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49.正反対な友人候補と顔合わせ

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 シェンやベリアルの画策通りに終了した祝賀会の後、予想外の申し出があった。エリュと交友関係を築きたいと、人間の王子から面会希望が届いたのだ。その話を聞きつけ、妖精族も王の姪を呼び寄せた。

 少し考えた後、ベリアルは断ろうと言い出した。危険すぎるのだ。エリュ自身は身を守る魔法も使えない。他種族に傷付けられたら取り返しがつかない、と。今後の外交にも影響するだろう。

「いや、会わせておいた方がいいよ」

 シェンは逆だった。国外に顔見知りを作ることは、エリュの足下を固める上で有効だ。ましてや王族やその縁戚ならば、友人関係を築くことで有利になる。そういった面を除いても……エリュに友人を増やしてやりたかった。

 あと数年すれば、国内から遊びや学びを通じて側近候補が選出される。だが、彼や彼女らは友人ではない。対等な関係を築けるのは、そういった利害関係が育つ前だろう。シェンはエリュの未来に、幅広い選択を与えたかった。

「シェン様の仰ることも理解できます。ですが」

 言葉の暴力で、取り返しのつかない傷を負うのではないか。幼い主君を心配するベリアルの心配も尤もだった。互いに膠着状態に陥る前に、リリンは思わぬ指摘をした。

「アドラメレク陛下やフルーレティ様なら、なんて仰るかしら」

 容易に想像がついた。エリュが可愛いが故に心配性で、一緒についていくと言い出すアドラメレク。フルーレティは傷つくのも経験と笑って送り出すだろう。

「わかりました」

 折れたのはベリアルだった。今回がチャンスなのは彼も理解しているし、シェンという最高の護衛が一緒なのだ。決まった話をエリュに伝えた。大きな目がさらに大きく見開かれる。

「お友達、増えるの?」

「そうなるといいね。魔族以外のお友達になったら素敵だよ」

「うん!」

 当初は意気込んだエリュだが、顔合わせの部屋に近づくと足取りが重くなった。怖いのだ。違う種族の子は、私を見て嫌ったりしないかな。不安を読み取り、シェンはエリュの背を押した。

「僕はエリュの味方で、一緒でしょ? 怖くないよ」

 無言で頷き、シェンと繋いだ手を確認する。それから勢い込んで頷いた。頑張ろう。エリュの気持ちが整ったのを確認したシェンが扉を開いた。

「皇帝陛下にお初にお目にかかる。妖精族のリンカです」

 きびきびとした口調で、はっきりと挨拶したのは、妖精王の姪リンカだった。横に広い耳と緑の髪を持つ少女だ。年齢は5歳前後に見えるが、実年齢はその数倍だろう。活発そうなリンカはエリュに微笑んだ。顔立ちが整った妖精の王族とあって美人だった。

「綺麗な子……」

 思わず漏れたエリュの感想に、リンカが「ありがとう」と笑う。第一印象は互いに好感触だった。だが……雰囲気が壊れる。

「皇帝陛下? この子が? ……僕の妹より下じゃないか」

 むすっとした口調で吐き捨てた響きに、エリュはびくりと竦んだ。あえて動かないシェンが見守る先で、少年は近づいて乱暴に手を伸ばした。触れる直前で、シェンが弾く。

「っ!」

「無礼すぎるよ、エリュは皇帝で……君はただの王子だ」

 先に名乗ってから、許可を得て触れるべきだろう? 諭すシェンを睨み、少年は大きな溜め息を吐いた。
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