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114.辺境は有能と無能が混在する

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 辺境に分類される国境付近は、大きく二つに分けられる。非常に重要な地域と、放置しても実害のない地域だ。重要な意味を持つ拠点である国境ならば、そこを守る領主は有能な者が選ばれた。しかし実害はない土地を与える領主は、中枢にいて欲しくない貴族を任命する。

 国の決め事に首を突っ込ませず、物理的に遠い場所へ左遷した形だった。それでも辺境伯などの肩書きを与えることが出来るため、見た目は軽んじているように見えない。相手からの苦情を抑え込むにも最適だった。

「で、どっち?」

「間違いなく後者です」

 戻ったベリアルは、ラスカートン伯爵が帰るまで同席した。先に戻ったエリュをリンカに預け、シェンは諜報に長けた種族を駆使して情報を集める。その突き合わせの段階だった。ベリアルは「左遷した方」と言い切ったが、シェンの調査結果でも同じような結論が出ている。

 先代が即位したどさくさに紛れ、他国の勢力を利用して己の権力を高めようとした。証拠がなく、適当な理由をつけて辺境へ追いやった過去がある。中央に返り咲く方法として、新たな皇族となる彼らを利用するつもりだろう。自分達が発見して保護したなどの理由をつけて。

「うん、先に公表するから。結婚式と同時に行う。僕が手を打つから、これだけ手配して」

 公爵家は事実上、シェンの手駒に近い。彼らを動かし、結婚を早めることにした。合同で行うことで、これがシェンの声掛りだと広める。ラスカートン伯爵が動く前に、こちらが先手を打てばいい。

「シェン、一緒にお風呂入ろう」

 ノックせずに入ってきたエリュに、シェンは椅子から飛び降りてベリアルに手を振った。

「後は任せるね。行こう、エリュ」

「うん。またね、ベル」

「はい。おやすみなさい」

 ベリアルは笑顔で見送り、扉が閉まると同時に書類の上に突っ伏した。シェンは自覚がないのだろう。魔力が漏れて威圧される。自分へ向けられた意思でないと知っていても、本能的な恐怖を感じた。その点、皇帝エウリュアレは強い。魔力をほぼ持たない彼女は、相手の魔力に威圧されることがないのだから。

「久しぶりの策略、腕が鳴ります。負けられませんね」

 主君として定めたエリュを守るため、ベリアルは気持ちを切り替えて動き出した。すでに皇族の面々はバレている。一日でも早く動くのが、勝利の秘訣だった。

「公爵家への連絡と、彼女達にも口止めと指示が必要ですね。後は護衛を増やし、警備の強化。リリンにも手伝ってもらいましょう」

 文官だけでは手が回らない。リリンと相談すべく、ベリアルは足早に廊下を移動した。この状況で初めて、青宮殿に住んでいてよかったと思う。

 人々が寝静まる深夜になっても、青宮殿の一角は明るかった。
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