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第十四章 リュジアン

第45話 そうだ、王宮へ行こう(1)

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 サークレラ新国王に連なる血筋の公爵家が、外遊に来るという。リュジアンと国境を接していても、彼の国から上位貴族が雪祭りに訪れることはなかった。かつてない状況に、驚いたリュジアンの王宮は混乱する。

 攻め込む口実を作りに来るのか、友好関係の一環として訪れるのか。彼らの意図がまったくつかめないのだ。伯爵家程度ならば外遊も考えられるが、公爵家の当主、奥方、令嬢、弟夫妻となれば、通常の外交とは思えない。国王から何らかの指示を受けていると考えるのが当然だった。

「彼らの意図がわからぬうちは、手出しを禁じる。すべて自由にさせよ」

 初老にさしかかったリュジアン国王の命令に、すべての貴族、騎士は首を垂れて同意を示した。




「リュジアン国王は賢王として有名です。彼は凍りついた大地に埋まった油を発見し、それが国を富ませています。鉱山はいくつかありますが、水晶は大きなものが産出されますね」

 リシュアの説明にルリアージェが思い浮かべたのは、魔術の媒体としてよく使用した水晶だった。六角柱状で、先端が尖ったものだ。透明度が高い水晶は、魔力を増幅する効果があった。

「昔使ったが、リュジアンの水晶は質がいい」

「ええ、産業の中心になっていましたから、国外へ流れる水晶は上質なものが多かったでしょうね。クズ石に近い濁ったものや、色が強いものは装飾品として加工されます。こちらも輸出されていました」

「今は装飾品は輸出しないの?」

 過去形で語られた装飾品の話に、ライラが口を挟んだ。馬車ががたんと揺れる。どこからかリオネルが調達してきた馬車は品の良い黒檀仕様だ。6頭の大きな馬に引かせているが、数箇所に魔法陣が装飾され、温度や揺れを自動的に調整する優れものだった。

 本来なら魔法陣の動力として魔力を込めた水晶や封印石を使うのだが、この馬車にそれは装備されていない。魔力なら溢れんばかりに余っていた。ジル一人が乗っているだけで十分足りる。

「産出量が激減しまして、国王の指示で別の山を掘ったところ……黒い油が大量に出ました。燃料として使用するため、ここ数十年はそちらが産業の中心です」

 暖かな海側のテラレスには関係ないが、この中央から北側の国は冬に凍りつく寒さに襲われる。そのため暖房に使う燃料は需要が高かった。隣国のツガシエは、暖房燃料のほとんどをリュジアンの黒い油に頼っている。
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