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第24章 思っていたのと違う
431.叔父と姪は結婚できるんだぞ?
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翌日から、イヴはレラジェと保育園へ向かう。とっくに卒園済みと思っていたが、レラジェは休園中だったらしい。考えてみれば、卒園式に立ち会っていなかった。
魔の森の娘リリスと違い、ルキフェルの代わりに森の養分になるため生まれたレラジェは、森の息子というわけではない。だがルシファーが弟のように可愛がったので、リリンが妥協して生存を認めた。複雑な経緯で弟になった彼だが、アンナ達夫婦と暮らしてかなり感情を覚えた。
今ではイヴの複雑な感情をしっかり受け止め、諭すほどだ。イヴが弟に懐くのはいいが……ルシファーから見て男女なのは間違いない。いや、誰から見ても男女なのだが。一般的に幼子にそういった性別で区別しないだけである。
「レラジェは、イヴの恋人になりたいんだろうか」
真剣に書類を眺めた後吐き出した一言に、処理済み書類受け取りに来たアベルは肩を竦めた。
「ないっすね。レラジェは単純に、叔父として姪っ子の面倒見てるだけっす」
「知ってるか、アベル。魔族は叔父と姪の結婚を禁じていない」
「……俺のいた日本も同じですけどね。あれは違います」
きっぱり言い切られ、そうなのかとルシファーも納得した。後日、この話を聞いたイザヤとルーサルカが彼を褒めまくったのは、言うまでもない。無実のレラジェが追求されるところだった。
レラジェという兄を得たイヴは、不安をかなり解消した。弟シャイターンが生まれて、自分が蔑ろにされる気がしたのだ。そうではなく、両親の愛情は変わっていない。ただより弱い方へ意識を向けただけと納得した。
「イヴは強いから平気」
宣言すると友人のマーリーンが手を叩く。偉くなった気がして、腰に手を当ててふんぞり返った。尻餅をついたところへ、おやつの合図が届く。ガミジン先生の蹄の音がして、慌てて駆け寄った。
「今日は何?」
「お芋だ。焼いて食べよう」
どうやらまだ食べられなさそうだ。一緒に庭の掃き掃除を手伝い、藁で焚き火をした。庭に落ちていた木の枝が勢いよく燃え、火が落ち着いた頃に芋が投下される。皮付きでじっくりと火を通した芋は、実は事前に加熱済みだった。
子どもは非日常的な行事を好むが、辛抱強いとは言えない。飽きるのも早いので、雰囲気だけ味わうことにした。加熱済みの芋の表面を炙ると、すぐに取り出される。熱いお芋を半分にして、マーリーンと齧った。
いろいろと楽しい。保育園にいる間、イヴはシャイターンの存在を忘れて遊び倒した。帰りはまたレラジェと手を繋いで歩く。ルシファーの迎えを待たないので、早かった。母イポスの迎えを待つマーリーンへ手を振り、イヴは大きな声で歌いながら歩く。幸い、この歌の音程はずれていなかった。
「上手だね、イヴ。どこで習ったの?」
姉に当たるリリスの音痴をよく知るレラジェは、不思議そうに尋ねた。すると彼女は胸を張り、ガミジン先生と答える。保育園で習った歌なので、きちんとした音階とリズムで覚えられたらしい。
レラジェは別の歌を歌った。するとイヴも真似する。二人で手を繋ぎ、歌いながら帰城する姿は魔王に目撃された。嫉妬に狂うのでは? と心配したが、意外な反応を見せる。
「可愛いイヴとレラジェ。歌も素敵だ。絵になるな」
うんうんと頷くルシファーに、侍従達も相槌を打った。ルシファーと顔がそっくりなレラジェなので、隣にいても違和感がない。どうやら叔父と姪っ子の恋愛疑惑は解決したようだ。大量の書類に向き直りながら、ルシファーは夕飯に間に合うよう処理速度を上げた。
「あ、レラジェに夕食付き合えるか、聞いといてくれ」
「はい」
ベリアルは笑顔で頭を下げ、外で繋いだ手を揺らす子ども達の元へ向かった。
魔の森の娘リリスと違い、ルキフェルの代わりに森の養分になるため生まれたレラジェは、森の息子というわけではない。だがルシファーが弟のように可愛がったので、リリンが妥協して生存を認めた。複雑な経緯で弟になった彼だが、アンナ達夫婦と暮らしてかなり感情を覚えた。
今ではイヴの複雑な感情をしっかり受け止め、諭すほどだ。イヴが弟に懐くのはいいが……ルシファーから見て男女なのは間違いない。いや、誰から見ても男女なのだが。一般的に幼子にそういった性別で区別しないだけである。
「レラジェは、イヴの恋人になりたいんだろうか」
真剣に書類を眺めた後吐き出した一言に、処理済み書類受け取りに来たアベルは肩を竦めた。
「ないっすね。レラジェは単純に、叔父として姪っ子の面倒見てるだけっす」
「知ってるか、アベル。魔族は叔父と姪の結婚を禁じていない」
「……俺のいた日本も同じですけどね。あれは違います」
きっぱり言い切られ、そうなのかとルシファーも納得した。後日、この話を聞いたイザヤとルーサルカが彼を褒めまくったのは、言うまでもない。無実のレラジェが追求されるところだった。
レラジェという兄を得たイヴは、不安をかなり解消した。弟シャイターンが生まれて、自分が蔑ろにされる気がしたのだ。そうではなく、両親の愛情は変わっていない。ただより弱い方へ意識を向けただけと納得した。
「イヴは強いから平気」
宣言すると友人のマーリーンが手を叩く。偉くなった気がして、腰に手を当ててふんぞり返った。尻餅をついたところへ、おやつの合図が届く。ガミジン先生の蹄の音がして、慌てて駆け寄った。
「今日は何?」
「お芋だ。焼いて食べよう」
どうやらまだ食べられなさそうだ。一緒に庭の掃き掃除を手伝い、藁で焚き火をした。庭に落ちていた木の枝が勢いよく燃え、火が落ち着いた頃に芋が投下される。皮付きでじっくりと火を通した芋は、実は事前に加熱済みだった。
子どもは非日常的な行事を好むが、辛抱強いとは言えない。飽きるのも早いので、雰囲気だけ味わうことにした。加熱済みの芋の表面を炙ると、すぐに取り出される。熱いお芋を半分にして、マーリーンと齧った。
いろいろと楽しい。保育園にいる間、イヴはシャイターンの存在を忘れて遊び倒した。帰りはまたレラジェと手を繋いで歩く。ルシファーの迎えを待たないので、早かった。母イポスの迎えを待つマーリーンへ手を振り、イヴは大きな声で歌いながら歩く。幸い、この歌の音程はずれていなかった。
「上手だね、イヴ。どこで習ったの?」
姉に当たるリリスの音痴をよく知るレラジェは、不思議そうに尋ねた。すると彼女は胸を張り、ガミジン先生と答える。保育園で習った歌なので、きちんとした音階とリズムで覚えられたらしい。
レラジェは別の歌を歌った。するとイヴも真似する。二人で手を繋ぎ、歌いながら帰城する姿は魔王に目撃された。嫉妬に狂うのでは? と心配したが、意外な反応を見せる。
「可愛いイヴとレラジェ。歌も素敵だ。絵になるな」
うんうんと頷くルシファーに、侍従達も相槌を打った。ルシファーと顔がそっくりなレラジェなので、隣にいても違和感がない。どうやら叔父と姪っ子の恋愛疑惑は解決したようだ。大量の書類に向き直りながら、ルシファーは夕飯に間に合うよう処理速度を上げた。
「あ、レラジェに夕食付き合えるか、聞いといてくれ」
「はい」
ベリアルは笑顔で頭を下げ、外で繋いだ手を揺らす子ども達の元へ向かった。
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