143 / 321
142.安心できる場所だね
しおりを挟む
ふわふわした気持ちで目を開いて、ぼんやりと周りを見回した。なんだかよく見えない。怖くて手を伸ばすと、指先に冷たい物が触れた。
「だれ?」
『起きたのかい? イシスは熱があったんだよ、覚えている?』
まだよく見えないけど、お母さんの声だ。ほっとして頷いた。覚えてるけど、セティは? 鱗を撫でて気付いた。僕、お母さんの上に寝てるみたい。
『ティフォン』
「おう、今行く」
お母さんの声に答えたセティが、僕の頬に手を触れた。それから額も。熱を測ったのかな。少しセティのが冷たいね。
「まだもう少しだな。悪いが抱いててやってくれ」
ぐぁああ! ボリスの声がする。大きな声で鳴いてるけど、お父さんの声が『後にしなさい』と注意してた。僕、もう平気だから、ボリスを叱らないで。起きあがろうとしたら、セティが上から押さえた。
「まだ動くな、ボリスは後だ」
変なの。でもお父さんに、ボリスにもイシスの顔を見せてやれと話してくれた。お父さんやお母さんより小さいボリスは、お父さんの頭に乗って僕の近くに来た。撫でるとひんやりする。頬を擦り寄せて満足したのかな。降ろされてもボリスは文句を言わなかった。
僕の弟は偉くて可愛くて、すごい。トムとガイアは? 手をぱたぱた動かすと、お腹の辺りで何かが動いた。柔らかい毛皮が僕の顔の近くまで歩いてきて、僕の頬を舐める。トムだ、ちゃんとゲリュオンが見つけてくれたんだね。首に乗っかるようにして、ガイアが僕を包んでくれる。気持ちいい。
うとうとする僕は、そのまま眠ってしまったみたい。次に起きた時は、すっきりしてた。頭もぼんやりしないし、目もちゃんと見える。起き上がる僕の胸の上から、ガイアが転がった。
「あ、ごめん」
助け起こして、よく見るとお腹の横にトムが寝ていた。潰さなくてよかった。
「元気になったな、安心した」
セティが小さくなったの? 腕と頭しか見えなくて焦るけど、僕がお母さんの上に乗ってるからだね。セティは僕の横に登ってきて、また額の熱を測った。今度は平気だったみたい。笑って膝の上に乗せてくれる。
『おやおや、熱が下がったようだね』
「お母さん、ありがとう」
大好きなお母さんの青い鱗を抱き締める。冷たくて硬いのに、すごく居心地がよかった。お母さんといると、セティといる時みたいに安心する。ガイアがくすくす笑い出し、セティが肩をすくめた。
『うまい肉を見つけたぞ。起きたのか、イシス』
熱は下がったか? 心配しながらお父さんが洞窟に入ってきた。僕が覚えてるのは別の大陸から帰るお話をしたところまで。あの後、お父さんが乗せてきてくれたんだね。お礼をいって抱き着こうとすると、お父さんが止めた。
『狩りで汚れておる。後にしよう』
鱗が泥だらけのお父さんは、捕まえた獲物をお母さんに渡して外へ出た。綺麗にするために、外にある湖に行ったんだって。待っている間にたくさんの毛が生えた動物を、お母さんが千切り始めた。ボリスもお手伝いしようとして突いて、お母さんに退けられてる。まだ上手に出来ないみたい。
この洞窟、僕の家族のお家だからかな。すごく暖かい気がした。
「だれ?」
『起きたのかい? イシスは熱があったんだよ、覚えている?』
まだよく見えないけど、お母さんの声だ。ほっとして頷いた。覚えてるけど、セティは? 鱗を撫でて気付いた。僕、お母さんの上に寝てるみたい。
『ティフォン』
「おう、今行く」
お母さんの声に答えたセティが、僕の頬に手を触れた。それから額も。熱を測ったのかな。少しセティのが冷たいね。
「まだもう少しだな。悪いが抱いててやってくれ」
ぐぁああ! ボリスの声がする。大きな声で鳴いてるけど、お父さんの声が『後にしなさい』と注意してた。僕、もう平気だから、ボリスを叱らないで。起きあがろうとしたら、セティが上から押さえた。
「まだ動くな、ボリスは後だ」
変なの。でもお父さんに、ボリスにもイシスの顔を見せてやれと話してくれた。お父さんやお母さんより小さいボリスは、お父さんの頭に乗って僕の近くに来た。撫でるとひんやりする。頬を擦り寄せて満足したのかな。降ろされてもボリスは文句を言わなかった。
僕の弟は偉くて可愛くて、すごい。トムとガイアは? 手をぱたぱた動かすと、お腹の辺りで何かが動いた。柔らかい毛皮が僕の顔の近くまで歩いてきて、僕の頬を舐める。トムだ、ちゃんとゲリュオンが見つけてくれたんだね。首に乗っかるようにして、ガイアが僕を包んでくれる。気持ちいい。
うとうとする僕は、そのまま眠ってしまったみたい。次に起きた時は、すっきりしてた。頭もぼんやりしないし、目もちゃんと見える。起き上がる僕の胸の上から、ガイアが転がった。
「あ、ごめん」
助け起こして、よく見るとお腹の横にトムが寝ていた。潰さなくてよかった。
「元気になったな、安心した」
セティが小さくなったの? 腕と頭しか見えなくて焦るけど、僕がお母さんの上に乗ってるからだね。セティは僕の横に登ってきて、また額の熱を測った。今度は平気だったみたい。笑って膝の上に乗せてくれる。
『おやおや、熱が下がったようだね』
「お母さん、ありがとう」
大好きなお母さんの青い鱗を抱き締める。冷たくて硬いのに、すごく居心地がよかった。お母さんといると、セティといる時みたいに安心する。ガイアがくすくす笑い出し、セティが肩をすくめた。
『うまい肉を見つけたぞ。起きたのか、イシス』
熱は下がったか? 心配しながらお父さんが洞窟に入ってきた。僕が覚えてるのは別の大陸から帰るお話をしたところまで。あの後、お父さんが乗せてきてくれたんだね。お礼をいって抱き着こうとすると、お父さんが止めた。
『狩りで汚れておる。後にしよう』
鱗が泥だらけのお父さんは、捕まえた獲物をお母さんに渡して外へ出た。綺麗にするために、外にある湖に行ったんだって。待っている間にたくさんの毛が生えた動物を、お母さんが千切り始めた。ボリスもお手伝いしようとして突いて、お母さんに退けられてる。まだ上手に出来ないみたい。
この洞窟、僕の家族のお家だからかな。すごく暖かい気がした。
41
お気に入りに追加
1,248
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる