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93.ひとつ暴くと続きがあった

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 犯罪者集団をひとつ壊滅させた。人攫いと売買を行なっていたなら、過去に誘拐されたり拉致された子はどこへ売られたのか。シェンは彼らに丁寧に尋ねた。それはもう、泣いて詫びるほど丁重に。

 指を折られ悲鳴を上げながら、必死で記憶を遡る男達は、包み隠さずすべて話し終えた。これで解放されると安堵の息を吐くが、もちろんここで終わるわけがない。

「ふーん、人族の魔術師に売ったのか。じゃあ、その男に連絡とってよ」

「え? あ、いや……その」

「あと、ドラゴンにも売ったんでしょ? そっちも」

「無理っす!」

 降参したくせに逆らう男を一人、壁まで吹き飛ばす。塗り壁に食い込み、破片と一緒に落下した仲間を見たボスが、慌てて説明を始めた。

「人族の魔術師とは契約があって、逆らうと死ぬんですよ」

「そう。可哀想にね。話したら死んでいいよ」

 さらりと極悪非道な対応を取られ、顔が引き攣るボス。その脇で、獲物に同情するタイプの青年が口を開いた。

「ドラゴンは一回きりなので、連絡取れないんだけど」

「ふーん、その時の連絡方法だけ教えて」

「了解です」

 青年はさっさと裏切った。ボスについて行っても旨みはない。ここは強い者に巻かれるのが処世術というものだ。彼は自分が攫ってきた幼女に服従すると決めた。ある意味、この場で一番賢いかもしれない。早い決断は身を助ける。

 ドラゴンへの連絡方法は、意外にもシンプルだった。麓の町で伝言を頼むだけなのだ。面倒は、その際に使う暗号の件だけ。それも手に入れたので、後で話をつけるとして。より厄介なのは、人族の魔術師だった。

 他国の人で他種族。勝手に処分するわけにいかない。そこで使えるのが、人族の友人だ。大国の王子なら、ツテもあるはず。まあ、シェンにも多少のツテはあるが、頼み事をすると対価を要求される。今回はナイジェルに頼むことにした。

 人族の魔術師の話を聞き出すのは、騎士に任せればいい。きっといい仕事をしてくれるはず。

 鼻歌を歌いながら、犯罪者を宮殿の片隅へ転送していく。青宮殿から離れたそこは、騎士達の訓練所があった。全員飛ばした後にシェンも現れたことで、騎士が一人走った。足に自信のある獣人は、上司であるリリンを目指す。その間に事情を聞いた騎士達は、犯罪者達を捕縛した。

 可愛い盛りの幼子を狙った事件は、誰もが憎む犯罪だ。我が子が攫われたら、と人々は不安に駆られていた。他の組織との繋がりを含め、きっちり調査されるだろう。そちらは任せることにして、シェンは青宮殿へ向かう。

「まずは僕の無事を伝えて、ナイジェルに協力要請。それから、ドラゴンと話をつけなくちゃね」

 将軍であるリリンに子どもの行方を追跡してもらい、宰相ベリアルに売却先の調査を頼まなくてはならない。忙しい、忙しいと呟くシェンの表情は暗かった。

 連れ去られた子達が無事であることを祈りつつ、眠りすぎた弊害に舌打ちする。こんなに治安が乱れていたとは……悔しさと己の未熟さを噛み締めた蛇神は、長い舌で唇を湿らせた。

「報復は3倍だっけ?」

 初代皇帝の口癖を声に出し、目を細めた。もう好き勝手させる気はない。大切な契約者エウリュアレの治世の汚点は、僕が責任持って拭ってあげるよ。
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