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第27章 春の芽吹き
474.福利厚生はバッチリです
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猫獣人の姉弟を収容し、寮の部屋を大急ぎで整えさせた。気の利く侍従ベリアルが、用意した部屋に案内する。今まで住んでいた家より狭いが、キッチン以外はすべて用意されていた。
「ご飯はどこで作るんですか」
「食堂がある。好きなだけ食べていいぞ、タダだしお代わりも自由だ」
驚いた顔の弟と手を繋ぎ、アイムはルシファーの後ろをついてくる。話した通りだと確認して、ほっとした表情になった。
「仕事は明日からだ。慣れるまでは、魔犬族のベリアルが迎えに来る。さっき会った小型の犬獣人だ」
「分かります」
可哀想なくらい聞き分けがいい。受け答えもしっかりしており、ルシファーは余計なことを言いそうになって手で押さえた。アイムは自立するだけの能力も、気持ちもある。勝手に同情して手を差し伸べるべきではないだろう。
「シエルは普段どうしていたんだ?」
「家で待ってた」
シエル自身が返答する。
「そうか、保育園へ通うのはどうだろう」
目を見開いて、ルシファーと姉アイムの顔を交互に見つめる。シエル自身は通ってみたいようだ。考え込んだアイムの心配は、お金だろう。通うのに費用が必要なら、今は無理と考えたのかもしれない。
ここは魔王城の福祉制度を使うべきだ。何かのセールストークのように、ルシファーは指折りながら利点を数え始めた。
「魔王城は勤務先として人気があるんだ。その理由が、食事付きの寮が無料で使えること。子どもがいる人は保育園も無料だ。ケガや病気をしても、すぐ治療が受けられる」
頷きながら、アイムはちらりと弟を見た。保育園にお金がかからないなら、通わせてあげられる。少女の表情はそう語っていた。
「アイムが安心して仕事に集中できるよう、シエルは保育園で預かってもらおう」
「はい、お願いします」
「お姉ちゃん、僕保育園行けるの? 行っていいの?」
重ねて尋ねるのは、以前に通いたいと口にして断られたのかな? 予想しながら、ルシファーが保証した。
「ああ、魔王がいいと言ったんだ。誰も反対できないぞ」
やったと大声をあげて喜ぶシエルが、四つ足で走り回った。部屋の隅に置いたベッドに飛び乗り、これまた大興奮である。嬉しそうに見つめるアイムを、ルシファーは無意識に撫でていた。
「弟の面倒を見て頑張ったんだな、偉いぞ」
「……うん」
泣いているかと思うほど、声が震えていた。でも彼女は泣かない。ぎゅっと前を睨む姿に、少しばかり疑問を覚えた。
まるで親や叔父などいなかったかのような反応だ。ここ最近の苦労ではない。調査が必要だな。こういう話はベールが得意だった。念話で依頼を済ませ、その場は別れる。
そんなに急がなくてもいい。彼女達はもう、お腹いっぱい食べて暖かい部屋で眠るのだから。
執務室へ立ち寄り、アスタロトにも話を通した。その上で、アイムの仕事用の家具や文具を揃える。手配を終えて自室へ戻れば、すでに聞きつけたリリスが待っていた。
「ねえ、どうして連れてこなかったの?」
「いきなりでは怖がる。数日したらお茶や食事に誘えるだろうが、今はそっとしておこう」
ルシファーの気遣いに、リリスは肩を落とした。そこでふと浮かんだ疑問をリリスにぶつける。
「ところで、誰に話を聞いたんだ?」
「ベルゼ姉さんよ。養子にしようかと思ってると言われたわ」
……情報源がベルゼビュートなら、もたらされた話に出てきた姉弟はさぞ気の毒そうに聞こえただろう。脚色と感情移入が激しい側近を思い浮かべ、ルシファーは口元を緩めた。調査結果によっては、養子も良いかもしれないな。
「ご飯はどこで作るんですか」
「食堂がある。好きなだけ食べていいぞ、タダだしお代わりも自由だ」
驚いた顔の弟と手を繋ぎ、アイムはルシファーの後ろをついてくる。話した通りだと確認して、ほっとした表情になった。
「仕事は明日からだ。慣れるまでは、魔犬族のベリアルが迎えに来る。さっき会った小型の犬獣人だ」
「分かります」
可哀想なくらい聞き分けがいい。受け答えもしっかりしており、ルシファーは余計なことを言いそうになって手で押さえた。アイムは自立するだけの能力も、気持ちもある。勝手に同情して手を差し伸べるべきではないだろう。
「シエルは普段どうしていたんだ?」
「家で待ってた」
シエル自身が返答する。
「そうか、保育園へ通うのはどうだろう」
目を見開いて、ルシファーと姉アイムの顔を交互に見つめる。シエル自身は通ってみたいようだ。考え込んだアイムの心配は、お金だろう。通うのに費用が必要なら、今は無理と考えたのかもしれない。
ここは魔王城の福祉制度を使うべきだ。何かのセールストークのように、ルシファーは指折りながら利点を数え始めた。
「魔王城は勤務先として人気があるんだ。その理由が、食事付きの寮が無料で使えること。子どもがいる人は保育園も無料だ。ケガや病気をしても、すぐ治療が受けられる」
頷きながら、アイムはちらりと弟を見た。保育園にお金がかからないなら、通わせてあげられる。少女の表情はそう語っていた。
「アイムが安心して仕事に集中できるよう、シエルは保育園で預かってもらおう」
「はい、お願いします」
「お姉ちゃん、僕保育園行けるの? 行っていいの?」
重ねて尋ねるのは、以前に通いたいと口にして断られたのかな? 予想しながら、ルシファーが保証した。
「ああ、魔王がいいと言ったんだ。誰も反対できないぞ」
やったと大声をあげて喜ぶシエルが、四つ足で走り回った。部屋の隅に置いたベッドに飛び乗り、これまた大興奮である。嬉しそうに見つめるアイムを、ルシファーは無意識に撫でていた。
「弟の面倒を見て頑張ったんだな、偉いぞ」
「……うん」
泣いているかと思うほど、声が震えていた。でも彼女は泣かない。ぎゅっと前を睨む姿に、少しばかり疑問を覚えた。
まるで親や叔父などいなかったかのような反応だ。ここ最近の苦労ではない。調査が必要だな。こういう話はベールが得意だった。念話で依頼を済ませ、その場は別れる。
そんなに急がなくてもいい。彼女達はもう、お腹いっぱい食べて暖かい部屋で眠るのだから。
執務室へ立ち寄り、アスタロトにも話を通した。その上で、アイムの仕事用の家具や文具を揃える。手配を終えて自室へ戻れば、すでに聞きつけたリリスが待っていた。
「ねえ、どうして連れてこなかったの?」
「いきなりでは怖がる。数日したらお茶や食事に誘えるだろうが、今はそっとしておこう」
ルシファーの気遣いに、リリスは肩を落とした。そこでふと浮かんだ疑問をリリスにぶつける。
「ところで、誰に話を聞いたんだ?」
「ベルゼ姉さんよ。養子にしようかと思ってると言われたわ」
……情報源がベルゼビュートなら、もたらされた話に出てきた姉弟はさぞ気の毒そうに聞こえただろう。脚色と感情移入が激しい側近を思い浮かべ、ルシファーは口元を緩めた。調査結果によっては、養子も良いかもしれないな。
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