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第16章 魔王様の育児論
283.解説は一昼夜に及んだ
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ルキフェルの解説によれば、イヴの能力はあくまで「魔力」によって生じた現象に作用する。自然現象として噴火した場合は、対象外だった。自然災害すべてを無効化する能力ではないのだ。魔力溜まりによって熱せられた土や金属は、その熱の根源が魔力である。
膨大な魔力に炙られる形で噴き出した。作用した熱の原因を消し去れば、勝手に元の砂や金属に戻る。マグマが消えた原因がそこにあった。ところが元々マグマが流れていた穴は、地下水の通り道であったらしい。そのため空いた穴が放置されたことで、水が吹き出して湖が形成されてしまった。
地下水が湧き出る湖と表現して間違いない。ここまで一気に説明したルキフェルは満足げだった。久しぶりに蘊蓄や詳細を求められたことで、たっぷり語り切ったのだ。細かな原理や応用技術、専門的な解説に話が飛び火したため、一昼夜掛かった説明は、ようやく締め括られた。
聞き疲れてぐったりするベルゼビュートの前で、ルキフェルの肌や髪は艶々している。満足した彼の気力は充実したらしい。少し離れた湖畔で、魔王一家はキャンプを楽しんだ。緊急視察の名目があるので、遠慮なく湖畔でのリゾートを満喫する。前回が中途半端に終わったので、ちょうどいい機会だった。
まだ出来たばかりの湖に魚はいないので、ルシファーが海から転送した魚介類を焼き、コカトリスの唐揚げも大量に揚げた。匂いに釣られた魔獣達にも振る舞い、ご機嫌で夜のご飯を終える。余るよう大量に作った唐揚げをパンに挟んだ朝食を終え、昼食は何にしようかと相談する余裕もあった。
「ルキフェル、話し終わったならお茶を飲むか?」
「うん、ありがと」
魔法で冷やした氷入りのお茶を一気飲みし、ルキフェルは慌てて声を上げた。
「あっ! ベールに報告しなくちゃ」
「任せる。オレ達は夕方までに帰るから、夕食は城で食べると伝えてくれ」
「わかった」
元気よく手を振り、瑠璃竜王の名を持つ大公は転移で消えた。彼の姿がなくなって、ようやくベルゼビュートは這うように近づく。
「陛下、恨みますわ」
「お前の自業自得だろ。ほら、飯を食え」
美女の口に容赦なく唐揚げパンを詰め込み、お茶を持たせた。水辺で遊ぶイヴとリリスは、少し冷えた手足を温めながら戻ってくる。
「今日の予定はどうするの?」
「お昼を食べて、日が暮れたら転移すればいいさ」
後ろにテントも張ってある。一見すると地味なテントだが、中は豪華な仕様になっていた。巨大なヤンが入りきらない小型テントなのに、数十倍の広さがある。空間を魔力で拡張したのだ。広い室内はルシファーの収納から取り出したベッド、テーブルセットや風呂まで完備されていた。
キャンプと呼ぶには豪華すぎる設備である。妻子に快適な環境を用意するのは夫の仕事、と張り切った結果だった。実際、リリスもイヴも喜んでくれたので大成功だろう。
「お風呂を貸してくださらない?」
あると疑わないベルゼビュートに許可を出した。疲れ切った様子でテントに入っていく。
「ベルゼ姉さん、浄化したらいいのに」
「あれは精神的な疲れを取りたいんだろうな」
手っ取り早く浄化すれば体の汚れは落ちるが、心の疲れはそのままだ。さっぱり流してしまいたい気持ちは理解できる。あの専門的な解説を一昼夜ノンストップで聞き続けたのだから。うっかり藪を突いた過去を思い出し、ルシファーは遠い目をした。
うん、今日も空は綺麗だ。昼食は煮込みシチューを作ることにしたため、食材を現地調達した。捕まえた魔物の肉をミンチにしてお団子を作る。イヴは大興奮でお団子を破壊しまくり、そのたびに直しながら根気強く鍋で煮込んだ。
2時間ほど入浴してさっぱりしたベルゼビュートは、ご褒美のように用意されたシチューを堪能して先に戻る。子狼達と合流したイヴは、思う存分遊び倒した。疲れて眠った我が子を抱いた妻を連れ、ルシファーはご機嫌で城に帰り……執務机の書類を無視して休む。当然、次の日は朝から書類に追われた。
膨大な魔力に炙られる形で噴き出した。作用した熱の原因を消し去れば、勝手に元の砂や金属に戻る。マグマが消えた原因がそこにあった。ところが元々マグマが流れていた穴は、地下水の通り道であったらしい。そのため空いた穴が放置されたことで、水が吹き出して湖が形成されてしまった。
地下水が湧き出る湖と表現して間違いない。ここまで一気に説明したルキフェルは満足げだった。久しぶりに蘊蓄や詳細を求められたことで、たっぷり語り切ったのだ。細かな原理や応用技術、専門的な解説に話が飛び火したため、一昼夜掛かった説明は、ようやく締め括られた。
聞き疲れてぐったりするベルゼビュートの前で、ルキフェルの肌や髪は艶々している。満足した彼の気力は充実したらしい。少し離れた湖畔で、魔王一家はキャンプを楽しんだ。緊急視察の名目があるので、遠慮なく湖畔でのリゾートを満喫する。前回が中途半端に終わったので、ちょうどいい機会だった。
まだ出来たばかりの湖に魚はいないので、ルシファーが海から転送した魚介類を焼き、コカトリスの唐揚げも大量に揚げた。匂いに釣られた魔獣達にも振る舞い、ご機嫌で夜のご飯を終える。余るよう大量に作った唐揚げをパンに挟んだ朝食を終え、昼食は何にしようかと相談する余裕もあった。
「ルキフェル、話し終わったならお茶を飲むか?」
「うん、ありがと」
魔法で冷やした氷入りのお茶を一気飲みし、ルキフェルは慌てて声を上げた。
「あっ! ベールに報告しなくちゃ」
「任せる。オレ達は夕方までに帰るから、夕食は城で食べると伝えてくれ」
「わかった」
元気よく手を振り、瑠璃竜王の名を持つ大公は転移で消えた。彼の姿がなくなって、ようやくベルゼビュートは這うように近づく。
「陛下、恨みますわ」
「お前の自業自得だろ。ほら、飯を食え」
美女の口に容赦なく唐揚げパンを詰め込み、お茶を持たせた。水辺で遊ぶイヴとリリスは、少し冷えた手足を温めながら戻ってくる。
「今日の予定はどうするの?」
「お昼を食べて、日が暮れたら転移すればいいさ」
後ろにテントも張ってある。一見すると地味なテントだが、中は豪華な仕様になっていた。巨大なヤンが入りきらない小型テントなのに、数十倍の広さがある。空間を魔力で拡張したのだ。広い室内はルシファーの収納から取り出したベッド、テーブルセットや風呂まで完備されていた。
キャンプと呼ぶには豪華すぎる設備である。妻子に快適な環境を用意するのは夫の仕事、と張り切った結果だった。実際、リリスもイヴも喜んでくれたので大成功だろう。
「お風呂を貸してくださらない?」
あると疑わないベルゼビュートに許可を出した。疲れ切った様子でテントに入っていく。
「ベルゼ姉さん、浄化したらいいのに」
「あれは精神的な疲れを取りたいんだろうな」
手っ取り早く浄化すれば体の汚れは落ちるが、心の疲れはそのままだ。さっぱり流してしまいたい気持ちは理解できる。あの専門的な解説を一昼夜ノンストップで聞き続けたのだから。うっかり藪を突いた過去を思い出し、ルシファーは遠い目をした。
うん、今日も空は綺麗だ。昼食は煮込みシチューを作ることにしたため、食材を現地調達した。捕まえた魔物の肉をミンチにしてお団子を作る。イヴは大興奮でお団子を破壊しまくり、そのたびに直しながら根気強く鍋で煮込んだ。
2時間ほど入浴してさっぱりしたベルゼビュートは、ご褒美のように用意されたシチューを堪能して先に戻る。子狼達と合流したイヴは、思う存分遊び倒した。疲れて眠った我が子を抱いた妻を連れ、ルシファーはご機嫌で城に帰り……執務机の書類を無視して休む。当然、次の日は朝から書類に追われた。
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