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99.裏事情はドロドロではなく甘々でした
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街で楽しむ5日間は終わり、祭りの最終日は貴族達との夜会に参加する。去年までは昼間のお披露目だけだが、今年は少し冒険した形だ。リンカやナイジェルなど、他国からの留学生を宮殿で受け入れたことも影響していた。外交するなら、貴族との挨拶も出来るだろう、と。
彼らの言い分は理解できる。一部の不届きな連中を除けば、単に先代皇帝夫妻の特徴を備えた愛らしい幼女にご挨拶したいのだ。難しい言い回しを多用されたので問題のように見えるが、新しい皇帝になったエウリュアレに顔を覚えてもらい、今後の治世を支える約束をしたいだけ。
「意外だな」
「もっとドロドロした裏事情かと」
構えてしまった。着替えを終えたナイジェルとリンカが、驚いたと声を上げる。リビングでベリアルに大まかな事情を聞いていたのだが、それもすべて友人達の援護に回るためだった。こういう部分は人族の王宮事情が血腥いせいだろう。妖精族は血筋を重視するので、正当性が認められれば受け入れられる。
魔族は血筋に拘らない。いや、拘ったのは守護神である蛇神シェーシャとの繋がりだった。それゆえに、シェンが「エリュを支持する」と表明した昨年から、貴族達の意識が変わり始めたのだ。守護神が魔族を見限れば、弱い種族から消えていく。そう言い伝えられ心に刻んだ魔族にとって、シェンの存在は重要だった。
「シェン様がエリュ様を切り捨てない限り、皇帝陛下の地位は安泰です」
目覚めたばかりのシェンが再び眠るのは、数世代後だ。少なくともエリュが皇帝でいる間は、深い眠りに入る必要がなかった。仲違いする可能性はほぼゼロで、シェンは魔族の守護神の役目を果たしている。
大切な友人を守るために……。
「逆にエリュが攻撃されたら、種族ごと絶滅させられそうだな」
物騒な予想を口にするナイジェルへ、ベリアルは少し考えてから答えた。
「その可能性はありますね。その前に相手の事情を調べるくらいはしてくれると思いますが」
否定できない。過去の蛇神の行いを知っているからこそ、魔国宰相の地位にある彼は曖昧に誤魔化した。どの種族が抗っても、魔族の守護神には勝てないのだから。
「そろそろでしょうか」
ちらりと視線を向けた扉の前に立つ侍女が、小さく頷く。ぱたぱたと走ってくる足音が聞こえ、ノックされた。侍女が開いた扉から「ありがと」とお礼を言ったエリュが、シェンの手を引いて走ってくる。
ドレスは白と黒。お互いの髪色を入れ替えた形だった。銀髪と色の変わる瞳を持つエリュは黒いドレス、黒髪に赤い瞳を持つシェンの身を包むのは真っ白なドレスだ。どちらも対で作られたと一目で分かる特徴があった。
背中のリボンがお互いの色をしている。腰から首の手前まで、編み上げる形で背を覆うリボンはまるで束縛の証のようで。顔を見合わせて二人は幸せそうに笑った。
「似合ってるぞ」
「へぇ、こんな風に対になってるんだ」
「とても可愛らしいですよ」
3人に口々に褒められ、エリュは満面の笑みを浮かべた。白なんて似合わないと恥ずかしそうにしながらも、隣のシェンは繋いだ手を離さない。軽食で腹を膨らませ、子ども達は貴族の待つ広間へ向かった。
彼らの言い分は理解できる。一部の不届きな連中を除けば、単に先代皇帝夫妻の特徴を備えた愛らしい幼女にご挨拶したいのだ。難しい言い回しを多用されたので問題のように見えるが、新しい皇帝になったエウリュアレに顔を覚えてもらい、今後の治世を支える約束をしたいだけ。
「意外だな」
「もっとドロドロした裏事情かと」
構えてしまった。着替えを終えたナイジェルとリンカが、驚いたと声を上げる。リビングでベリアルに大まかな事情を聞いていたのだが、それもすべて友人達の援護に回るためだった。こういう部分は人族の王宮事情が血腥いせいだろう。妖精族は血筋を重視するので、正当性が認められれば受け入れられる。
魔族は血筋に拘らない。いや、拘ったのは守護神である蛇神シェーシャとの繋がりだった。それゆえに、シェンが「エリュを支持する」と表明した昨年から、貴族達の意識が変わり始めたのだ。守護神が魔族を見限れば、弱い種族から消えていく。そう言い伝えられ心に刻んだ魔族にとって、シェンの存在は重要だった。
「シェン様がエリュ様を切り捨てない限り、皇帝陛下の地位は安泰です」
目覚めたばかりのシェンが再び眠るのは、数世代後だ。少なくともエリュが皇帝でいる間は、深い眠りに入る必要がなかった。仲違いする可能性はほぼゼロで、シェンは魔族の守護神の役目を果たしている。
大切な友人を守るために……。
「逆にエリュが攻撃されたら、種族ごと絶滅させられそうだな」
物騒な予想を口にするナイジェルへ、ベリアルは少し考えてから答えた。
「その可能性はありますね。その前に相手の事情を調べるくらいはしてくれると思いますが」
否定できない。過去の蛇神の行いを知っているからこそ、魔国宰相の地位にある彼は曖昧に誤魔化した。どの種族が抗っても、魔族の守護神には勝てないのだから。
「そろそろでしょうか」
ちらりと視線を向けた扉の前に立つ侍女が、小さく頷く。ぱたぱたと走ってくる足音が聞こえ、ノックされた。侍女が開いた扉から「ありがと」とお礼を言ったエリュが、シェンの手を引いて走ってくる。
ドレスは白と黒。お互いの髪色を入れ替えた形だった。銀髪と色の変わる瞳を持つエリュは黒いドレス、黒髪に赤い瞳を持つシェンの身を包むのは真っ白なドレスだ。どちらも対で作られたと一目で分かる特徴があった。
背中のリボンがお互いの色をしている。腰から首の手前まで、編み上げる形で背を覆うリボンはまるで束縛の証のようで。顔を見合わせて二人は幸せそうに笑った。
「似合ってるぞ」
「へぇ、こんな風に対になってるんだ」
「とても可愛らしいですよ」
3人に口々に褒められ、エリュは満面の笑みを浮かべた。白なんて似合わないと恥ずかしそうにしながらも、隣のシェンは繋いだ手を離さない。軽食で腹を膨らませ、子ども達は貴族の待つ広間へ向かった。
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