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37.おめでとう、エリュ!

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 プレゼントに適した物を、収納空間から探す。魔法で繋げた入り口から手を入れ、中の物をいくつか取り出した。

 楽器はあるし、衣服も足りている。装飾品が一般的だが……まだ幼子なので飾り立てる機会も少なかった。つい先日、皇帝杖の珠も与えたばかり。ぬいぐるみや人形も先日購入したので、いよいよ詰まってしまった。

 お菓子は用意してあるから……うーんと唸りながら、ある物を思い出す。収納魔法に長けているので、常に全財産を持ち歩くシェンは頭まで突っ込んで探した。掴んで取り出したのは、一冊の本だ。

「これだ! 思い出せてよかった」

 見ていたケイトが綺麗に包んでくれる。綺麗な黄色のリボンを結んで、完全にプレゼント仕様になった。

「助かった、ありがとう」

 礼を言って、また収納へしまう。今度はすぐに取り出せるよう、入り口付近に置いた。空間を閉じたのと同じタイミングで、エリュがもぞもぞ動き出す。目覚めが近いのだ。慌ててシェンは眠ったフリをした。

 この頃のエリュは、お昼寝でシェンを起こすことが気に入っている。朝はシェンがエリュを起こすが、お昼寝は彼女が起こす番だった。先に起きていたら、がっかりさせてしまう。

「ん、起きたぁ」

 ケイトにそう告げて、顔をタオルで拭いてもらう。大人しくされるままだったエリュは、隣で丸まったシェンを揺らした。

「起きて、シェン。お昼寝終わり!」

「エリュ、ありがとう。いつも偉いね」

 先に起きてシェンを起こしたと褒めれば、にこにこと笑顔を振りまく。この瞬間のために寝たフリを繰り返すのだ。虹色がかったエリュの髪を撫でて、一緒に着替える。最近のお気に入りは、色違いのワンピースだった。

 ケイトが用意したそれを身につけ、仲良く手を繋ぐ。歩いた先は隣の部屋だった。静まり返った部屋の前で、エリュが首を傾げる。

「ここ、シェンの部屋?」

「ううん。僕の部屋はお向かいだよ」

「ふーん」

 特に隣の部屋に入ったことがないので、エリュは何も思わないらしい。素直に一緒に扉を開いた。

 ぱーん! ぱぱぱーん! 大きな音が連続して、魔法で作られたクラッカーが破裂する。小さな花火が机の上を彩り、花びらが舞い散った。部屋はカラフルに飾られ、多くのリボンやレースが風に揺れる。

「お誕生日、おめでとうございます! エリュ様」

 ベリアルが代表して挨拶すると、侍女やリリンも口々に「おめでとうございます」と声を揃えた。目を丸くしたエリュは、驚きすぎて声が出ない。

「おめでとう、エリュ! これで何歳になったの?」

 シェンが話を向ければ、まだ驚いた表情のままで親指を倒した右手を見せる。

「4歳……きょう?」

 どうやら、自分の誕生日を覚えていなかったらしい。ようやく理解したのか、嬉しいと口にして笑った。
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