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12.悪態ついたら結婚が早まった
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ルーベル公爵家に拉致されて、丸一日。すごく疲れたけど、あることに気づいた。
「私、公爵家の御当主に挨拶してないわ」
無断滞在に近いんじゃない? 嫡男の拉致が原因でも、一応御当主に挨拶は必要よ。一般常識だもの。そうだ! その時に助けを求めるのはどうかしら。公爵家といえば、王家に繋がりのある家柄。きっと攻略対象の息子以外はまともだと思う。
悪い方へ想像してフラグを立てたくないので、前向きに考えた。
「シル」
「なんだ? レティ」
「私、ルーベル公爵閣下にご挨拶してないわ。ら、滞在しているのに失礼よね」
危なかった。拉致られたのにって正直に口にするところよ。慌てて滞在に切り替えて、シルの反応を伺う。
「……父上に会いたいのか」
「え、ええ。さすがに失礼だと思うの。挨拶は基本よ、未来の家族だもの」
おほほと笑って誤魔化す。さあ、会わせると言え。呪いのように何度も心で囁いた。
「レティ、父上は男だ」
それは知ってる。女性なら、お母様だと思うし。そもそもお父様は男性が普通よ。
「俺は他の男にレティを見せたくない」
耳元で囁かれて、ぞくりと背筋が寒くなった。怖い、寒い、ヤバい。ぶるりと震えて、拘束された鎖がじゃらんと音を立てる。後ろ抱きに私を膝に乗せたシルは、整った顔に美しい笑みを浮かべた。
「他の男って、大袈裟よ。だってシルのお父様じゃ……」
「何度も言わせないでくれ、レティ。他の男だ」
怯えて震えていた私も、いい加減限界が来た。ちょっとどころか相当顔のいいヤンデレだからって、調子に乗らないで! 攻略対象が何だってのよ、殺せるならやってみなさいっての!!
「ぐだぐだうるせぇよ、いっぺん死んでみるか? おう?」
チンピラのような台詞が喉から絞り出され、はっとする。本音と建前が逆、ん? 違う、どっちも本音だった。より悪い印象を与える言葉を、口から吐いただけの話だ。内容に大差ない。
「レティ!」
なぜか目を輝かせた黒髪美形騎士に、頬や手の甲へ口付けられた。拒んで顔を背ければ、さらに興奮した様子で顔中にキスをされる。
「明日、結婚しよう」
「っ!」
驚きすぎて絶句した私をよそに、シルは言葉を並べた。告白もあれば、物騒な表現もある。
「愛してる、誰にも見せたくない。奪われないよう結婚する。もう一日だって我慢できない」
「嫌よ!」
「安心してくれ。ドレスならもう作らせている」
彼が自分からベラベラ自白した内容によれば、出会った裏路地で惚れて、すぐにドレスの手配をした。腕のいい王家御用達職人を閉じ込め、婚礼衣装を作らせる。サイズは私から奪った服から計測したとか。
「白いドレスに赤い薔薇、そうだな。血のようなルビーが相応しい。レティの赤い瞳に映えるだろう。大粒で透き通った石を用意するが、レティの瞳には勝てないな。この目をくり抜いて、瓶に入れたら持ち歩けるのに」
持ち歩かないでちょうだい!
「結婚しないわ」
「我が侭を口にするレティも可愛い。それなら、結婚式なしで拘束する」
本当に話が通じない、異星人だわ。ああ違う、異世界人だった。
「私、公爵家の御当主に挨拶してないわ」
無断滞在に近いんじゃない? 嫡男の拉致が原因でも、一応御当主に挨拶は必要よ。一般常識だもの。そうだ! その時に助けを求めるのはどうかしら。公爵家といえば、王家に繋がりのある家柄。きっと攻略対象の息子以外はまともだと思う。
悪い方へ想像してフラグを立てたくないので、前向きに考えた。
「シル」
「なんだ? レティ」
「私、ルーベル公爵閣下にご挨拶してないわ。ら、滞在しているのに失礼よね」
危なかった。拉致られたのにって正直に口にするところよ。慌てて滞在に切り替えて、シルの反応を伺う。
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「え、ええ。さすがに失礼だと思うの。挨拶は基本よ、未来の家族だもの」
おほほと笑って誤魔化す。さあ、会わせると言え。呪いのように何度も心で囁いた。
「レティ、父上は男だ」
それは知ってる。女性なら、お母様だと思うし。そもそもお父様は男性が普通よ。
「俺は他の男にレティを見せたくない」
耳元で囁かれて、ぞくりと背筋が寒くなった。怖い、寒い、ヤバい。ぶるりと震えて、拘束された鎖がじゃらんと音を立てる。後ろ抱きに私を膝に乗せたシルは、整った顔に美しい笑みを浮かべた。
「他の男って、大袈裟よ。だってシルのお父様じゃ……」
「何度も言わせないでくれ、レティ。他の男だ」
怯えて震えていた私も、いい加減限界が来た。ちょっとどころか相当顔のいいヤンデレだからって、調子に乗らないで! 攻略対象が何だってのよ、殺せるならやってみなさいっての!!
「ぐだぐだうるせぇよ、いっぺん死んでみるか? おう?」
チンピラのような台詞が喉から絞り出され、はっとする。本音と建前が逆、ん? 違う、どっちも本音だった。より悪い印象を与える言葉を、口から吐いただけの話だ。内容に大差ない。
「レティ!」
なぜか目を輝かせた黒髪美形騎士に、頬や手の甲へ口付けられた。拒んで顔を背ければ、さらに興奮した様子で顔中にキスをされる。
「明日、結婚しよう」
「っ!」
驚きすぎて絶句した私をよそに、シルは言葉を並べた。告白もあれば、物騒な表現もある。
「愛してる、誰にも見せたくない。奪われないよう結婚する。もう一日だって我慢できない」
「嫌よ!」
「安心してくれ。ドレスならもう作らせている」
彼が自分からベラベラ自白した内容によれば、出会った裏路地で惚れて、すぐにドレスの手配をした。腕のいい王家御用達職人を閉じ込め、婚礼衣装を作らせる。サイズは私から奪った服から計測したとか。
「白いドレスに赤い薔薇、そうだな。血のようなルビーが相応しい。レティの赤い瞳に映えるだろう。大粒で透き通った石を用意するが、レティの瞳には勝てないな。この目をくり抜いて、瓶に入れたら持ち歩けるのに」
持ち歩かないでちょうだい!
「結婚しないわ」
「我が侭を口にするレティも可愛い。それなら、結婚式なしで拘束する」
本当に話が通じない、異星人だわ。ああ違う、異世界人だった。
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