやってください。この子の世界が広がりますから」
思わぬ言葉に絶句していると、当然のようにさらりと付け加えられた。
「でも手を出したら、イシスを含めた全員を敵に回しますよ」
ファフニールによく似た笑みを残し、ひらりと離れていく。くそっ、どんだけ信用がないんだ? それ以前になぜ俺と一緒に送り出した。心配なら手元に置いておけ。溜め息を吐くと、耳聡いエディットが気づいて振り返る。ぐらりと大きく竜体が傾いた。
「こらっ! 振り向くな、落ちるだろ」
「ごめんなさい! 私のこと嫌い?」
直球で聞かれて「嫌いじゃない」と答えたのは反射的な行動。この時点でしっかり尻に敷かれた俺は、この旅立ちから10年後に彼女を嫁にした。黒竜姿の俺と番になった彼女は嬉しそうで、つられて微笑む。こういうのも悪くないさ。
「カイルのどこが好き?」
「優しいところと押しに弱いところ」
意外とよく見てるじゃないか。自分でも呆れるほど押しに弱かった。いや、まったく気にならない相手なら突き放せるんだが……そこでまた行き当たる。結局のところ、俺はエディットが嫌いじゃない。どちらかと言えば好きだ。それが結婚する程かと問われたら、答えられない。
「拒絶じゃない時点で、かなり好意があるだろ」
ぐいぐいと押してくるタイフォンを睨み、膝の上で笑うイシスに気が抜ける。好き、なんだろうか。出会った当初、タイフォンに飽きたら俺と番えばいいと考えるくらいには、イシスが好きだった。無理やり奪う気はないし、こうして笑っているイシスを見れば満足もしている。
桃色のドラゴンを見て、こんなに自分勝手に話を勧められても嫌いじゃない時点で……俺はかなり気に入っているのだろう。迷う俺の様子に、タイフォンはイシスの黒髪に口づけながら笑った。
「オレみたいに、彼女を連れて旅に出てみろ。考えがはっきりするぞ」
なるほど。それも一考の価値がある。ちらりと視線を向けるとエディットは嬉しそうに尻尾を振った。祖父ファフニールとタイフォンが何か話し合った結果、こちらを向いた時には話が決まっている。
「致し方あるまい。数年ほどエディットを預けよう。だが間違っても手を出すでないぞ」
牙を剥いて脅されても、正直意味がよくわからん。なぜ俺が彼女を娶ること前提で話が進んでる? 首を傾げる間に、ほらほらと押しだされた。笑顔のイシスが「大切にしてくれるよ」と勝手に約束している。頷くエディットの頬が赤く染まって、それはまあ……愛らしいんだが。
ん? 愛らしい? 自分の感情に疑問を持ったが、あれよあれよと洞窟から追い出される。ご機嫌のエディットの背に乗せられ、また空を舞うこととなった。今度は落とさないと気合を入れる彼女の首筋を撫でて、なるようになるさと笑う。
こんな気分は久しぶりだ。先が見えない旅も悪くないな。ひらりと追いかけた緑竜エルランドが娘に何か言い聞かせた後、俺にぺこりと頭を下げる。通常、父親は娘を嫁に出したくないのではないか?
「数年、好きにさせてやってください。この子の世界が広がりますから」
思わぬ言葉に絶句していると、当然のようにさらりと付け加えられた。
「でも手を出したら、イシスを含めた全員を敵に回しますよ」
ファフニールによく似た笑みを残し、ひらりと離れていく。くそっ、どんだけ信用がないんだ? それ以前になぜ俺と一緒に送り出した。心配なら手元に置いておけ。溜め息を吐くと、耳聡いエディットが気づいて振り返る。ぐらりと大きく竜体が傾いた。
「こらっ! 振り向くな、落ちるだろ」
「ごめんなさい! 私のこと嫌い?」
直球で聞かれて「嫌いじゃない」と答えたのは反射的な行動。この時点でしっかり尻に敷かれた俺は、この旅立ちから10年後に彼女を嫁にした。黒竜姿の俺と番になった彼女は嬉しそうで、つられて微笑む。こういうのも悪くないさ。
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