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第23章 生まれるぅ!
413.驚くほどあっさり産まれた
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「うっ、出ちゃった」
泣き出しそうなリリスの言葉に、慌てたルシファーがスカートを捲る。頭が出た我が子に気づき、引っ張ろうとして手を止めた。これは素人が引っ張り出していいのか? 危険なら誰かを呼んだ方が……。
迷ったのは一瞬だけ。すぐにぽんと生まれ出たのだ。ずるりとシーツに沈む我が子を抱き上げ、侍従を呼んだ。
「ベリアル! なんとかしろ」
「メフィスト先生を呼んでいます」
まだ来ない医師は当てにならない。失礼な言い方で再びベリアルを呼ぶルシファーを見かねて、部屋に飛び込んだのは侍女の一人だった。
「どいてください! ほら」
急かされて、まだ臍の緒が繋がった我が子を侍女に託す。彼女は慣れた手付きで、汚れた赤子の顔や体を拭った。ぽんと背中を叩けば、大声で泣き出した。ほっとするルシファーの前で、臍の緒が切られる。
「……便秘が治った時の方が痛かったわ」
二度目の出産だからか。リリスは余裕があった。陣痛がきてすぐに破水し、生まれたのも大きい。ケロリとした様子で、ダメージも少なそうだった。運び込まれた水を飲み、汚れた服を着替えやすいよう手伝う。落ち着いたところで、生まれた我が子を抱いた。
「見て、ルシファー。銀髪よ」
まだ目を開いていない赤子は、ちょろちょろと銀髪が生えていた。リリス譲りの象牙色の肌は、やや赤くなっている。全力で息を吸い、思い切り泣く。赤子らしい力強さがあった。
「息子だったな」
イヴやリリスの予言通りだ。弟が出来たと目を輝かせるイヴが覗き込み、手を伸ばした。触れる手前で一度ためらい、ちらりとルシファーの表情を窺う。頷いた父を見ながら、指先で弟に触れた。
すぐに夢中になり、柔らかな頬を突いたり頭を撫でたり忙しい。イヴはいい姉になりそうだ。
「あたちがママよ」
「いや、お姉ちゃんだろ」
どこかで聞いたフレーズで、弟に間違った知識を与える愛娘に、ルシファーは速攻で訂正を入れた。危うく、子を産んだ六歳児が誕生するところだ。首を傾げて「お姉ちゃん?」と繰り返すイヴは、響きがしっくりこないらしい。
実年齢としては六歳だが、見た目は三歳前後だ。高魔力を保有する魔族は成長が遅い。イヴもこれに当てはまった。魔王の魔法を打ち消す無効化は、その特性だけでなく魔力量にも支えられて発動する。
「ママは私」
楽な姿勢に落ち着いたリリスが言い聞かせると、イヴは納得した。
「あたち、お姉ちゃん!」
「このまま「あたち」が固定されたら困るな」
苦笑いするルシファーだが、息子が生まれた場で無粋な注意は避けた。汗で濡れた黒髪を指で梳いて、リリスの額に口付ける。
「ありがとう、リリスが産んでくれた息子だ。名前を一緒に考えよう」
「そうね。眠るから……はふっ、あとで、いいかしら」
大泣きする息子に安心したリリスは、疲れから眠気に襲われていた。うとうとする妻に「いいよ、おやすみ」と囁いたルシファーがキスを贈る。頬や額、唇と場所を問わない複数の口付けに、リリスは頬を緩めた。そのまま眠ったリリスを起こさないよう、寝室を出る。
イヴはきょろきょろした後、大人しくルシファーの手招きに従った。扉を閉めると、いい子だと褒められて胸を張る。
「お姉ちゃんだから」
「そうだな、お姉ちゃんは立派だったぞ」
しばらく「お姉ちゃん」は魔法の言葉になりそうだ。お祝いを受けながら、ルシファーは離れた客間へ移動した。整えられたベッドでイヴを寝かしつけ、生まれたばかりの我が子を抱いて腰掛ける。泣き疲れたのか、赤子は眠っていた。
「息子か……初めてだな」
頬が緩む。リリスを育てた時も、イヴとも違う。これからの楽しみが増えた。
泣き出しそうなリリスの言葉に、慌てたルシファーがスカートを捲る。頭が出た我が子に気づき、引っ張ろうとして手を止めた。これは素人が引っ張り出していいのか? 危険なら誰かを呼んだ方が……。
迷ったのは一瞬だけ。すぐにぽんと生まれ出たのだ。ずるりとシーツに沈む我が子を抱き上げ、侍従を呼んだ。
「ベリアル! なんとかしろ」
「メフィスト先生を呼んでいます」
まだ来ない医師は当てにならない。失礼な言い方で再びベリアルを呼ぶルシファーを見かねて、部屋に飛び込んだのは侍女の一人だった。
「どいてください! ほら」
急かされて、まだ臍の緒が繋がった我が子を侍女に託す。彼女は慣れた手付きで、汚れた赤子の顔や体を拭った。ぽんと背中を叩けば、大声で泣き出した。ほっとするルシファーの前で、臍の緒が切られる。
「……便秘が治った時の方が痛かったわ」
二度目の出産だからか。リリスは余裕があった。陣痛がきてすぐに破水し、生まれたのも大きい。ケロリとした様子で、ダメージも少なそうだった。運び込まれた水を飲み、汚れた服を着替えやすいよう手伝う。落ち着いたところで、生まれた我が子を抱いた。
「見て、ルシファー。銀髪よ」
まだ目を開いていない赤子は、ちょろちょろと銀髪が生えていた。リリス譲りの象牙色の肌は、やや赤くなっている。全力で息を吸い、思い切り泣く。赤子らしい力強さがあった。
「息子だったな」
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すぐに夢中になり、柔らかな頬を突いたり頭を撫でたり忙しい。イヴはいい姉になりそうだ。
「あたちがママよ」
「いや、お姉ちゃんだろ」
どこかで聞いたフレーズで、弟に間違った知識を与える愛娘に、ルシファーは速攻で訂正を入れた。危うく、子を産んだ六歳児が誕生するところだ。首を傾げて「お姉ちゃん?」と繰り返すイヴは、響きがしっくりこないらしい。
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「ママは私」
楽な姿勢に落ち着いたリリスが言い聞かせると、イヴは納得した。
「あたち、お姉ちゃん!」
「このまま「あたち」が固定されたら困るな」
苦笑いするルシファーだが、息子が生まれた場で無粋な注意は避けた。汗で濡れた黒髪を指で梳いて、リリスの額に口付ける。
「ありがとう、リリスが産んでくれた息子だ。名前を一緒に考えよう」
「そうね。眠るから……はふっ、あとで、いいかしら」
大泣きする息子に安心したリリスは、疲れから眠気に襲われていた。うとうとする妻に「いいよ、おやすみ」と囁いたルシファーがキスを贈る。頬や額、唇と場所を問わない複数の口付けに、リリスは頬を緩めた。そのまま眠ったリリスを起こさないよう、寝室を出る。
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しばらく「お姉ちゃん」は魔法の言葉になりそうだ。お祝いを受けながら、ルシファーは離れた客間へ移動した。整えられたベッドでイヴを寝かしつけ、生まれたばかりの我が子を抱いて腰掛ける。泣き疲れたのか、赤子は眠っていた。
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頬が緩む。リリスを育てた時も、イヴとも違う。これからの楽しみが増えた。
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