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第十五章 茶番劇は得意ですか

第52話 罪に見合う罰を(2)

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 言い切ったジルは敬語も使わない。鼻で笑われた王女が屈辱に身を震わせた。憧れが大きかっただけに、手ひどく振られた痛みが彼女を怒らせた。

「お父様! あの無礼な者らを処分してくださいませ」

「本当に、無礼を通り越して非礼だわ。どんな躾をしたのかしら、そこの雌犬に」

 くすくすと笑ったライラは、普段の口調に戻っている。格下を嘲笑うライラがルリアージェと手を繋いだ。ライラの結界がルリアージェをも包む。決められたとおり、ルリアージェの安全は確保された。

「ようやく笑ってもいいのかしら」

 ハンカチで上手に隠していたパウリーネが声を立てて笑い、後ろに控えるリオネルがジルの隣に並んだ。嘲笑する彼の整った口元が、何かを囁く。

「……公爵家の全員を捕らえよ!」

「はっ」

 従う騎士達が駆け寄るが、抜いた剣を振り下ろすことは出来なかった。彼らの剣は抜いたそばから赤く染まり溶けていく。指先ひとつで熱を操ったリオネルの青白い炎の仕業だった。

「やりすぎだ、リオネル。オレの出番がなくなる」

「申し訳ございません、ジル様」

 優雅に一礼したリオネルの視界の端で、リシュアが魅了の瞳を解放する。王族以外のすべての貴族を支配したリシュアは、忍び笑いながら孤立した王を指さした。

「あの愚か者を王座より引き摺り下ろしなさい」

 剣を捧げた騎士によって連れ出された国王は、床に這い蹲る形で押さえつけられた。王冠は転げ落ち、抵抗した彼の顔や腕には痣が出来ている。

「なぜだ! おれは王だぞ!」

「国を滅ぼす決断をしておいて、何を愚かなことを……賢王だと聞いていたのですが、とんだ愚王でしたね」

 国を治める立場にいたリシュアの言葉は鋭く、国王のプライドを切り裂いた。貴族も騎士も逆らう中、逃げ出そうとした王女が捕らえられる。

「……ジル、何をする気だ?」

 先に企んだのがリュジアン側で、ジルは受けて立っただけ。それは理解している。気がかりは、騒動を必要以上に大きくした彼らの思惑だった。この国を支配しても、何もメリットなどない気がする。

「ん? オレ達にケンカ売ったんだ。まず国は自治領として吸収する。リアに危害を加えようとした罰で国王と王女は死刑、その他の王族は追放か」

 襲ってきた男を見逃したジルは、一度容赦してやったと思っている。そのため二度目は確実に叩き潰そうと考えていた。もちろん、側近やライラが止めることはない。危害を加えようとした対象が悪かった。
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