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第五章 復活
第16話 復活(2)
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「まあ、アスターレンは後回しだ」
順序からいって一番最後だ。断言して、右耳のピアスを無造作に引っ張った。耳が切れるが、すぐに彼自身の血が傷を塞ぐ。
「これだけ力が戻れば、足りるな」
己を囲うように水の膜を張り、濡れた服や髪の水分を風の力で飛ばした。雨を防ぐ水の膜の中、赤いピアスを手のひらに乗せたジルが炎を呼び出す。
すぐに色を変えて白く燃える炎の核となったピアスの石にヒビが入った。
≪我は命ず、かつての右腕の解放を…白炎の化身たる者よ≫
魔術陣が展開する。放出された魔力を相殺する霊力が付き纏い、炎は青く揺れた。黒髪がふわりと風に舞い、黒衣の裾がはためく。手の中のピアスはついに形を失い、灰が風に煽られて散った。
残った炎が大きくなり、ジルの手を離れてさらに広がる。炎はさらに温度を増して大きく火の粉を散らし、最後に弾けた。炎があった場所に膝をつく青年が顔を上げる。
「久しぶりだな、リオネル」
「我が主に忠誠を」
黒衣の裾に接吻けて首を垂れる青年に、ジルは立つよう促した。優雅な仕草で身を起こした青年は、鮮やかな紅瞳を柔らかく細める。人当たりの良さそうな彼は褐色の肌をしていた。縁取るように金髪が首筋まで届く。
よく似た顔立ちだが、きつい印象を与えるジルに対し、リオネルは穏やかな雰囲気を纏っていた。物腰も柔らかく、ゆったりしている。静と動、まさしく両極端の2人だった。
「1000年振りですね。いつ解放されたのですか?」
「数ヶ月前だ」
淡々と応じるジルが空間を裂いた。大切そうにルリアージェを抱き寄せ、その額に接吻ける。今まで見せたことがない主の様子に驚いたリオネルが、銀髪の眠り姫に視線を注いだ。
「……こちらの方は?」
丁寧な話し方が標準らしく、驚いてもリオネルの言葉遣いは崩れなかった。
「オレの主になった、封印を解いた人間だ」
赤い瞳が限界まで見開かれ、リオネルは一歩距離を詰める。視線の先にいる女性は細身で、薄桃色のドレスを身に纏ったただの貴族令嬢に見えた。人にしては魔力量が多く澄んでいるが、それだけだ。
銀の髪、瞳の色はわからないが……人にしては整った外見ながら、上級魔性にはわずか劣る。上級魔性はその有り余る魔力で己の外見を整えるため、総じて美形が多かった。人でありながら、上級魔性に近い外見はかなり美形に分類されるだろう。
だが……アティン帝国を滅亡させ、世界を滅ぼしかけた大災厄を閉じ込めた『鎖の封印』を解くほどの実力は感じられない。
順序からいって一番最後だ。断言して、右耳のピアスを無造作に引っ張った。耳が切れるが、すぐに彼自身の血が傷を塞ぐ。
「これだけ力が戻れば、足りるな」
己を囲うように水の膜を張り、濡れた服や髪の水分を風の力で飛ばした。雨を防ぐ水の膜の中、赤いピアスを手のひらに乗せたジルが炎を呼び出す。
すぐに色を変えて白く燃える炎の核となったピアスの石にヒビが入った。
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魔術陣が展開する。放出された魔力を相殺する霊力が付き纏い、炎は青く揺れた。黒髪がふわりと風に舞い、黒衣の裾がはためく。手の中のピアスはついに形を失い、灰が風に煽られて散った。
残った炎が大きくなり、ジルの手を離れてさらに広がる。炎はさらに温度を増して大きく火の粉を散らし、最後に弾けた。炎があった場所に膝をつく青年が顔を上げる。
「久しぶりだな、リオネル」
「我が主に忠誠を」
黒衣の裾に接吻けて首を垂れる青年に、ジルは立つよう促した。優雅な仕草で身を起こした青年は、鮮やかな紅瞳を柔らかく細める。人当たりの良さそうな彼は褐色の肌をしていた。縁取るように金髪が首筋まで届く。
よく似た顔立ちだが、きつい印象を与えるジルに対し、リオネルは穏やかな雰囲気を纏っていた。物腰も柔らかく、ゆったりしている。静と動、まさしく両極端の2人だった。
「1000年振りですね。いつ解放されたのですか?」
「数ヶ月前だ」
淡々と応じるジルが空間を裂いた。大切そうにルリアージェを抱き寄せ、その額に接吻ける。今まで見せたことがない主の様子に驚いたリオネルが、銀髪の眠り姫に視線を注いだ。
「……こちらの方は?」
丁寧な話し方が標準らしく、驚いてもリオネルの言葉遣いは崩れなかった。
「オレの主になった、封印を解いた人間だ」
赤い瞳が限界まで見開かれ、リオネルは一歩距離を詰める。視線の先にいる女性は細身で、薄桃色のドレスを身に纏ったただの貴族令嬢に見えた。人にしては魔力量が多く澄んでいるが、それだけだ。
銀の髪、瞳の色はわからないが……人にしては整った外見ながら、上級魔性にはわずか劣る。上級魔性はその有り余る魔力で己の外見を整えるため、総じて美形が多かった。人でありながら、上級魔性に近い外見はかなり美形に分類されるだろう。
だが……アティン帝国を滅亡させ、世界を滅ぼしかけた大災厄を閉じ込めた『鎖の封印』を解くほどの実力は感じられない。
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