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第二十一章 寿命という概念

第98話 許されるならずっと

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 これが答えだ。世界を滅ぼす魔性でも、翼ある一族の末裔だろうと、ジルはジルだった。何も本質は変わらない。彼の能力や顔を好きになったわけじゃない。

 ジルがルリアージェをそのまま受け入れるように、自分も受け入れればいいだけ。何も特別なことじゃなかった。

 頬に手を滑らせて、ジルの胸に飛び込んだ。反射的に受け止めた彼の腕が背に回る。抱きしめられる状態で、自然と表情が和らいだ。

「ジルは一緒にいてくれるんだろう?」

「もちろんだ」

 即答した声に迷いがないのが、本当に嬉しくて幸せで頬が緩んだ。だらしない顔をしている自覚があるから、ジルの胸元から顔をあげられない。

「よかったわ」

 ライラがほっとした声で呟く。もし彼女がジルを拒否したら、一時的に預かるつもりでいた。気持ちが落ち着けば、またジルへの恋心で丸く収まるだろうと。長い寿命があるからこそ、彼や彼女は時間経過が心にとって最高の薬だと知っている。どんなに憎んだ相手でも、数十年も経てば許せることを経験で理解していた。

「ライラ、パウリーネ、リシュア、リオネル」

 安堵の表情を浮かべる魔性達を呼んで、ルリアージェはやっと顔をあげる。真っ赤な耳や首筋、頬が照れている事実を雄弁に告げていた。しかし誰も指摘せず、次の言葉を待つ。

「私が歳を取らない不老長寿ならば、今後も迷惑をかけるがよろしく頼む」

「「「はい」」」

「もちろんよ」

 真っ直ぐ目を見て言い切ったルリアージェは、肩から力を抜いて振り返る。抱きついた男の顔を覗き込み、自分だけを写す紫の瞳に微笑みを向けた。

「ジル、責任を取ってもらうぞ。最後まで隣にいろ。誰より近い位置で、ずっと……」

「最高の褒美だよ、リア。絶対に離れない」

 言い切ったジルが額に、頬に口付ける。反射的に目を閉じた瞼に触れて、最後に唇を重ねた。

「ふ……ぅ、んっ……」

 長いキスを終えたルリアージェに「可愛い」と囁いたジルが、彼女の顔を見せないよう抱きしめて隠す。目をそらしていた3人と、パウリーネに目元を手で覆われて暴れるライラに苦笑した。

 気が利く配下に「もういいぞ」と声をかけると、腕の中でルリアージェがもがいた。

「キ、キスするなんて」

「やだ、せっかく知らないふりするつもりだったのに」

 くすくす笑うライラに指摘され、ルリアージェは真っ赤になって崩れ落ちた。両手で顔を覆って膝から崩れた彼女を、ジルがひょいっと抱き上げる。お姫様抱っこ状態に、さらに恥ずかしくて顔を出せなくなった。

「少し休むといいよ」

 優しく声をかけられ、頷くしかなかった。
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