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16.掃除の前に自分が汚れちゃった
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滞在を許可するの文面に付け加えられた数字は、振り分けられる等級みたいなものだった。ブレンダの説明にあった支援金額や移住できる範囲を示している。その辺は詳しい書類が後日配達されるみたい。滅多に別世界の人が現れないこの辺では、数字だけで判別できる知識人はいなかった。
「竜帝様のサインって、有名なの?」
正直、ブレンダやトムソンが簡単に区別できるなんて。想像できない。だって、日本でこれが天皇陛下のサインだよ、と見せられても本物か判断できないから。総理の署名だと言われたって、本物を見たことがなければ首を傾げる。名前が読めても、イコール本人が書いたとは限らない。
「ああ、この署名の後ろに小さな粒があるだろ」
「うん」
撫でると何かが貼り付いているのが分かる。
「竜帝様の鱗の一部さ、本物だと言う証明だ」
「はぁ……」
えええ? 思ったより原始的な方法で見分けていた。別の竜がいて鱗の欠片を貼り付けることはないのかな。いろいろ考えてしまったけど、別世界なんだし……詐欺とか心配するのは任せよう。常識とか違い過ぎて分からない。
大量に書類を作るだろう帝が、鱗を使ってたら禿げない? 鱗の残量を心配してしまった。もしかしたら、ゴジラ並みに巨大なんだろうか。
「許可証の他に、何か届いてないかい?」
「いいや、預かったのはこれだけだ」
「後で配達されるのかもしれないね」
ブレンダとトムソンの会話に首を傾げるアイカに、事情が説明された。別世界から来た者は常識も考え方も知識も違う。そのため、専門の教師が知識の共有をはかるらしい。この世界の常識を伝え、逆に教師は別世界の知識を分けてもらう。
お互いに損をしないと言われ、特別な知識のない一般人ですみませんと心で詫びてしまった。そんな凄い知識は持ってないです。アイカは申し訳ない気分になったが、後ろで変なうめき声がして振り返った。
玄関先でずっと動かず我慢するカーティスの鼻の穴に、ノアールが手を突っ込んでいる。くしゃみを我慢するカーティスがぶるぶると震えていた。
「危ない!」
駆け寄ってノアールを横に放り投げ、鼻の上にいたオレンジを抱きかかえる。飼い主の勢いに驚いたブランがツノから飛び降りた。直後、派手なくしゃみが飛んできて……。
「うへぇ」
「ごめん」
巨大な鹿のくしゃみは大きく、当然ながら我慢した分の鼻水が飛んで来る。べったり全身に浴びたアイカは、ぎりぎり守り抜いたオレンジを床に放した。動くと「ねとぉ」と音がしそうな状況だ。
「ブレンダぁ」
「掃除より先にまず風呂だね」
からりと笑った明るいブレンダの声で、アイカは風呂へ直行となった。汚れた床はブレンダが掃除し、その間にトムソンがカーティスの顔や鼻を拭いてやる。アイカが風呂から出る頃、家はすっかり元通りだった。
「また来るね」
働いた報酬の果物が入った袋をツノに引っ掛け、カーティスは帰っていく。マイペースだが、年齢的にまだ小中学生くらいの印象だった。お小遣い稼ぎをするお子様、そう考えると腹が立たない。ブレンダの誘いで、今日はトムソンも一緒に夕食を食べることになった。
「何を食べようかね」
多くの新鮮食材があるので、サラダや焼き魚が主流。徐々に残り物を煮込んだシチューなどへ変化するみたい。私が助けられたころは買い出しの直前だったんだね。納得しながら、アイカは焼き魚に塩を振った。
「竜帝様のサインって、有名なの?」
正直、ブレンダやトムソンが簡単に区別できるなんて。想像できない。だって、日本でこれが天皇陛下のサインだよ、と見せられても本物か判断できないから。総理の署名だと言われたって、本物を見たことがなければ首を傾げる。名前が読めても、イコール本人が書いたとは限らない。
「ああ、この署名の後ろに小さな粒があるだろ」
「うん」
撫でると何かが貼り付いているのが分かる。
「竜帝様の鱗の一部さ、本物だと言う証明だ」
「はぁ……」
えええ? 思ったより原始的な方法で見分けていた。別の竜がいて鱗の欠片を貼り付けることはないのかな。いろいろ考えてしまったけど、別世界なんだし……詐欺とか心配するのは任せよう。常識とか違い過ぎて分からない。
大量に書類を作るだろう帝が、鱗を使ってたら禿げない? 鱗の残量を心配してしまった。もしかしたら、ゴジラ並みに巨大なんだろうか。
「許可証の他に、何か届いてないかい?」
「いいや、預かったのはこれだけだ」
「後で配達されるのかもしれないね」
ブレンダとトムソンの会話に首を傾げるアイカに、事情が説明された。別世界から来た者は常識も考え方も知識も違う。そのため、専門の教師が知識の共有をはかるらしい。この世界の常識を伝え、逆に教師は別世界の知識を分けてもらう。
お互いに損をしないと言われ、特別な知識のない一般人ですみませんと心で詫びてしまった。そんな凄い知識は持ってないです。アイカは申し訳ない気分になったが、後ろで変なうめき声がして振り返った。
玄関先でずっと動かず我慢するカーティスの鼻の穴に、ノアールが手を突っ込んでいる。くしゃみを我慢するカーティスがぶるぶると震えていた。
「危ない!」
駆け寄ってノアールを横に放り投げ、鼻の上にいたオレンジを抱きかかえる。飼い主の勢いに驚いたブランがツノから飛び降りた。直後、派手なくしゃみが飛んできて……。
「うへぇ」
「ごめん」
巨大な鹿のくしゃみは大きく、当然ながら我慢した分の鼻水が飛んで来る。べったり全身に浴びたアイカは、ぎりぎり守り抜いたオレンジを床に放した。動くと「ねとぉ」と音がしそうな状況だ。
「ブレンダぁ」
「掃除より先にまず風呂だね」
からりと笑った明るいブレンダの声で、アイカは風呂へ直行となった。汚れた床はブレンダが掃除し、その間にトムソンがカーティスの顔や鼻を拭いてやる。アイカが風呂から出る頃、家はすっかり元通りだった。
「また来るね」
働いた報酬の果物が入った袋をツノに引っ掛け、カーティスは帰っていく。マイペースだが、年齢的にまだ小中学生くらいの印象だった。お小遣い稼ぎをするお子様、そう考えると腹が立たない。ブレンダの誘いで、今日はトムソンも一緒に夕食を食べることになった。
「何を食べようかね」
多くの新鮮食材があるので、サラダや焼き魚が主流。徐々に残り物を煮込んだシチューなどへ変化するみたい。私が助けられたころは買い出しの直前だったんだね。納得しながら、アイカは焼き魚に塩を振った。
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