上 下
10 / 92
第1章 追っても逃げない獲物

10 ※

しおりを挟む
※性行為があります。
***************************************









「……ん……っ……ぁ……」 

 柔らかいベッドのシーツにシリルの身体を倒し、上から覆いかぶさって押さえつける。

「オレって面食いだったかなぁ」

 くすくす笑いながら唇を啄ばむライアンに、潤み始めた瞳で見上げる青年が口を開いた。

「だったら、感謝しなくてはな。お前の面食いの趣味にも、この顔にも」

 声にすると嬌声にかき消される言葉は、震える唇ごしに伝えられる。読み取ったライアンは、減らず口を叩く魅惑的な唇を塞いだ。ブラウスをはだけて胸に指を滑らせ、胸の飾りを軽く押しつぶすようにして愛撫する。

「シリルは負けず嫌いなんだ」

 濡れた唇から零れる嬌声と、ギリギリ感じ取れる程度の吐息を飲み込み、与え、奪い尽くす。知ったばかりのシリルの一面を愛おしむように囁き、耳を唇で食んだ。

「……は、ぁ……う……んっ」

 ブラウスもスラックスも下着も、すべて身に着けたものを剥ぎ取る。恥ずかしそうに顔を背けたシリルの肢体を眺め、徐に自分もすべてを脱ぎ去った。白い素肌に体を重ね、不思議と馴染む肌の感触に目を細める。



 小柄な身体を抱き寄せ、中に押し入る。

「……ぅ……あぁ―――っ、あン……んッ……」

 声に苦痛はなく、悦に潤んだ瞳が零れそうなほど見開かれた。血の余韻か。まだ快楽の内を漂うシリルの意識と身体は、ライアンを従順に受け入れた。

 ゆっくりと奥を突くように動き出したライアンに合わせて、体が自然と揺れる。まるで強請っているように足がライアンの背に絡みつき、指を意味ありげに舐める仕草に意識が揺らいだ。

 感じすぎて……怖くなる。

「あぁ……あ――んっ、うぅ……ぁ」

 奥へ奥へと誘うように動くシリルの中を振り切るように動いていたライアンが、息を呑んで動きを止めた。

「――くっ」

「やぁ―――ッ!」

 ひときわ高い嬌声を上げたシリルが、ぐったりとベッドに沈む。同時に果てたシリル自身から白濁の液が飛び、ライアンも奥へ熱を放っていた。

 注ぎ込まれた精を最奥で受け止めたシリルが、自分の乾いた唇を舐める。誘われるように肌を合わせたライアンが接吻け、深く舌を絡めあうキスが湿った音を立てた。

「……血の味がする」

 くすっと笑ったライアンの首に、恐る恐る腕を回したシリルは同じように笑みを零した。今までより読み取りやすい表情は、シリルの感情の氷が溶け始めた証拠だろうか。

「……あ、たり……前だ」

 まだ呼吸を整えきれないシリルの紅い唇をぺろりと舐めたライアンが、嬉しそうに目を細めた。

「ずっと、こうしていような」

 つぅっとこめかみを伝う涙に気づいたシリルが、そっと自分の涙を指で掬う。驚いたように見つめる姿は、泣いている自分が理解できずにいるようだった。

「嬉しくても泣けるらしいぜ。よかったじゃん!」

 長く生きているのは自分の方で、きっと知識も多い筈なのに――感情に関することでは、いつもライアンが上手らしい。負けず嫌いの気質より、擽ったい気持ちが全身を支配して、シリルは淡く微笑んで頷いた。

    死にたくなるまで一緒に生きていこう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...