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287.戦利品が家に刺さってるの?
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卵を抱っこして、たくさん話しかけた。向こうの大陸で出会った人の話をしたり、お髭のある神様の話もする。それから大きな段差のある川……滝と呼ぶんだよ。それや凍った大地の話もした。
話すことがなくなってきて、僕は自分のことを話し始めた。洞窟の神殿でもらったご飯は、あの頃は美味しいと思ってたの。セティに甘い飴を貰ったり、お肉を食べさせてもらってびっくりした。世の中には美味しいものがたくさんあって、幸せなこともいっぱいある。だから安心して生まれてきていいんだよ。
話し終えた僕の後ろで、鼻を啜る音がする。振り返るとカイサお姉さんだけじゃなくて、フェリクスお兄さんやお母さんの目が潤んでた。首を傾げた僕に、エルランドお兄さんが赤くなった目元を擦りながら鼻を擦り寄せる。
「みんな、どうしたの?」
「い、いや……イシスのことを好きだなと思ってたんだ」
フェリクスお兄さんがそう言ったら、口々にお姉さんやお母さんも似た事を言う。
「イシスは家族だもの、いつでも会いにきてね」
「イシスは我らの愛し子だからね」
変なの。でも代わりばんこで抱っこされたのは嬉しい。ルードルフお兄さんとお父さんが出て行って、もう半日くらいかな。洞窟の入り口で何か音がして、フェリクスお兄さんが見に行った。すぐに硬い剣を掴んで帰ってきた。
「変なのがいたから、倒しておいた」
戦利品だ、得意げに胸を逸らすお兄さんの赤い鱗に、もう少し暗い色の赤が付いている。撫でようとしたら避けられちゃった。手が汚れると言われたから、諦める。
「この剣は何に使うの?」
持って帰ってきたんだから、予定があるのかも。尋ねた僕に、フェリクスお兄さんが笑った。
「俺の棲家はたくさんの剣が刺してあるぞ。戦利品だからな」
戦利品の意味がよくわからないけど、ひとつだけ疑問に思った。
「剣が刺さってるお家は、チクチクしないの?」
ふふっと笑ったエルランドお兄さんの横で、カイサお姉さんも肩を震わせる。お母さんは声も出ないほど笑って転がってた。僕、そんなにおかしなことを言った?
「ごめん、イシスには分からんだろうな」
奥から出てきたセティがそう言って僕を抱きしめた。別に悪いことを言ったんじゃなければいいんだけど。フェリクスお兄さんは説明に困ったあと、僕を家に招待してくれるって。楽しみだね。
外で大きな音がして、今度はエルランドお兄さんが飛び出していった。よたよたと追いかけるボリスは、入り口の手前でお母さんに捕まった。尻尾を咥えられて引き摺り戻されたボリスは拗ねて丸くなる。撫でていると、また大きな音がした。フェリクスお兄さんが叫ぶ。
「爆薬か! 伏せろ」
咄嗟に僕は卵に抱き付いた。その上から何かが飛んできて被さり、僕は卵に話しかける。
「大丈夫、心配ないよ。怖くないからね」
まだヒビの入らない卵は、中からコツンと小さな返事をくれた。
話すことがなくなってきて、僕は自分のことを話し始めた。洞窟の神殿でもらったご飯は、あの頃は美味しいと思ってたの。セティに甘い飴を貰ったり、お肉を食べさせてもらってびっくりした。世の中には美味しいものがたくさんあって、幸せなこともいっぱいある。だから安心して生まれてきていいんだよ。
話し終えた僕の後ろで、鼻を啜る音がする。振り返るとカイサお姉さんだけじゃなくて、フェリクスお兄さんやお母さんの目が潤んでた。首を傾げた僕に、エルランドお兄さんが赤くなった目元を擦りながら鼻を擦り寄せる。
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「この剣は何に使うの?」
持って帰ってきたんだから、予定があるのかも。尋ねた僕に、フェリクスお兄さんが笑った。
「俺の棲家はたくさんの剣が刺してあるぞ。戦利品だからな」
戦利品の意味がよくわからないけど、ひとつだけ疑問に思った。
「剣が刺さってるお家は、チクチクしないの?」
ふふっと笑ったエルランドお兄さんの横で、カイサお姉さんも肩を震わせる。お母さんは声も出ないほど笑って転がってた。僕、そんなにおかしなことを言った?
「ごめん、イシスには分からんだろうな」
奥から出てきたセティがそう言って僕を抱きしめた。別に悪いことを言ったんじゃなければいいんだけど。フェリクスお兄さんは説明に困ったあと、僕を家に招待してくれるって。楽しみだね。
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