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253.勝てるわけがない(SIDEセティ)

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*****SIDE セティ



 可愛いことを考えるイシスを抱き締めて、思うまま貪った。怯えると宥め、泣くと涙を拭う。それでも離してやれない。今度は容赦しないと伝えただろう? 頷いたイシスが悪い。責任転嫁と知りながら、醜い欲でイシスを食らっていく。

 甘い声を上げる唇を塞ぎ、声も唾液もすべて取り込んだ。指を入れて中を探り、ひときわ高い声を上げる場所を刺激する。

「きゃあっ」

 愛らしい声を上げて、恥ずかしいと顔を伏せる。ぞくぞくする、じわじわする。そんな表現でイシスが快楽を感じていることを知る。可愛い表現ばかりだが、どこで覚えたのか。ちゅっと音を立ててキスする。

「いい子だ、もう少ししたら、な?」

 食べてくれるなら我慢すると鼻を啜るイシスが愛おしくて、膨らんだ欲を抑えきれなかった。中から食べられたと驚く姿に煽られて、欲が落ち着くまで何度も貪った。

 今、腕の中でぐったりと力の抜けたイシスは眠る。体力の限界を超えたのだろう。この子はまだ自分が人間だと思っている。もう神になったと何度言い聞かせても、根本的な認識が変わらなければ人間の生態に引きずられるのだ。

 顔を見ながら接吻け、愛を囁き、正面から抱き合って過ごした。外の世界では10日ほど経過したか。数日前からガイアの声が干渉して煩い。ここはかつて神々が生まれた土地、現在は隔離された世界だった。

 人の祈りを受けるためにこの地を出た神々は知らない。この大地がどれほど神格の形成に関係し、高めるのかを。イシスは無事だとつっけんどんに伝え、気を失った青白い頬にキスをする。甘い甘い子ども、神々の末っ子となるイシスはへにゃりと笑う。

 キスが好きで、オレを好きで、まだ愛の醜さを知らない。お前が他の奴に目移りすれば、オレは世界を亡ぼすほど惚れているのに。この子は自覚がなく、優しさと微笑みを振りまく。愛らしい反面、オレの執着を理解しない振る舞いが憎らしかった。

「オレを振り回すのはお前くらいだ。イシス」

 意識がないから文句を言って、謝らないイシスの頬や額にキスをする。起きていたら絶対に言えないな。やや冷えた体を温め、膝の上に跨った体の汚れを浄化した。以前は苦手だった浄化や治癒も、かなり上達した。

 イシスと一緒にいると、破壊神で邪神と恐れられたオレが慈善の神のように変化していく。永く生きて凝り固まったオレという人格すら、イシスは僅かな時間で和らげた。

「愛してるよ、イシス。絶対に離さないからな」

 聞こえているのか、イシスの口元が綻ぶ。舐めたり噛んだり、ぽってりと膨らんだ唇をもう一度貪った。

「ふ……っ、う、んぅ」

 少し苦しそうな声を上げた後、イシスはぱちりと目を開いた。美しい紫の瞳だ。自分の色を見ても感じないのに、イシスに宿ると素直に綺麗だと思えた。ぺちゃりと唇を舐めると、すぐに開いて迎えられる。伸ばされた舌に歯を立て、啜り、舐める。吸われたイシスから甘い声が漏れる頃、ようやく離した。

 輝くような美しさを纏う伴侶を存分に愛でながら、オレは俗世への帰還を迷う。

「セティ、たくさん食べた?」

 無邪気な問いに一瞬目を見開き、すぐに破顔した。仕方ない、こんな純粋な魂を選んで囚われたオレが折れるしかないだろう。

「ああ、そうだな。何度も食べるが、今回は終わりにしよう」
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