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201.洞窟の神殿に泊まる?
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屋根を壊したお父さん達だけど、別に怒られなかったみたい。僕はセティから離れるのが怖くて、お父さん達への挨拶も抱っこのままだった。順番に鼻を差し出すから、お父さん、お母さんの順番で舐めて挨拶する。ドラゴンだと興奮した声がして、すぐに悲鳴が上がった。
「どうしたの?」
『尻尾を突く無礼者に礼儀を教えただけのこと』
お父さんがからりと笑う。そっか、他人の尻尾に勝手に触ったらいけないよね。僕はセティに触れている安心感から、少しだけ笑う。途端にお母さんが嬉しそうに顔を舐めた。
『可愛いイシス、きちんと番に守ってもらうのだよ。無理ならお母さんが守るから』
「問題ない。離れないようにする」
焦った様子でセティが声を上げると、お母さんがぐるると唸った。そうしている間に『ぐぁ』『思ったより痛い』と騒ぐお兄さん達が顔を突っ込んだ。ドラゴンは大きいから、セティ用の広い部屋も狭くなっちゃうね。両手でお兄さん達に挨拶をしたら、フェリクスお兄さんが茶色い鱗を差し出した。ルードルフお兄さんも赤い鱗を咥えている。お互いの色が逆みたいだけど。
『ルードルフの鱗だ。引っ剝いでやったから、首飾りに足しておけ』
『フェリクス兄から奪った鱗だよ。これで炎の魔法が使えるからね』
お互いに鱗を剥ぎ合ったの? 痛かったんじゃないかな。
「ありがとう。痛くない? 平気?」
心配になる。さっき変な声してたの、もしかして無理やり取ったの?
「問題ないさ。ドラゴンが鱗の1枚剥いだくらいで痛がるわけないだろ」
お兄さん達は強いから平気だとセティが言い出した。何か口の中でもごもごしてたけど、お兄さん達も頷く。でも鱗を剥いだら、やっぱり痛かったと思う。重ねてお礼を言って、家族のキスをした。鼻先に順番に唇を近づけて、ちゅっと音をさせる。これならセティもダメだと言わないから。
ボリスが一番最後に顔を見せて唸るけど、お父さんにダメだと言われた。鱗を僕に渡したかったみたいだけど、幼いから効果がないんだって。痛いだけならやめた方がいいと思う。僕も説得した結果、大きくなったら貰う話で落ち着いた。ボリスも話をちゃんと聞いて納得したみたい。
壊した神殿の屋根をお父さんがまた被せていったけど、屋根と壁の境目は穴が開いていた。
「もう住めない?」
「そうだな。別の神殿……いや、似たような連中しかいないか」
考え込むセティに、僕は笑顔で提案した。
「前に僕が住んでた洞窟も神殿だよ!」
お爺ちゃんが驚いた顔をして、セティもぽかんと口を開けて動かなくなった。ゲリュオンは事情を知らないから、膝に乗せたシェリアを撫でている。どこに決まってもいいと思ってるみたい。ぎこちなく動いたセティが「いいのか?」って聞いたけど、何かダメなことあった?
「イシスが気にしないなら……別に、洞窟でも」
テントもあるし、あの洞窟ならベッドもあるから並んで寝られるよ。そう言ったら、お爺ちゃんが赤い顔を反らした。僕はセティに抱き着いて返事を待つ。セティは少し考えた後で、肩を竦めた。
「あの神殿が一番神官が少ないか」
神官が白い服の人なのはわかる。セティが心配してるのは、僕がまた叩かれること? お爺ちゃんがいる日は叩かれたことないから、きっとセティがいれば平気だよ。こうして離れないでいられるなら、僕はどこでもいいんだもん。
「どうしたの?」
『尻尾を突く無礼者に礼儀を教えただけのこと』
お父さんがからりと笑う。そっか、他人の尻尾に勝手に触ったらいけないよね。僕はセティに触れている安心感から、少しだけ笑う。途端にお母さんが嬉しそうに顔を舐めた。
『可愛いイシス、きちんと番に守ってもらうのだよ。無理ならお母さんが守るから』
「問題ない。離れないようにする」
焦った様子でセティが声を上げると、お母さんがぐるると唸った。そうしている間に『ぐぁ』『思ったより痛い』と騒ぐお兄さん達が顔を突っ込んだ。ドラゴンは大きいから、セティ用の広い部屋も狭くなっちゃうね。両手でお兄さん達に挨拶をしたら、フェリクスお兄さんが茶色い鱗を差し出した。ルードルフお兄さんも赤い鱗を咥えている。お互いの色が逆みたいだけど。
『ルードルフの鱗だ。引っ剝いでやったから、首飾りに足しておけ』
『フェリクス兄から奪った鱗だよ。これで炎の魔法が使えるからね』
お互いに鱗を剥ぎ合ったの? 痛かったんじゃないかな。
「ありがとう。痛くない? 平気?」
心配になる。さっき変な声してたの、もしかして無理やり取ったの?
「問題ないさ。ドラゴンが鱗の1枚剥いだくらいで痛がるわけないだろ」
お兄さん達は強いから平気だとセティが言い出した。何か口の中でもごもごしてたけど、お兄さん達も頷く。でも鱗を剥いだら、やっぱり痛かったと思う。重ねてお礼を言って、家族のキスをした。鼻先に順番に唇を近づけて、ちゅっと音をさせる。これならセティもダメだと言わないから。
ボリスが一番最後に顔を見せて唸るけど、お父さんにダメだと言われた。鱗を僕に渡したかったみたいだけど、幼いから効果がないんだって。痛いだけならやめた方がいいと思う。僕も説得した結果、大きくなったら貰う話で落ち着いた。ボリスも話をちゃんと聞いて納得したみたい。
壊した神殿の屋根をお父さんがまた被せていったけど、屋根と壁の境目は穴が開いていた。
「もう住めない?」
「そうだな。別の神殿……いや、似たような連中しかいないか」
考え込むセティに、僕は笑顔で提案した。
「前に僕が住んでた洞窟も神殿だよ!」
お爺ちゃんが驚いた顔をして、セティもぽかんと口を開けて動かなくなった。ゲリュオンは事情を知らないから、膝に乗せたシェリアを撫でている。どこに決まってもいいと思ってるみたい。ぎこちなく動いたセティが「いいのか?」って聞いたけど、何かダメなことあった?
「イシスが気にしないなら……別に、洞窟でも」
テントもあるし、あの洞窟ならベッドもあるから並んで寝られるよ。そう言ったら、お爺ちゃんが赤い顔を反らした。僕はセティに抱き着いて返事を待つ。セティは少し考えた後で、肩を竦めた。
「あの神殿が一番神官が少ないか」
神官が白い服の人なのはわかる。セティが心配してるのは、僕がまた叩かれること? お爺ちゃんがいる日は叩かれたことないから、きっとセティがいれば平気だよ。こうして離れないでいられるなら、僕はどこでもいいんだもん。
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