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第二十章 愛し愛される資格
第84話 応える覚悟(3)
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本当に綺麗な顔をしているのだと、改めて認識した。いままで他人を顔で区別しなかったルリアージェにとって、見惚れるなど滅多にない状況だ。ごくりと喉を鳴らし、必死に伝える。
「嫌じゃない、が……まだ」
「心配しなくても待つから。無理をしないでいい」
ジルの手は、顔に掛かった銀髪を優しく掃う。少しだけ何かを堪えるように目を細めて、ルリアージェに囁いた。
「ねえ、リア。頬にキスは許してくれる?」
親愛の情として友人同士や親子でも交わされる挨拶だ。しかしルリアージェはそこまで親しく振る舞う友人がいなかったため、困惑してしまう。それでも大人しく待っているジルの姿に、応えたいと思った。
無理やりキスできるくせに、まるで飼い主の許可を待つ犬のように待っている。自分の意思を尊重してくれる男に微笑んで頷いた。
「構わない」
「本当に可愛い、愛してる」
囁いた甘い声に背筋がぞくりと震える。音を立てる軽いキスだけで離れたジルがベッドに座り、まだ横たわったルリアージェに手を伸ばした。背の翼に触れると、ジルが首をかしげる。触られることに嫌悪感はないが、今まで他人に見せなかった翼に他者が触れる感覚に慣れなかった。
「……綺麗な翼だ」
ふと脳裏に浮かんだのは、ジルの生い立ちだった。あれだけ壮絶な過去を持ち、それでも他者を拒まずに受け入れる。自分に出来るだろうか……同じ状況で育ち、同じように差別され、排除され続けた世界を滅ぼせる力を手にしたら揮わずにいられない。
「お前は、強いな」
零れた言葉で気づいた。
愛情を向けられて拒む必要はない。この場で必要なのは、彼に応える覚悟だけだ。その愛情が恋愛や家族愛、友情のどれに分類されるとしても、拒む理由にはならない。
「……私もお前のことは好きだ。まだどんな愛情かわからないが」
「それでも! それでも嬉しい」
本当に心の底から嬉しそうに笑うジルは、手を取ったルリアージェを抱き起した。そこでジルがちらりと隣室を窺うそぶりを見せ、ルリアージェも思い出す。
隣の大広間に魔性達を4人も放置していた。きっと彼らはやきもきしているだろう。何もなかったが、気恥ずかしくて顔が自然と赤くなった。
「ねえ……そろそろ、あたくしも混じっていい?」
くすくす笑いながら間のドアに寄り掛かるライラ。部屋の中にいるはずの3人にも知られたとルリアージェがベッドに飛び込んだ。シーツを頭まで被って隠れてしまった美女に、ジルが肩を竦める。
「少し……したら行くから」
小さく聞こえた声に「わかった」と返事をして、ジルは部屋に入ろうとするライラの三つ編みを掴んでドアを閉めた。
「ちょっと!」
「邪魔するなっての」
言い合う声がドアの向こうに消えても、ルリアージェは赤く火照った顔が鎮まるまでシーツから出られなかった。
「嫌じゃない、が……まだ」
「心配しなくても待つから。無理をしないでいい」
ジルの手は、顔に掛かった銀髪を優しく掃う。少しだけ何かを堪えるように目を細めて、ルリアージェに囁いた。
「ねえ、リア。頬にキスは許してくれる?」
親愛の情として友人同士や親子でも交わされる挨拶だ。しかしルリアージェはそこまで親しく振る舞う友人がいなかったため、困惑してしまう。それでも大人しく待っているジルの姿に、応えたいと思った。
無理やりキスできるくせに、まるで飼い主の許可を待つ犬のように待っている。自分の意思を尊重してくれる男に微笑んで頷いた。
「構わない」
「本当に可愛い、愛してる」
囁いた甘い声に背筋がぞくりと震える。音を立てる軽いキスだけで離れたジルがベッドに座り、まだ横たわったルリアージェに手を伸ばした。背の翼に触れると、ジルが首をかしげる。触られることに嫌悪感はないが、今まで他人に見せなかった翼に他者が触れる感覚に慣れなかった。
「……綺麗な翼だ」
ふと脳裏に浮かんだのは、ジルの生い立ちだった。あれだけ壮絶な過去を持ち、それでも他者を拒まずに受け入れる。自分に出来るだろうか……同じ状況で育ち、同じように差別され、排除され続けた世界を滅ぼせる力を手にしたら揮わずにいられない。
「お前は、強いな」
零れた言葉で気づいた。
愛情を向けられて拒む必要はない。この場で必要なのは、彼に応える覚悟だけだ。その愛情が恋愛や家族愛、友情のどれに分類されるとしても、拒む理由にはならない。
「……私もお前のことは好きだ。まだどんな愛情かわからないが」
「それでも! それでも嬉しい」
本当に心の底から嬉しそうに笑うジルは、手を取ったルリアージェを抱き起した。そこでジルがちらりと隣室を窺うそぶりを見せ、ルリアージェも思い出す。
隣の大広間に魔性達を4人も放置していた。きっと彼らはやきもきしているだろう。何もなかったが、気恥ずかしくて顔が自然と赤くなった。
「ねえ……そろそろ、あたくしも混じっていい?」
くすくす笑いながら間のドアに寄り掛かるライラ。部屋の中にいるはずの3人にも知られたとルリアージェがベッドに飛び込んだ。シーツを頭まで被って隠れてしまった美女に、ジルが肩を竦める。
「少し……したら行くから」
小さく聞こえた声に「わかった」と返事をして、ジルは部屋に入ろうとするライラの三つ編みを掴んでドアを閉めた。
「ちょっと!」
「邪魔するなっての」
言い合う声がドアの向こうに消えても、ルリアージェは赤く火照った顔が鎮まるまでシーツから出られなかった。
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