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235.いけないお祈りをしてしまう
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慈善事業に付き合うことについて、何か難しい話をした。僕は食事をもらえて、病気を治すのは理解できた。でも、子どもを取ったりしないと付け加えたセティに、首を傾げる。子どもはお母さんと暮らすものだから、取らないのは当たり前なのに。
向こうのお母さんは最後まで話を聞いて、迷うように男の子とパンを頬張った小さい女の子を見た。そしてセティに頷く。
「私どもで出来ることでしたら」
「簡単さ。これから言う通りに祈ってくれ」
僕が知らない神様のお名前と祈りの内容を、事細かに説明している。それから周囲の人にも同じように協力してもらえるか、尋ねた。祈れば、その場でパンや肉をあげる約束をする。
「食事と引き換えなら、きっと祈ってくれます」
「そりゃよかった。任せるぞ。食事は明日からこの家の前で配ることにする」
セティが約束して家を出ると、外にはたくさんの人が集まっていた。酸っぱい臭いがする人達に、セティは同じ話を繰り返した。明日この場所に来て祈れば、食べる物を渡す。2回以上祈ったら、病気もタダで治すと追加した。
「都合のいいことばかり言いやがって、絶対に何か企んでるぞ」
瓶を持ってお酒の匂いをさせた男の人が騒ぐ。それをセティは一言で黙らせた。
「嫌なら来るな」
ざわめいた人達がぴたりと黙る。顔を見合わせた後、セティに頭を下げて帰っていった。明日、ちゃんと来てくれるのかな。
「心配しなくてもいい。絶対に集まってくるから」
案内してくれた子にお礼の飴を渡したら、目を丸くした。誰かに取られる前に口に入れ、幸せそうに笑う。僕より年下だけど、頑張ってきたんだと思う。とてとて近づいた子に、飴を譲ってしまった。弟なのかな。嬉しそうに笑う小さい子に渡したら、ご褒美がなくなっちゃうのに。
ちらっとセティを見上げたら、いいぞと言ってくれた。だからもう一つ出して、男の子の口へ押し込む。
「これは君の」
ぼそぼそと小さな声で、お礼を言う。また明日と約束して別れた。セティが何か口の中でお呪いをしていたけど、なんだろう?
屋台があった広場に戻り、まだお店を開いている肉串のおじさんにたくさん注文する。近くのパン屋さんでもたくさん! 明日の朝取りに来る約束をして、お金を半分だけ渡した。
「宿を探すか」
笑うセティに僕も笑い返す。セティは難しいことを考えて、あの子達を助けてくれるんだ。僕を救ってくれたみたいに。優しい神様だもん。
でもね、僕は悪い子だからいけないお祈りをしてしまう。タイフォン神様、セティ、大切な子は僕だけにしてください。仲良しのお呪いも僕だけがいいです。
「伴侶はイシスだけだよ」
真っ赤な顔でそう囁く、僕の神様に頬を擦り寄せた。
*******宣伝*******
6/21たいあっぷ新作、先行公開!
『神狐の巫女姫☆妖奇譚』
――やだ、封印の木札が割れちゃった!?
東開大陸を支配する皇族の末っ子姫アイリーンは、封印された魔物をうっかり逃してしまう。バレないうちにと陰陽術を使い、夜中に狗の魔物と戦う。そんな彼女が魔物を追って侵入したのは、隣の大陸フルールのビュシェルベルジェール王家直轄の墓所だった!
狐面で忍び込む御転婆姫と、仮面で応じる英雄王子。危険な場面で助け合いながらも、魔物の取り合いが始まる。皇家や王家の思惑も入り混じる中、ドタバタする彼と彼女の恋の行方は?!
イラスト&原作協力 蒼巳生姜様
小説 綾雅(りょうが)
たいあっぷで意気投合した新作です!!
妖退治に奔走する2人。恋愛部分はすれ違いラブコメ風、双片想い。ハッピーエンド確定です。
ぜひ、ブクマしてお楽しみください(o´-ω-)o)ペコッ
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「心配しなくてもいい。絶対に集まってくるから」
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「これは君の」
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