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外伝
外伝5.真逆なのによく似た子(SIDEカイルス)
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エディットが興奮して連絡したため、文字通り飛んで帰った竜帝とその妻に両脇を固められた。逃げ場を失った俺は諦めに肩を落とす。どうしてこうなった?
揉めるドラゴンに興味を持ったのがいけなかったのか。その前の湖に立ち寄ったところからか? もういっそ、原始神殿から出なければよかった気もしてきた。
「致し方あるまい、エディット本人の希望だ。あとは婿殿の意向次第だな」
祖父馬鹿を披露する竜帝ファフニールを睨む。銀の鱗は艶があり、まだまだ元気な彼はにやりと笑った。
「ところで孫婿殿、竜になれるのか? あの子は人にはなれんぞ」
「それは……見ればわかる」
竜が人の言語を操るのに、通常200年ほどかかる。人の姿を取れるようになるのは、500年ほどか。ドラゴンの通常の寿命が1000年前後と考えれば、竜帝とその妻くらいしか人化出来ないだろう。その年齢まで婚期を伸ばすのは哀れと、匂わせてきた。
婚期が心配なら、他のドラゴンと娶せてやれ。いっそ現実を突きつけてやろうかと思ったタイミングで、イシスが洞窟に飛び込んできた。
「カイル、久しぶり! あ、お父さんとお母さんも来たの? エディットが結婚するって聞いたんだよ。どのドラゴンと結婚するの?」
無邪気に青竜ヴルムに飛び付いたイシスは、器用に尻尾からよじ登り始めた。慣れた様子でファフニールの尻尾が尻を支えて押し上げ、背中に座る。と同時に、後ろからタイフォンが現れた。彼がイシスから離れるわけがないので、予測済みだ。
「イシスおじさま、この方よ」
タイフォンは鱗の上に胡座をかくと、イシスを乗せた。にやにやと笑いながら状況を楽しんでいる。くそっ、他人事だと思いやがって。
エディットが喜色満面で説明したため、こてりとイシスの首が傾いた。
「セティ、カイルはドラゴンになるの?」
「さて、どうかな。ドラゴンになることは可能だが」
神格を放棄する必要もない。姿をドラゴンに変化させれば終わりだった。物理的に無理ではないが、敢えて望む状況でもなかった。後ろから近づいたエディットが、べろんと俺の上半身を舐める。
「匂いつけよ!」
年頃の女の子がそれもどうかと思う。参ったな。どう断ったら傷つけないか迷うが、タイフォンが口を挟んだ。
「カイルス、どう断っても傷つく。それより、傷つけたくないなら、その感情を突き詰めてみたらどうだ?」
言われた内容に眉を寄せた。傷つけたくない感情? 確かに俺が誰かを気遣うなんて滅多にない。死のうが泣こうが関心を示すことはなかった。振り向いた先で桃色のドラゴンはへらりと笑う。悪気はないし、自分が嫌われるなんて考えたこともないだろう。
イシスとは違う。常に嫌われることを恐れる彼と真逆の恵まれた環境で育ったのに、イシスと同じ雰囲気を持つエディット。真っ直ぐで透き通る存在を改めて認識し、動揺した。
待て、まだ子どもだぞ?
揉めるドラゴンに興味を持ったのがいけなかったのか。その前の湖に立ち寄ったところからか? もういっそ、原始神殿から出なければよかった気もしてきた。
「致し方あるまい、エディット本人の希望だ。あとは婿殿の意向次第だな」
祖父馬鹿を披露する竜帝ファフニールを睨む。銀の鱗は艶があり、まだまだ元気な彼はにやりと笑った。
「ところで孫婿殿、竜になれるのか? あの子は人にはなれんぞ」
「それは……見ればわかる」
竜が人の言語を操るのに、通常200年ほどかかる。人の姿を取れるようになるのは、500年ほどか。ドラゴンの通常の寿命が1000年前後と考えれば、竜帝とその妻くらいしか人化出来ないだろう。その年齢まで婚期を伸ばすのは哀れと、匂わせてきた。
婚期が心配なら、他のドラゴンと娶せてやれ。いっそ現実を突きつけてやろうかと思ったタイミングで、イシスが洞窟に飛び込んできた。
「カイル、久しぶり! あ、お父さんとお母さんも来たの? エディットが結婚するって聞いたんだよ。どのドラゴンと結婚するの?」
無邪気に青竜ヴルムに飛び付いたイシスは、器用に尻尾からよじ登り始めた。慣れた様子でファフニールの尻尾が尻を支えて押し上げ、背中に座る。と同時に、後ろからタイフォンが現れた。彼がイシスから離れるわけがないので、予測済みだ。
「イシスおじさま、この方よ」
タイフォンは鱗の上に胡座をかくと、イシスを乗せた。にやにやと笑いながら状況を楽しんでいる。くそっ、他人事だと思いやがって。
エディットが喜色満面で説明したため、こてりとイシスの首が傾いた。
「セティ、カイルはドラゴンになるの?」
「さて、どうかな。ドラゴンになることは可能だが」
神格を放棄する必要もない。姿をドラゴンに変化させれば終わりだった。物理的に無理ではないが、敢えて望む状況でもなかった。後ろから近づいたエディットが、べろんと俺の上半身を舐める。
「匂いつけよ!」
年頃の女の子がそれもどうかと思う。参ったな。どう断ったら傷つけないか迷うが、タイフォンが口を挟んだ。
「カイルス、どう断っても傷つく。それより、傷つけたくないなら、その感情を突き詰めてみたらどうだ?」
言われた内容に眉を寄せた。傷つけたくない感情? 確かに俺が誰かを気遣うなんて滅多にない。死のうが泣こうが関心を示すことはなかった。振り向いた先で桃色のドラゴンはへらりと笑う。悪気はないし、自分が嫌われるなんて考えたこともないだろう。
イシスとは違う。常に嫌われることを恐れる彼と真逆の恵まれた環境で育ったのに、イシスと同じ雰囲気を持つエディット。真っ直ぐで透き通る存在を改めて認識し、動揺した。
待て、まだ子どもだぞ?
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