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第15章 神のいない神隠し
260.違いは魔力量と本能?
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魔狼の子は、両親の言いつけを破っていたことが判明。兄と一緒に外出するよう言い聞かされたのに、一人で探検していて崖を落ちた。その結果、偶然にも魔熊の子と衝突、そのまま二匹揃ってこの世界に落ちたらしい。と言っても、ルシファーの身長ほどの崖から転げただけだから、ケガはなかった。
「不幸中の幸いだな」
無事ならいい。簡単に許すルシファーに対し、唸るヤンは抗議を始めた。
「我が君は魔力が多く大抵のことはお一人でこなせます。ですから問題になりませんが、魔獣は一般的な獣よりやや強い程度です。このように甘やかし、許していたら群れで暮らしていけません」
「すまん」
ケガがなくてよかったと呟いたつもりが、子狼の言動を許したように感じたらしい。一族の教育に拘りの強いヤンは、ふんと大きく息を吐きだした。ここは譲れない一線のようだ。
「ところで、アドキスはどうした?」
「何か感じるの?」
ルシファーとベルゼビュートに尋ねられ、洞窟の奥を睨む翡翠竜はヒステリックに叫んだ。
「なんで平気なんですか! あっちに何かいます。それも強いのが」
「「感じないぞ(わよね)」」
異口同音にハモった二人に、短い足をバンバン打ち鳴らして翡翠竜は訴える。どうやら強い魔力を感じ、襲い掛かられる気配があるのだとか。目を細めてじっくり奥を眺めるベルゼビュートは首を傾げた。反射的に子ども達を守るように引き寄せたルシファーも、不思議そうな顔をする。
彼と彼女はまったく感じない。だがアムドゥスキアスは、寒気がするような強者がいると断言した。どちらの感覚が正しいのか。そこで思い出したのは、この世界に来てからの違和感だった。魔法がうまく作用しなかったり、感知に違いが出たり。
「共通しているのは、オレがほとんど役立たずという状況か」
ルシファーは冷静に分析を始めた。普段から浮かぶことに魔力を使うルシファーやベルゼビュートは、落下した。ヤンは元から飛べないので除外する。魔力と羽を両方使うアムドゥスキアスは、体が重いと感じながらも空を飛んだ。
感知もそうだ。最初から彼はこの洞窟の方角へ近づくことを嫌った。妙な感じがして嫌いだ、と。はっきり表明していたのだ。
「アドキスとオレの違いはなんだ?」
「魔力量と……あっ! 本能?」
思い付きと閃きで生き残る精霊女王は、かなり的確に事実を指摘する。
「魔力量が多いオレは、何かの干渉を受けている。それはベルゼも同じだろう。アドキスの場合、オレ達よりヤンに近い。魔力を使った感知が惑わされても、本能が警告するというわけか」
なるほどと納得したルシファーは、くいっと袖を引っ張られて振り返る。耳を垂らした大型犬サイズのフェンリルは、言い出しにくそうに声を絞り出した。
「本能なら、我が一番発達しているのではありませぬか」
なのに、何も感じておりません。仮説が間違っている可能性を指摘するヤンだが、いきなり全身の毛を逆立てた。それは魔熊や魔狼の子も同じだ。鼻に皺を寄せて魔狼の子は唸った。その威嚇の先は、洞窟の奥だ。
「やはり何かいるらしい」
まったく感じないが……そうぼやきながら、ルシファーは困ったと苦笑いを浮かべる。危機感の乏しい彼だが、警戒していないわけではなかった。子ども達を含め、この場にいる全員に結界の重ね掛けを行う。物理、魔法、双方を無効にする結界を魔法陣で構築した。
「ベルゼ、お前の魔法陣は独立させた」
「承知しましたわ。あたくしが罰してさしあげましてよ」
「いや……罪人とは限らないから罰しなくていいぞ」
ぼそっと注意するが、興奮した彼女は聞いていない。収納から剣を取り出して立ち上がり、低い天井に肩と後頭部を打ち付けた。不安に駆られたルシファーは、収納空間に手を突っ込む。
「そういや、収納へのアクセスは妨害されないんだな」
「不幸中の幸いだな」
無事ならいい。簡単に許すルシファーに対し、唸るヤンは抗議を始めた。
「我が君は魔力が多く大抵のことはお一人でこなせます。ですから問題になりませんが、魔獣は一般的な獣よりやや強い程度です。このように甘やかし、許していたら群れで暮らしていけません」
「すまん」
ケガがなくてよかったと呟いたつもりが、子狼の言動を許したように感じたらしい。一族の教育に拘りの強いヤンは、ふんと大きく息を吐きだした。ここは譲れない一線のようだ。
「ところで、アドキスはどうした?」
「何か感じるの?」
ルシファーとベルゼビュートに尋ねられ、洞窟の奥を睨む翡翠竜はヒステリックに叫んだ。
「なんで平気なんですか! あっちに何かいます。それも強いのが」
「「感じないぞ(わよね)」」
異口同音にハモった二人に、短い足をバンバン打ち鳴らして翡翠竜は訴える。どうやら強い魔力を感じ、襲い掛かられる気配があるのだとか。目を細めてじっくり奥を眺めるベルゼビュートは首を傾げた。反射的に子ども達を守るように引き寄せたルシファーも、不思議そうな顔をする。
彼と彼女はまったく感じない。だがアムドゥスキアスは、寒気がするような強者がいると断言した。どちらの感覚が正しいのか。そこで思い出したのは、この世界に来てからの違和感だった。魔法がうまく作用しなかったり、感知に違いが出たり。
「共通しているのは、オレがほとんど役立たずという状況か」
ルシファーは冷静に分析を始めた。普段から浮かぶことに魔力を使うルシファーやベルゼビュートは、落下した。ヤンは元から飛べないので除外する。魔力と羽を両方使うアムドゥスキアスは、体が重いと感じながらも空を飛んだ。
感知もそうだ。最初から彼はこの洞窟の方角へ近づくことを嫌った。妙な感じがして嫌いだ、と。はっきり表明していたのだ。
「アドキスとオレの違いはなんだ?」
「魔力量と……あっ! 本能?」
思い付きと閃きで生き残る精霊女王は、かなり的確に事実を指摘する。
「魔力量が多いオレは、何かの干渉を受けている。それはベルゼも同じだろう。アドキスの場合、オレ達よりヤンに近い。魔力を使った感知が惑わされても、本能が警告するというわけか」
なるほどと納得したルシファーは、くいっと袖を引っ張られて振り返る。耳を垂らした大型犬サイズのフェンリルは、言い出しにくそうに声を絞り出した。
「本能なら、我が一番発達しているのではありませぬか」
なのに、何も感じておりません。仮説が間違っている可能性を指摘するヤンだが、いきなり全身の毛を逆立てた。それは魔熊や魔狼の子も同じだ。鼻に皺を寄せて魔狼の子は唸った。その威嚇の先は、洞窟の奥だ。
「やはり何かいるらしい」
まったく感じないが……そうぼやきながら、ルシファーは困ったと苦笑いを浮かべる。危機感の乏しい彼だが、警戒していないわけではなかった。子ども達を含め、この場にいる全員に結界の重ね掛けを行う。物理、魔法、双方を無効にする結界を魔法陣で構築した。
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ぼそっと注意するが、興奮した彼女は聞いていない。収納から剣を取り出して立ち上がり、低い天井に肩と後頭部を打ち付けた。不安に駆られたルシファーは、収納空間に手を突っ込む。
「そういや、収納へのアクセスは妨害されないんだな」
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