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第29章 魔の森の大祭
505.予選を勝ち抜いたのは意外な二人
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勝手に予選が始まり、管理するためにベールが動く。サナタキア将軍を監視役に任命し、大急ぎで予選参加者をリスト化した。イポスが受付を担当し、あっという間に数は半数に減る。
「イポス、何をしたのですか」
「簡単です。少なくとも私に勝てる腕の人だけ参加してくださいね、とお伝えしました」
魔王妃リリスの護衛を務めた彼女の実力は有名だ。その実力者に「私に勝てない者が魔王陛下に挑む気?」と尋ねられたら、辞退する者が続出したのも理解できる。残った半数は運試しと実力を過信した者に分かれた。ある程度は見逃すつもりで、イポスも甘く裁定したようだ。
予選は驚くべき速さで進行され、サタナキアによって振り分けられた。残されたのは二人、いや一人と一羽だった。
「アラエルとレラジェ……」
参りましたね。そんな口調で名を呟き、ベールはルシファーの判断を仰ぐことにした。
「ん、二人ともいいんじゃないか」
あまり深く考えずに了承する魔王に、ベールはいつものことと納得した。そのまま告知する彼を見ながら、アスタロトが眉を寄せる。ここで大公全員が参加すると一人多い。賭けの人数はプラス四人だった。こうなったら自分が参加拒否するか。
「アスタロト、いいところで会いました。悪いのですが、魔王チャレンジを取り仕切ってください。私は海の民の接待がありますので参加しません。詳細はサタナキアに任せています」
「分かりました、海の民によろしく伝えてください」
にっこり笑って見送る。ベールの参加はない。現時点でプラス二人、こうなれば当然ベルゼビュートが騒ぐはず。普段より露出の高いスリットドレスのベルゼビュートは、ルシファーに参加を告げた。ここでようやく私の出番ですね。アスタロトは悪い顔で笑うと、宣言した。
「では、私も参加しましょう」
「はぁ? あり得ないわ、なんでそうなるのよ!」
怒り出すベルゼビュートを無視し、さっさと手続きを終える。ピンクの巻き毛を揺らして怒り狂うが、自分が辞退する考えに至らないらしい。賭けに勝つため楽しみを断つか、戦いを選んで金貨を諦めるか。悩むのならわかるが、そもそも選択肢に気づいていないようだ。
「アスタロト、あんたが辞退しなさいよ」
「申し訳ありませんが、辞退する気はありません」
きっぱり言い切ったことで、ベルゼビュートはぐしゃりと髪をかき乱した。久しぶりの賭けなので、勝ちたかったのだろう。だが孫の賭けを優先するアスタロトは、彼女に助言しない。そうこうしている間に、確定してしまった。
大公女四人とルキフェル、そこへ予選通過のアラエルやレラジェ。大公のベルゼビュートにアスタロト。見事にエルの予想勝ちだった。呆れ顔のルキフェルは「自分が辞退すりゃ勝ちじゃん」と呟いたが、ベルゼビュートには届かなかった。
頭が悪いわけではないのに、見落としが多い。そんなベルゼビュートが賭けに勝つか負けるか、実はそれも賭けのひとつだったことを、彼女だけが知らなかった。本人が思うより愛されている彼女は、獣姿の夫に抱き着いて愚痴をこぼす。そんな庶民派な姿が、ベルゼビュートが愛される理由のひとつだった。
「賭けは残念でしたが、あなたの戦いが見られるのは楽しみです」
エリゴスの見事なサポートで、ベルゼビュートはあっさり立ち直った。負けた半券を破り捨て収納へ放り込む。それから目の前の芝へ剣を並べ始めた。
「今回はどれがいいかしら」
リリスは「いいなぁ」と羨まし気な呟きを零し、戻ってきたイヴを撫でる。シャイターンはルシファーの抱っこを拒み、ロアの背中でご機嫌だった。
「じゃあ、そろそろ始めるか?」
ルシファーの一言が魔王チャレンジの宣言となり、わっと観衆が沸き立つ。挑む順序は名乗り出た順番に決まった。
「イポス、何をしたのですか」
「簡単です。少なくとも私に勝てる腕の人だけ参加してくださいね、とお伝えしました」
魔王妃リリスの護衛を務めた彼女の実力は有名だ。その実力者に「私に勝てない者が魔王陛下に挑む気?」と尋ねられたら、辞退する者が続出したのも理解できる。残った半数は運試しと実力を過信した者に分かれた。ある程度は見逃すつもりで、イポスも甘く裁定したようだ。
予選は驚くべき速さで進行され、サタナキアによって振り分けられた。残されたのは二人、いや一人と一羽だった。
「アラエルとレラジェ……」
参りましたね。そんな口調で名を呟き、ベールはルシファーの判断を仰ぐことにした。
「ん、二人ともいいんじゃないか」
あまり深く考えずに了承する魔王に、ベールはいつものことと納得した。そのまま告知する彼を見ながら、アスタロトが眉を寄せる。ここで大公全員が参加すると一人多い。賭けの人数はプラス四人だった。こうなったら自分が参加拒否するか。
「アスタロト、いいところで会いました。悪いのですが、魔王チャレンジを取り仕切ってください。私は海の民の接待がありますので参加しません。詳細はサタナキアに任せています」
「分かりました、海の民によろしく伝えてください」
にっこり笑って見送る。ベールの参加はない。現時点でプラス二人、こうなれば当然ベルゼビュートが騒ぐはず。普段より露出の高いスリットドレスのベルゼビュートは、ルシファーに参加を告げた。ここでようやく私の出番ですね。アスタロトは悪い顔で笑うと、宣言した。
「では、私も参加しましょう」
「はぁ? あり得ないわ、なんでそうなるのよ!」
怒り出すベルゼビュートを無視し、さっさと手続きを終える。ピンクの巻き毛を揺らして怒り狂うが、自分が辞退する考えに至らないらしい。賭けに勝つため楽しみを断つか、戦いを選んで金貨を諦めるか。悩むのならわかるが、そもそも選択肢に気づいていないようだ。
「アスタロト、あんたが辞退しなさいよ」
「申し訳ありませんが、辞退する気はありません」
きっぱり言い切ったことで、ベルゼビュートはぐしゃりと髪をかき乱した。久しぶりの賭けなので、勝ちたかったのだろう。だが孫の賭けを優先するアスタロトは、彼女に助言しない。そうこうしている間に、確定してしまった。
大公女四人とルキフェル、そこへ予選通過のアラエルやレラジェ。大公のベルゼビュートにアスタロト。見事にエルの予想勝ちだった。呆れ顔のルキフェルは「自分が辞退すりゃ勝ちじゃん」と呟いたが、ベルゼビュートには届かなかった。
頭が悪いわけではないのに、見落としが多い。そんなベルゼビュートが賭けに勝つか負けるか、実はそれも賭けのひとつだったことを、彼女だけが知らなかった。本人が思うより愛されている彼女は、獣姿の夫に抱き着いて愚痴をこぼす。そんな庶民派な姿が、ベルゼビュートが愛される理由のひとつだった。
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「今回はどれがいいかしら」
リリスは「いいなぁ」と羨まし気な呟きを零し、戻ってきたイヴを撫でる。シャイターンはルシファーの抱っこを拒み、ロアの背中でご機嫌だった。
「じゃあ、そろそろ始めるか?」
ルシファーの一言が魔王チャレンジの宣言となり、わっと観衆が沸き立つ。挑む順序は名乗り出た順番に決まった。
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