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第26章 魔の森の目覚め
456.大地が胎動し……目覚める!
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新しい汽水湖ができたことについて、お咎めはなかった。穴を開けて水を落とした影響で、水害地区は一気に狭まる。各種族の居住区は、冠水から無事復旧した。
現在はアムドゥスキアス指揮の下、様々な施策が行われている。食糧支援やテントの貸し出し、避難した民への住居提供など。その範囲は徐々に広がり、今後は壊れた建物の改修工事も含まれる予定だ。
大雨の被災地が限られたことで、予算は潤沢に使うことが出来た。張り切ったアムドゥスキアスを、妻レライエが積極的に手伝っている。他の大公女達も動いていた。シトリーは災害地の子を優先して預かり、ルーサルカはその手伝いに入った。
物資の手配を行うルーシアは、後方支援に終始している。それぞれに動く友人達を見ながら、リリスは困惑していた。レライエが卵を産んだのに、温めを親戚に任せて働く。自分がこうしていていいのだろうか。
最もな疑問だが、アスタロトはきっちり言い含めた。
「卵は自分で活動しませんが、シャイターン様は違います。赤子はオムツに授乳、泣き止ませるなど作業がたくさんあるでしょう。その証拠に、我が妻アデーレも参加していません」
「……そうね」
素直なリリスは頷いた。確かに同じように赤子を産んだばかりのアデーレは復旧作業に参加していないし、他の侍女達も同様だ。ならば自分も育児に専念しよう。
「助かった」
ルシファーはアスタロトに礼を告げた。ここ数日、リリスが手伝いに参加したいと言い出し、困っていたのだ。説得を頼まれたアスタロトは、肩を竦めた。
「あなたはリリス様に甘過ぎます。何でもしたいようにさせれば良いものでもありませんよ」
「分かってるんだが」
頼まれると嫌と言えない。溜め息をついて、ルシファーは妻リリスを見つめた。黒髪に金の瞳、とても美しく可愛い最愛の妻だ。彼女が「お願い」といえば、何でも叶えたくなる。それが世界の滅亡でも、叶えてしまいそうな自分がいた。
実際、過去に滅ぼしかけたのだが……。
「ルシファー、明日はお母様のところへ行くわ」
「いいが、何かあるのか?」
「たぶん……明日だと思うの」
答えにならない呟きに、首を傾げながらも同行すると申し出た。
イヴを連れ、シャイターンを抱いたリリスは、当然のようにルシファーの腕に収まった。すっぽり包まれる状態で、後ろの魔王を見上げる。
「いいわ、お母様のところへお願い」
転移魔法陣が足下に描き出され、ぱっと光る。直後、一家の姿は執務室から消えた。頭を抱えたアスタロトが呻く。
「やはり、城内での転移を禁止すべきですね。何度注意しても理解できないようですから」
緊急事態用なのに、ルシファーは平常使いする。魔王城の防犯用魔法陣に、再び転移禁止を追加する申請書を作成し始めた。
魔王になってから色々窮屈になったとボヤくルシファーだが、理由は確実に彼自身である。それを証明するような出来事だった。
「リリン、いるか?」
「しぃー、お母様はもうすぐ起きるわ」
まだ寝ているのか。そう判断したルシファーだが、魔の森は現在休眠期間である。勝手にリリンの領域に出入りしているだけで、本来は訪ねて来られる状況ではなかった。そんなことはすっかり忘れ、ルシファーは持ち込んだソファーで寛ぐ。
がたん……何かが倒れる音に周囲を見回す。全体に大きく大地が揺れていた。ゆったりと動くので、物もほぼ倒れない。先ほどの音は、小物が転がって床に落ちたせいだった。
「地震?」
「リリンが起きたの」
そっちの意味か! ようやく理解したルシファーが目を見開く。森全体が目覚める話だった。数十年は眠る予定と聞いたので、僅か数年で目覚めが訪れると思わなかった。
揺れはさらに強くなり、突然ぴたりと止む。途端に部屋中の小物が落ちた。
現在はアムドゥスキアス指揮の下、様々な施策が行われている。食糧支援やテントの貸し出し、避難した民への住居提供など。その範囲は徐々に広がり、今後は壊れた建物の改修工事も含まれる予定だ。
大雨の被災地が限られたことで、予算は潤沢に使うことが出来た。張り切ったアムドゥスキアスを、妻レライエが積極的に手伝っている。他の大公女達も動いていた。シトリーは災害地の子を優先して預かり、ルーサルカはその手伝いに入った。
物資の手配を行うルーシアは、後方支援に終始している。それぞれに動く友人達を見ながら、リリスは困惑していた。レライエが卵を産んだのに、温めを親戚に任せて働く。自分がこうしていていいのだろうか。
最もな疑問だが、アスタロトはきっちり言い含めた。
「卵は自分で活動しませんが、シャイターン様は違います。赤子はオムツに授乳、泣き止ませるなど作業がたくさんあるでしょう。その証拠に、我が妻アデーレも参加していません」
「……そうね」
素直なリリスは頷いた。確かに同じように赤子を産んだばかりのアデーレは復旧作業に参加していないし、他の侍女達も同様だ。ならば自分も育児に専念しよう。
「助かった」
ルシファーはアスタロトに礼を告げた。ここ数日、リリスが手伝いに参加したいと言い出し、困っていたのだ。説得を頼まれたアスタロトは、肩を竦めた。
「あなたはリリス様に甘過ぎます。何でもしたいようにさせれば良いものでもありませんよ」
「分かってるんだが」
頼まれると嫌と言えない。溜め息をついて、ルシファーは妻リリスを見つめた。黒髪に金の瞳、とても美しく可愛い最愛の妻だ。彼女が「お願い」といえば、何でも叶えたくなる。それが世界の滅亡でも、叶えてしまいそうな自分がいた。
実際、過去に滅ぼしかけたのだが……。
「ルシファー、明日はお母様のところへ行くわ」
「いいが、何かあるのか?」
「たぶん……明日だと思うの」
答えにならない呟きに、首を傾げながらも同行すると申し出た。
イヴを連れ、シャイターンを抱いたリリスは、当然のようにルシファーの腕に収まった。すっぽり包まれる状態で、後ろの魔王を見上げる。
「いいわ、お母様のところへお願い」
転移魔法陣が足下に描き出され、ぱっと光る。直後、一家の姿は執務室から消えた。頭を抱えたアスタロトが呻く。
「やはり、城内での転移を禁止すべきですね。何度注意しても理解できないようですから」
緊急事態用なのに、ルシファーは平常使いする。魔王城の防犯用魔法陣に、再び転移禁止を追加する申請書を作成し始めた。
魔王になってから色々窮屈になったとボヤくルシファーだが、理由は確実に彼自身である。それを証明するような出来事だった。
「リリン、いるか?」
「しぃー、お母様はもうすぐ起きるわ」
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「地震?」
「リリンが起きたの」
そっちの意味か! ようやく理解したルシファーが目を見開く。森全体が目覚める話だった。数十年は眠る予定と聞いたので、僅か数年で目覚めが訪れると思わなかった。
揺れはさらに強くなり、突然ぴたりと止む。途端に部屋中の小物が落ちた。
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