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17.お揃いの服やバッグで街へ出よう
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エリュと手を繋いで廊下を歩く。シェンの後ろに続くのは、ベリアルだった。今日は約束した街へ行く日だ。エリュは浮かれていた。何回か迷子になったエリュと手を繋ぐ提案をしたのは、シェンである。ついでに追跡用や防御の魔法をいくつか仕込んでおいた。
「これ可愛い」
「うん、お揃いだね」
エリュが嬉しそうに手で撫でるのは、右肩から左の腰へ掛かったポシェットだった。中には飴やお菓子、ハンカチが入っている。ベリアルが同行するので金を持つ必要はないし、もし必要があってもシェンが収納魔法で持ち歩く予定だった。大金を持った可愛らしい幼女など、誘拐犯にとって垂涎の餌だ。
花畑に白ウサギの絵が描かれたポシェットを、エリュはしきりに撫でる。今までのお出かけで、バッグの類を身につけたことがないらしい。手に持つタイプは落とす可能性があり、肩から掛けるポシェットが提案された。
シェンも同じ柄の色違い、黒ウサギのポシェットを肩に掛けていた。服も同じワンピースの色違いなので、仲のいい姉妹に見えるだろう。黒髪のシェンと虹の銀髪のエリュ。今回は髪型もお揃いにした。両側で結んだツインテールである。
歩くたびに揺れる髪が見えるので、それもエリュのテンションを高めた。お友達とお揃いの姿で歩く。それはエリュには初めての経験だった。
「家族みたい」
「僕達は家族だよ、エリュ」
あっさり肯定されて、エリュは足を止めた。だが繋いだ手に引っ張られて歩き出す。じっと見つめる先はシェンの顔だった。ふふっと笑ったシェンが首を傾げる。
「僕の妹、可愛い可愛いエリュ」
「お姉ちゃん?」
「そう、それともお姉ちゃんを交代する?」
どっちでもいいよとシェンが提案すると、エリュはにっこり笑った。
「妹になる」
「じゃあ、ずっと一緒だからね」
一緒の約束が嬉しいようで、エリュは手を振って歩き出した。繋いだ手を揺らしながら、頬はずっと綻んでいる。愛らしい子ども達の様子に、ベリアルが微笑んだ。
「さあ、参りましょうか。遠いので魔法で移動します」
ベリアルが指先で丸を描くと、足元に魔法陣が現れた。五芒星に大量の文字が刻まれた複雑な紋様を、地面に焼き付ける。その上にいくつか情報を追加した。それから上に乗って手招きする。
「どうぞ」
「「うん」」
一緒に「せーの」で飛び乗る。タイミングを合わせた幼女達が、魔法陣に足を踏み入れた。ぴょんと飛んだ幼女達のワンピースの裾を直して、侍女ケイトは一歩下がった。
「ケイトは来ないの?」
「お留守番してますので、お土産を買ってくださいね」
侍女らしからぬ要望だが、これは何かを頼まれるのが好きなエリュのため。目を輝かせたエリュは「任せて」と手を振った。小さいながらも、お手伝いが好きなのだ。今回は侍女へのお土産、食べ物を選ぶかな? 微笑ましく思いながら、シェンはしっかりと手を繋いだ。
ベリアルの魔力が放たれ、魔法陣が光る。と同時に、彼らの姿は宮殿から消えた。街中にある領主の館に到着した3人は、挨拶を交わすと屋敷を出る。広がるのは、真っ直ぐな大通りだった。
「わぁ! いっぱいお店がある」
興奮した様子のエリュに引っ張られて歩きながら、シェンはいいことを思いついた。
「ねえ、エリュ。僕はこの街初めてだから、お店を教えてよ」
「そうなの? いいよ、前に行ったお店教えるね」
新しい役割をもらい、エリュは嬉しそうに笑顔で頷いた。
「これ可愛い」
「うん、お揃いだね」
エリュが嬉しそうに手で撫でるのは、右肩から左の腰へ掛かったポシェットだった。中には飴やお菓子、ハンカチが入っている。ベリアルが同行するので金を持つ必要はないし、もし必要があってもシェンが収納魔法で持ち歩く予定だった。大金を持った可愛らしい幼女など、誘拐犯にとって垂涎の餌だ。
花畑に白ウサギの絵が描かれたポシェットを、エリュはしきりに撫でる。今までのお出かけで、バッグの類を身につけたことがないらしい。手に持つタイプは落とす可能性があり、肩から掛けるポシェットが提案された。
シェンも同じ柄の色違い、黒ウサギのポシェットを肩に掛けていた。服も同じワンピースの色違いなので、仲のいい姉妹に見えるだろう。黒髪のシェンと虹の銀髪のエリュ。今回は髪型もお揃いにした。両側で結んだツインテールである。
歩くたびに揺れる髪が見えるので、それもエリュのテンションを高めた。お友達とお揃いの姿で歩く。それはエリュには初めての経験だった。
「家族みたい」
「僕達は家族だよ、エリュ」
あっさり肯定されて、エリュは足を止めた。だが繋いだ手に引っ張られて歩き出す。じっと見つめる先はシェンの顔だった。ふふっと笑ったシェンが首を傾げる。
「僕の妹、可愛い可愛いエリュ」
「お姉ちゃん?」
「そう、それともお姉ちゃんを交代する?」
どっちでもいいよとシェンが提案すると、エリュはにっこり笑った。
「妹になる」
「じゃあ、ずっと一緒だからね」
一緒の約束が嬉しいようで、エリュは手を振って歩き出した。繋いだ手を揺らしながら、頬はずっと綻んでいる。愛らしい子ども達の様子に、ベリアルが微笑んだ。
「さあ、参りましょうか。遠いので魔法で移動します」
ベリアルが指先で丸を描くと、足元に魔法陣が現れた。五芒星に大量の文字が刻まれた複雑な紋様を、地面に焼き付ける。その上にいくつか情報を追加した。それから上に乗って手招きする。
「どうぞ」
「「うん」」
一緒に「せーの」で飛び乗る。タイミングを合わせた幼女達が、魔法陣に足を踏み入れた。ぴょんと飛んだ幼女達のワンピースの裾を直して、侍女ケイトは一歩下がった。
「ケイトは来ないの?」
「お留守番してますので、お土産を買ってくださいね」
侍女らしからぬ要望だが、これは何かを頼まれるのが好きなエリュのため。目を輝かせたエリュは「任せて」と手を振った。小さいながらも、お手伝いが好きなのだ。今回は侍女へのお土産、食べ物を選ぶかな? 微笑ましく思いながら、シェンはしっかりと手を繋いだ。
ベリアルの魔力が放たれ、魔法陣が光る。と同時に、彼らの姿は宮殿から消えた。街中にある領主の館に到着した3人は、挨拶を交わすと屋敷を出る。広がるのは、真っ直ぐな大通りだった。
「わぁ! いっぱいお店がある」
興奮した様子のエリュに引っ張られて歩きながら、シェンはいいことを思いついた。
「ねえ、エリュ。僕はこの街初めてだから、お店を教えてよ」
「そうなの? いいよ、前に行ったお店教えるね」
新しい役割をもらい、エリュは嬉しそうに笑顔で頷いた。
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