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第十一章 迷惑な客
第28話 迷惑すぎる来客(9)
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ジルとライラが傲慢なほど強気な返事を寄越す。そこに滲んだ自信と誇りは、人には持ち得ない高いものだった。目の前で立ち尽くす魔王を忘れたようにジルは笑顔で振り返ったままだし、ライラも彼にちらりとも視線を向けない。
主の姿に何を思ったか、リシュアとリオネルも従っていた。つまり、水の魔王を完全無視だ。
「我が君のお手を煩わせるまでもなく、私が処理いたします」
「ジル様も久しぶりに力を揮いたいのでしょう。お邪魔にならない程度に参加させていただきます」
忠義のリシュアに対し、敵を馬鹿にした態度を表に出す好戦的なリオネル。無視されて立ち尽くす魔王。だんだんと険悪になる状況に耐えられず、ルリアージェは大きく息を吐いた。
「ならば命じる。水の魔王とその配下をこの国から排除せよ。ただし、これ以上サークレラの国や国民を傷つけることは許さない」
「承知した」
ジルがそっと右手の甲に唇を寄せる。その後ろでリシュアとリオネルが膝をついて一礼した。左手を握ったライラが無邪気に提案する。
「リアは国民の救助をするのでしょう? あたくしはリアのお手伝いをさせていただくわ」
「え、ずるい」
すぐに反応したジルの尖った唇のせいで、緊張した空気が霧散する。黙って見ているトルカーネの目は大きく見開かれていた。水色の瞳に映る光景は、到底信じられないものだ。
あの死神ジフィールが人間に膝をつくなど――1000年前に戦った他の魔王の誰に言っても信じない。トルカーネも他人から話を聞いたなら、一笑に付しただろう。膝をつく存在が神族や魔族であったとしても、到底信じられる状況ではなかった。
「……君が、人族に従うの? なぜ…」
誰の命令も聞かない、指示を受けない、好き勝手に生きる存在だと思っていた。沢山の配下を従えることを面倒がるくせに、他者を惹きつけてやまない。圧倒的な強さと、非常識な能力をもつ男だった。封じたときでさえ、彼は最後に手を抜いたのだ。
魔王3人を相手取って手加減する余裕をもつジルが身を起こし、黒衣の裾をゆったり捌いて向き直った。楽しそうに口角を持ち上げる表情は、かつての彼と同じだ。
「ライラ、命に代えてもリアを守れ」
「あたくしは貴方の部下ではなくてよ! でも毛筋ほども傷つけさせる気はないわ」
幼さの残る少女は誇らしげに言い返すと、銀髪の美女を守るように前に立った。背後でリアと呼ばれた美女が祈りの形に手を組む。赤く色づいた唇から、柔らかな声が詠唱を始める。同時に彼女の足元に大きな魔法陣が現れた。
主の姿に何を思ったか、リシュアとリオネルも従っていた。つまり、水の魔王を完全無視だ。
「我が君のお手を煩わせるまでもなく、私が処理いたします」
「ジル様も久しぶりに力を揮いたいのでしょう。お邪魔にならない程度に参加させていただきます」
忠義のリシュアに対し、敵を馬鹿にした態度を表に出す好戦的なリオネル。無視されて立ち尽くす魔王。だんだんと険悪になる状況に耐えられず、ルリアージェは大きく息を吐いた。
「ならば命じる。水の魔王とその配下をこの国から排除せよ。ただし、これ以上サークレラの国や国民を傷つけることは許さない」
「承知した」
ジルがそっと右手の甲に唇を寄せる。その後ろでリシュアとリオネルが膝をついて一礼した。左手を握ったライラが無邪気に提案する。
「リアは国民の救助をするのでしょう? あたくしはリアのお手伝いをさせていただくわ」
「え、ずるい」
すぐに反応したジルの尖った唇のせいで、緊張した空気が霧散する。黙って見ているトルカーネの目は大きく見開かれていた。水色の瞳に映る光景は、到底信じられないものだ。
あの死神ジフィールが人間に膝をつくなど――1000年前に戦った他の魔王の誰に言っても信じない。トルカーネも他人から話を聞いたなら、一笑に付しただろう。膝をつく存在が神族や魔族であったとしても、到底信じられる状況ではなかった。
「……君が、人族に従うの? なぜ…」
誰の命令も聞かない、指示を受けない、好き勝手に生きる存在だと思っていた。沢山の配下を従えることを面倒がるくせに、他者を惹きつけてやまない。圧倒的な強さと、非常識な能力をもつ男だった。封じたときでさえ、彼は最後に手を抜いたのだ。
魔王3人を相手取って手加減する余裕をもつジルが身を起こし、黒衣の裾をゆったり捌いて向き直った。楽しそうに口角を持ち上げる表情は、かつての彼と同じだ。
「ライラ、命に代えてもリアを守れ」
「あたくしは貴方の部下ではなくてよ! でも毛筋ほども傷つけさせる気はないわ」
幼さの残る少女は誇らしげに言い返すと、銀髪の美女を守るように前に立った。背後でリアと呼ばれた美女が祈りの形に手を組む。赤く色づいた唇から、柔らかな声が詠唱を始める。同時に彼女の足元に大きな魔法陣が現れた。
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