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第十五章 茶番劇は得意ですか
第54話 この国をどうする気だ?(3)
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「いわゆる無血開城ですね。サークレラの兵も、リュジアンの国民も傷ついておりません」
リシュアが穏やかに付け加えた情報に、心底ほっとしてソファに身を沈めた。キスを奪ったジルは機嫌よく笑っているし、リシュアやリオネルも穏やかな表情だ。水晶を放り出したパウリーネが差し出した氷菓子を口にしながら、抱きついてきたライラにも分けてやる。
平和な情景にルリアージェは頬を緩めた。
彼女は知らなくていい。外で起きたリュジアン王族追放の流れと国民達の残虐な行為も、赤く染まった南門のことも、勢力バランスが崩れた他国の焦りも……すべて彼女に知らせる必要はなかった。
「ねえ、リア。リュジアンは寒いし、次はもっと暖かい国へ遊びに行きましょうよ」
ライラが無邪気さを装って提案する。リュジアン占領の流れは、隣国のツガシエから干渉を招くだろう。この国に留まれば、ルリアージェが巻き込まれてしまう。彼女の懸念に、リオネルが同意した。
「そうですね。南ならタイカなどいかがです?」
ルリアージェが手配されていない海に面した南国の名を出す。サークレラと国境を接したタイカ国は、貿易に絡んだ協定を結んでいるため、サークレラの公爵家ならば容易に出入りできた。さらに言うなら、シグラ国と仲が悪い。
シグラ、ウガリスはテラレス国に封印された『大災厄』の秘密を知るルリアージェを指名手配した。そのシグラ国を国境争いをするタイカならば、ルリアージェの安全が保障される。もっとも公爵夫人を名乗るルリアージェを、指名手配された魔術師と重ねて考える者はいないだろう。
リュジアンの凍った大地と埋蔵資源を手にしたサークレラは、8か国となった大陸の中で最大規模の国となった。領土の大きさは、ツガシエやアスターレンを抜いている。元から他国の干渉を撥ね退ける強さを持つ国家が、本格的にリュジアン支配を強めれば、周辺諸国にとって脅威だ。
そんなサークレラの筆頭公爵家の夫人となれば、テラレスやシグラ、ウガリスが連合を組んでも太刀打ちできない。テラレスの宮廷魔術師だったと騒いでも、他国は一切協力しない。サークレラを敵に回す危険性を考えるなら、国力が衰退したテラレス国に恩を売っても無駄だった。
「テラレス側とタイカ側では海の色が違いますもの。私はタイカの海の色が好きですわ、リア様の瞳の色に近い気がします」
パウリーネの後押しがルリアージェの背を押す。
「そうだな。久しぶりに海が見たい」
とんでもない実力者達を従える女主人の一言で、タイカへの入国が決まった。
リシュアが穏やかに付け加えた情報に、心底ほっとしてソファに身を沈めた。キスを奪ったジルは機嫌よく笑っているし、リシュアやリオネルも穏やかな表情だ。水晶を放り出したパウリーネが差し出した氷菓子を口にしながら、抱きついてきたライラにも分けてやる。
平和な情景にルリアージェは頬を緩めた。
彼女は知らなくていい。外で起きたリュジアン王族追放の流れと国民達の残虐な行為も、赤く染まった南門のことも、勢力バランスが崩れた他国の焦りも……すべて彼女に知らせる必要はなかった。
「ねえ、リア。リュジアンは寒いし、次はもっと暖かい国へ遊びに行きましょうよ」
ライラが無邪気さを装って提案する。リュジアン占領の流れは、隣国のツガシエから干渉を招くだろう。この国に留まれば、ルリアージェが巻き込まれてしまう。彼女の懸念に、リオネルが同意した。
「そうですね。南ならタイカなどいかがです?」
ルリアージェが手配されていない海に面した南国の名を出す。サークレラと国境を接したタイカ国は、貿易に絡んだ協定を結んでいるため、サークレラの公爵家ならば容易に出入りできた。さらに言うなら、シグラ国と仲が悪い。
シグラ、ウガリスはテラレス国に封印された『大災厄』の秘密を知るルリアージェを指名手配した。そのシグラ国を国境争いをするタイカならば、ルリアージェの安全が保障される。もっとも公爵夫人を名乗るルリアージェを、指名手配された魔術師と重ねて考える者はいないだろう。
リュジアンの凍った大地と埋蔵資源を手にしたサークレラは、8か国となった大陸の中で最大規模の国となった。領土の大きさは、ツガシエやアスターレンを抜いている。元から他国の干渉を撥ね退ける強さを持つ国家が、本格的にリュジアン支配を強めれば、周辺諸国にとって脅威だ。
そんなサークレラの筆頭公爵家の夫人となれば、テラレスやシグラ、ウガリスが連合を組んでも太刀打ちできない。テラレスの宮廷魔術師だったと騒いでも、他国は一切協力しない。サークレラを敵に回す危険性を考えるなら、国力が衰退したテラレス国に恩を売っても無駄だった。
「テラレス側とタイカ側では海の色が違いますもの。私はタイカの海の色が好きですわ、リア様の瞳の色に近い気がします」
パウリーネの後押しがルリアージェの背を押す。
「そうだな。久しぶりに海が見たい」
とんでもない実力者達を従える女主人の一言で、タイカへの入国が決まった。
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