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49.犯人に容赦や慈悲は無用
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「アイカの可愛い顔に傷……絶対に許さん!」
叫んだと同時に、爆風が巻き起こった。レイモンドは勢いよく飛び上がり、そのまま犯人の追跡に入る。拘束を解かれたアイカは、ぽかんと口を開けたまま見送った。
顔の傷っていうか、それは犯人じゃなくてオレンジなんだけど。まあ、同じ袋に入れられなきゃ無事だったし、その意味では犯人も責任あるかな。そんなことを考えながら止めないアイカは、自覚がないだけでかなり怒っていた。
何が目的だったのか不明だが、痛い思いや気持ち悪さを耐えたのだ。その分の仕返しはしたい。当然、犯人は罰を受けさせるべきだと考えた。レイモンドが見えなくなって、しばらくすると悲鳴が聞こえてくる。
「おや、本気を出したようじゃな」
ひょっこり現れたのは、トムソンだった。匂いを辿ってアイカの居場所を特定したのは、狼獣人の彼だ。ちょうどブレンダにお菓子を運んできたトムソンは、すっ飛んで逃げる猫に驚いた。黒猫ノアールは物陰に飛び込んだが、白猫ブランは塀を睨んで怒っている。
見回すと昼寝用の上掛けが落ちているのに、アイカの姿がなかった。攫われたと判断するまで、さほど時間はかからない。アイカの匂いが塀から外へ続いていたし、ブランはずっと威嚇し続けていた。
取り返しに行くと意気込んだブレンダが、愛用の包丁を手に取った。そんな恋人を守る意味もあるが、娘同然のアイカの行方も心配だった。同行を申し出て走り出したところへ、レイモンドが遅れて登場したのだ。
最終的に匂いを追うトムソンは四つ足で走り、レイモンドはブレンダを乗せて飛んだ。お陰で路面が悪い道を走る馬車に追いついたのだが……。
ほんの僅かの差でアイカに危害を加えられた……と思い込んだドラゴンの本気は凄かった。森の木々を足で薙ぎ倒し、犯人の馬車を踏みつける。走って逃げる男を追い回して、頭を咥えて空へ放り投げた。自由落下した犯人は、骨折や脱臼で動けない。
ドラゴンは意外にも嗅覚が優れており、犯人と思われる者を片っ端から捕らえた。アイカとの思い出の家を根城にしたのも許せない。痛みに呻く犯人の両足を、軽く踏んでぺきっといい音させたレイモンドは、ようやく我に返った。
「アイカに寄り添わないと」
ドシンドシンと重い音を立てて追い回したのが嘘のように、ペタンと軽い音をさせて走り始めた。動揺していたのだろう。飛ぶという選択肢が抜けている。それでもすぐにブレンダの家に着いた。
「皆、無事か?」
「そこはアイカでいいと思うよ」
ブレンダから指摘され、ぽりぽりと器用に前足の先で鼻を掻く。レイモンドの前に、アイカが現れた。なぜか着替えている。頬に引っ掻かれた傷が残り、他にも血が滲んでいた。
「なんてひどい。遅れて悪かった」
「ううん……助けてくれてありがとう」
大体の事情をブレンダから聞いたアイカは、レイモンドが頑張ったことを疑わなかった。尻を落として座り、大きく息をつくレイモンドの姿に、そっと寄り添う。その手に握ったタオルで、ひたすらに足を拭いているのが気になった。
「どうした? 足も痛めたのか」
「変な奴に舐められた」
「なんだと?! 俺もまだなのに」
後半の言葉が無意識に飛び出すレイモンド。聞いて真っ赤になるアイカの手が止まる。にやにやするトムソンを引っ張り、ブレンダは家の裏側に隠れた。
「こりゃ、いい感じじゃないかい。すぐにくっつきそうだよ」
ブレンダの感想に、トムソンも大きく首を縦に振った。
叫んだと同時に、爆風が巻き起こった。レイモンドは勢いよく飛び上がり、そのまま犯人の追跡に入る。拘束を解かれたアイカは、ぽかんと口を開けたまま見送った。
顔の傷っていうか、それは犯人じゃなくてオレンジなんだけど。まあ、同じ袋に入れられなきゃ無事だったし、その意味では犯人も責任あるかな。そんなことを考えながら止めないアイカは、自覚がないだけでかなり怒っていた。
何が目的だったのか不明だが、痛い思いや気持ち悪さを耐えたのだ。その分の仕返しはしたい。当然、犯人は罰を受けさせるべきだと考えた。レイモンドが見えなくなって、しばらくすると悲鳴が聞こえてくる。
「おや、本気を出したようじゃな」
ひょっこり現れたのは、トムソンだった。匂いを辿ってアイカの居場所を特定したのは、狼獣人の彼だ。ちょうどブレンダにお菓子を運んできたトムソンは、すっ飛んで逃げる猫に驚いた。黒猫ノアールは物陰に飛び込んだが、白猫ブランは塀を睨んで怒っている。
見回すと昼寝用の上掛けが落ちているのに、アイカの姿がなかった。攫われたと判断するまで、さほど時間はかからない。アイカの匂いが塀から外へ続いていたし、ブランはずっと威嚇し続けていた。
取り返しに行くと意気込んだブレンダが、愛用の包丁を手に取った。そんな恋人を守る意味もあるが、娘同然のアイカの行方も心配だった。同行を申し出て走り出したところへ、レイモンドが遅れて登場したのだ。
最終的に匂いを追うトムソンは四つ足で走り、レイモンドはブレンダを乗せて飛んだ。お陰で路面が悪い道を走る馬車に追いついたのだが……。
ほんの僅かの差でアイカに危害を加えられた……と思い込んだドラゴンの本気は凄かった。森の木々を足で薙ぎ倒し、犯人の馬車を踏みつける。走って逃げる男を追い回して、頭を咥えて空へ放り投げた。自由落下した犯人は、骨折や脱臼で動けない。
ドラゴンは意外にも嗅覚が優れており、犯人と思われる者を片っ端から捕らえた。アイカとの思い出の家を根城にしたのも許せない。痛みに呻く犯人の両足を、軽く踏んでぺきっといい音させたレイモンドは、ようやく我に返った。
「アイカに寄り添わないと」
ドシンドシンと重い音を立てて追い回したのが嘘のように、ペタンと軽い音をさせて走り始めた。動揺していたのだろう。飛ぶという選択肢が抜けている。それでもすぐにブレンダの家に着いた。
「皆、無事か?」
「そこはアイカでいいと思うよ」
ブレンダから指摘され、ぽりぽりと器用に前足の先で鼻を掻く。レイモンドの前に、アイカが現れた。なぜか着替えている。頬に引っ掻かれた傷が残り、他にも血が滲んでいた。
「なんてひどい。遅れて悪かった」
「ううん……助けてくれてありがとう」
大体の事情をブレンダから聞いたアイカは、レイモンドが頑張ったことを疑わなかった。尻を落として座り、大きく息をつくレイモンドの姿に、そっと寄り添う。その手に握ったタオルで、ひたすらに足を拭いているのが気になった。
「どうした? 足も痛めたのか」
「変な奴に舐められた」
「なんだと?! 俺もまだなのに」
後半の言葉が無意識に飛び出すレイモンド。聞いて真っ赤になるアイカの手が止まる。にやにやするトムソンを引っ張り、ブレンダは家の裏側に隠れた。
「こりゃ、いい感じじゃないかい。すぐにくっつきそうだよ」
ブレンダの感想に、トムソンも大きく首を縦に振った。
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