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157.明日は迷子になる予定

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 たくさん遊んで、階段をベロと一緒に登った。高さが違う階段もあって躓いたけど、ベロが僕を支えてパパが後ろから掴んでくれた。

 顔をぶつけるかと思ったの。びっくりしたけど、また登る。危ないから、パパと手を繋ぐことにした。今日はたくさん遊びを覚えたから、後でアガレス達にも教えてあげよう。

「アモンは怒るから話さない方がいい」

「そうなの?」

 こないだも剣を出してたし、もしかしたら天使が嫌いなのかな。話したら優しいし、いい人だけど。前に僕を捕まえた天使は、黒くて悪い天使だった。アモンの知ってる天使が黒いなら、僕だって怖いと思う。

「うん、言わない」

 約束した。地上に出たところでセーレに今日のおやつをもらう。一度お城の外に出て、虹色や青いお魚のいる池で餌をあげた。パパと手を繋いで、今度はお城の階段を登る。ここは絨毯が敷いてあって、歩きやすい。ベロも必死で着いてきた。まだ足が短いから、大変なんだね。

 お仕事の部屋を覗いたら、誰もいなかった。だから寝るお部屋で一緒におやつを食べるの。パパがお茶を用意する間、お皿におやつを並べるのが僕の仕事。ベロ用のおやつも入ってた。ベロのお皿にのせたけど、まだ机の上に置いておくよ。

 食べる時に下ろすからね。説明したら、ベロは大人しくお座りした。賢いベロをたくさん褒めて、撫でる。僕もそうだけど、褒められたら嫌な人はいないと思う。好きって言われたら、皆嬉しいでしょう。だから、言葉にして話すの。

「襲撃が明日になったよ」

 ぽんと机の前に現れたガブリエルが、お菓子をひとつ口に入れる。

「あっ! まだダメだよ、皆お座りしてからにして。ベロだっていい子で待ってるのに」

「……ごめん、犬以下だった」

 イカはよくわからないけど、頷く。ガブリエルは我慢が出来ないの? 僕やベロより大人なのにね。謝ったから許すけど、何度もしたらダメだよ。

「しっかりしてるなぁ。こういうとこ、バエル様に似てる」

「僕、パパに似てる?! いっぱい? このくらい?」

 両手をいっぱいに広げた僕に、ガブリエルは笑いながら頷いた。

「そうだな、その手の指先よりもっとたくさん似てるよ」

「カップは自分で用意しろ」

 戻ってきたパパが溜め息をつく。僕は駆け寄って、パパに抱っこでお膝に座らせてもらった。向かいに座ったガブリエルが、さらりと金色の髪をかき上げる。

「それで? 襲撃が早まったのか」

「うん。ミカエルとウリエルが離脱したから、焦ったんじゃないかな」

「お前はどうする気だ」

 パパがお茶を淹れる。僕のカップとパパのカップ、それからガブリエルが出したカップにも。大きさが違うから、ガブリエルのはいっぱい入る。ずるい。

「僕? 一応天使を率いるけど、迷子になる予定」

「迷子になっちゃうの?」

 僕が道を教えてあげたら、迷子にならない? 首を傾げて尋ねると、笑いながらガブリエルが「迷子になりたいんだ」と言った。迷子は心細いのに、ガブリエルは平気みたい。

 パパが変な顔をしてるから、慌ててお菓子で口を塞いだ。いけない、大人のお話を邪魔しちゃった。するんとパパのお膝から滑り降りて、ベロにおやつの干し肉が入ったお皿を渡す。そこで両方の耳を手で蓋した。僕は大人のお話は聞いてないからね。
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