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173.ここは僕が食い止める
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ぽんと移動した先は、お空の上だった。足の下に何もないのに、硬い感じがする。透明の床かな。ベロは上を見てて、下を覗かないけど……怖いの? 僕は平気だよ。でもパパやアガレスが怖いといけないから、ね。握る手に強く力を込めた。
「カリス、抱っこでいいか」
「邪魔じゃない?」
「カリスが邪魔だったことなんてないし、これからもないな。ずっと大切な宝物だ。一緒に過ごす約束をした宝物を、奪われたら嫌なんだ。腕の中にいてくれるか」
パパが空中なのに屈んで聞いた。ずるいなぁ。僕はパパの邪魔をしたくないのに、そう言われたら一緒にいたくなっちゃう。頷いて抱き着いた。手を離しちゃったけど、アガレスは平気? 振り返ると頷いた彼は、牙と爪を見せて笑った。カッコいい。
「神の座まで駆け抜けるとしましょうか」
にやりと笑う黒い狼のアガレスへ、アモンが飛びついた。一緒に戦う約束をしたんだって。仲良しなの、いいことだよ。二人で夫婦になればいいのに。
「夫婦になる予定だぞ」
「そうなの?」
こそこそと僕はパパと内緒話をする。アガレスの大きな耳がぐるんと回ったので、慌てて手で口を覆った。聞こえちゃう。
「楽しそうだね、混ぜてよ」
ひらりと現れたのは、ミカエルだった。いつもと違う。白い大きな翼を広げて、長い剣を持っていた。真っ白な服は布を巻きつけたみたいな形で、ひらひらも付いてた。
「一応正装なんだけど、どう?」
にやりと笑ったミカエルが、いっぱいの羽音に眉を寄せて怖い顔になる。見上げた先にたくさんの天使がいた。怖い顔してる人ばっかりだけど、皆金髪なんだね。銀色に近い髪の天使もいるみたい。
「四大天使の一人、熾天使ミカエルだ。天使達よ、下がれ」
「悪魔と手を組んだ堕天使の言葉など、聞く耳もたぬ! 行け」
ミカエルが強く命令したのに、反論されちゃった。わっと広がる天使と、アモン達が向かい合う。でもいきなりケンカにならないのは、どうして?
「牽制と言ってな、どちらかが先に仕掛けるのを待っているのだ」
「主天使や座天使は簡単だが、智天使が出てくると厄介だ。先に行け、ここは僕が食い止める」
きょとんとした僕は意味が分からない。初めて聞く単語ばかりだし、食い止めるって齧るの? 首を傾げた僕の心が聞くパパが「ぶっ」と吹き出し、ミカエルは目を見開いた。困ったような顔でミカエルは頬を指先で掻いて、上を指差す。
「カッコつかないなぁ。ここは僕が戦うから先に行って待ってて。すぐに追いつくよ」
僕は頷いた。パパやアガレスも同じ。アモン達が僕達を囲む形で集まって、一気に上昇を始めた。心配したけど、ベロは大きくなって走ってる。ちゃんとついて来られるんだ。途中で攻撃してくる天使もいるけど、ミカエルが防いでいた。
「裏切るのですか」
「裏切る気はないさ。神を信じてないだけだ」
「くそっ!」
天使が叫んでミカエルに剣を突き刺す。でも消えちゃうんだ。天使同士の戦いって、不思議だね。武器を持って戦うのに、ミカエルの攻撃は届いて、相手の攻撃はミカエルに刺さらないの。身を乗り出して眺める僕は、どんどん離れていく。
「ミカエル、後でね。頑張れ」
「おう!」
嬉しそうに笑ったミカエルが手を振ってくれた。
「カリス、抱っこでいいか」
「邪魔じゃない?」
「カリスが邪魔だったことなんてないし、これからもないな。ずっと大切な宝物だ。一緒に過ごす約束をした宝物を、奪われたら嫌なんだ。腕の中にいてくれるか」
パパが空中なのに屈んで聞いた。ずるいなぁ。僕はパパの邪魔をしたくないのに、そう言われたら一緒にいたくなっちゃう。頷いて抱き着いた。手を離しちゃったけど、アガレスは平気? 振り返ると頷いた彼は、牙と爪を見せて笑った。カッコいい。
「神の座まで駆け抜けるとしましょうか」
にやりと笑う黒い狼のアガレスへ、アモンが飛びついた。一緒に戦う約束をしたんだって。仲良しなの、いいことだよ。二人で夫婦になればいいのに。
「夫婦になる予定だぞ」
「そうなの?」
こそこそと僕はパパと内緒話をする。アガレスの大きな耳がぐるんと回ったので、慌てて手で口を覆った。聞こえちゃう。
「楽しそうだね、混ぜてよ」
ひらりと現れたのは、ミカエルだった。いつもと違う。白い大きな翼を広げて、長い剣を持っていた。真っ白な服は布を巻きつけたみたいな形で、ひらひらも付いてた。
「一応正装なんだけど、どう?」
にやりと笑ったミカエルが、いっぱいの羽音に眉を寄せて怖い顔になる。見上げた先にたくさんの天使がいた。怖い顔してる人ばっかりだけど、皆金髪なんだね。銀色に近い髪の天使もいるみたい。
「四大天使の一人、熾天使ミカエルだ。天使達よ、下がれ」
「悪魔と手を組んだ堕天使の言葉など、聞く耳もたぬ! 行け」
ミカエルが強く命令したのに、反論されちゃった。わっと広がる天使と、アモン達が向かい合う。でもいきなりケンカにならないのは、どうして?
「牽制と言ってな、どちらかが先に仕掛けるのを待っているのだ」
「主天使や座天使は簡単だが、智天使が出てくると厄介だ。先に行け、ここは僕が食い止める」
きょとんとした僕は意味が分からない。初めて聞く単語ばかりだし、食い止めるって齧るの? 首を傾げた僕の心が聞くパパが「ぶっ」と吹き出し、ミカエルは目を見開いた。困ったような顔でミカエルは頬を指先で掻いて、上を指差す。
「カッコつかないなぁ。ここは僕が戦うから先に行って待ってて。すぐに追いつくよ」
僕は頷いた。パパやアガレスも同じ。アモン達が僕達を囲む形で集まって、一気に上昇を始めた。心配したけど、ベロは大きくなって走ってる。ちゃんとついて来られるんだ。途中で攻撃してくる天使もいるけど、ミカエルが防いでいた。
「裏切るのですか」
「裏切る気はないさ。神を信じてないだけだ」
「くそっ!」
天使が叫んでミカエルに剣を突き刺す。でも消えちゃうんだ。天使同士の戦いって、不思議だね。武器を持って戦うのに、ミカエルの攻撃は届いて、相手の攻撃はミカエルに刺さらないの。身を乗り出して眺める僕は、どんどん離れていく。
「ミカエル、後でね。頑張れ」
「おう!」
嬉しそうに笑ったミカエルが手を振ってくれた。
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