246 / 530
第14章 それはオーパーツ?
244.人魚の子は人魚か?
しおりを挟む
魅了された一部の魔族が砂浜を歩いていく。誘うように手を伸ばす人魚の胸に飛び込むと……ここで予想外の変化があった。人魚達が選んだ男に口付けると、彼女らの下半身が人の脚になる。見た目は普通の人族に近づいた。耳が水かきのような形だが、長い髪に隠れてほとんど目立たない。
「なるほど、こうやって異種族との交配が可能になるんだね」
メモを取りながら興味津々のルキフェルは、そのまま彼らの交尾まで観察しそうな勢いだ。まあ、今後のために経過観察も含めて必要なのだが、ルシファーは隣のリリスの目を手で隠した。イヴの目はリリスが覆っている。
「ぶぅ!」
暗いと文句を言うイヴだが、言い聞かされると諦めたらしい。大人しくなり、いつの間にか寝息を立て始めた。そんな愛娘と一緒に後ろを向いたリリスは、やはり背後が気になるらしい。振り向こうとして、またルシファーに止められた。
「繁殖方法はともかく、ちょっとした疑問なんだが」
ルシファーが隣のアスタロトに声をかける。結界のチェックや、こちら側に魅了された魔族が出ていないか調べていたアスタロトは、人数を数えてから振り返った。
「なんでしょう」
「生まれる子は、魔族のルールだと両親どちらかに分化しただろう? もし人魚じゃない子が産まれたら、海の中で育てられないと思うんだが」
海の底で、魔獣の子が産まれたら大惨事である。魔力の扱いがうまくない上、地上でなければ呼吸が出来ない。すぐに呼んでくれたら迎えに行くが、それも難しそうな気がした。生まれる前に対策を考えないと、溺死する子が大量発生する可能性が……。
出産場所が浜辺であると聞いているので、陸の種族の子を回収するシステムが必要だ。青ざめた二人があれこれ相談する横で、ルキフェルは首を傾げた。
「そういうの、今まではどうしてたんだろ」
「海の中で生活していたなら、海の生物の子しか産んでないはず。問題なかったんじゃないか?」
タコやイカの子を産んだとしても、海の中で溺れる心配は要らない。
「人魚の子って、人魚じゃないかしら」
「ん?」
思わぬ発言をしたリリスに首を傾げる。海の底にも魔の森は広がっているから、何か情報を持っているのかと期待したが、彼女の話は推論だった。
「知ってるわけじゃないの。ただ、ラミアはラミアしか産まないでしょう?」
下半身が蛇な時点で共通点が多そうな種族だが、蛇女族と人魚には大きな違いがある。
「ラミアの交配相手は、ラミアだぞ?」
若い個体が繁殖期に性転換するため、ラミアの父も母もラミアなのだ。人魚のように他種族との間に子を成すわけではない。指摘されたリリスが「そっかぁ」と残念そうに呟いた。いい着目点だったが、確証がないので仕方ない。
「人魚に聞いたら早いけど」
「今はやめておきなさい」
好奇心からルキフェルが呟くと、アスタロトは淡々と止めた。ここでうっかりルキフェルが魅了されて、人魚に子を宿した場合……幻獣霊王であるベールが怒り狂うだろう。まだ手を引く幼子の感覚でルキフェルを甘やかす男だ。幼子から種を搾り取るなど許さないと、攻撃する未来が確定だった。
「あ、不思議なことに余らないんだな」
全員が人魚に選ばれたのは不思議だ。人魚の数の方が少なかったのだが? 首を傾げたルシファーは、複数のオスを侍らせる人魚に気づいた。なるほど、余らせるくらいなら私がもらう……の精神らしい。繁殖期は数年に一度らしいが、ルキフェルの観察結果を踏まえ、今後の対策が必要だ。
野放しにするのは危険すぎる、人魚の習性だった。
「なるほど、こうやって異種族との交配が可能になるんだね」
メモを取りながら興味津々のルキフェルは、そのまま彼らの交尾まで観察しそうな勢いだ。まあ、今後のために経過観察も含めて必要なのだが、ルシファーは隣のリリスの目を手で隠した。イヴの目はリリスが覆っている。
「ぶぅ!」
暗いと文句を言うイヴだが、言い聞かされると諦めたらしい。大人しくなり、いつの間にか寝息を立て始めた。そんな愛娘と一緒に後ろを向いたリリスは、やはり背後が気になるらしい。振り向こうとして、またルシファーに止められた。
「繁殖方法はともかく、ちょっとした疑問なんだが」
ルシファーが隣のアスタロトに声をかける。結界のチェックや、こちら側に魅了された魔族が出ていないか調べていたアスタロトは、人数を数えてから振り返った。
「なんでしょう」
「生まれる子は、魔族のルールだと両親どちらかに分化しただろう? もし人魚じゃない子が産まれたら、海の中で育てられないと思うんだが」
海の底で、魔獣の子が産まれたら大惨事である。魔力の扱いがうまくない上、地上でなければ呼吸が出来ない。すぐに呼んでくれたら迎えに行くが、それも難しそうな気がした。生まれる前に対策を考えないと、溺死する子が大量発生する可能性が……。
出産場所が浜辺であると聞いているので、陸の種族の子を回収するシステムが必要だ。青ざめた二人があれこれ相談する横で、ルキフェルは首を傾げた。
「そういうの、今まではどうしてたんだろ」
「海の中で生活していたなら、海の生物の子しか産んでないはず。問題なかったんじゃないか?」
タコやイカの子を産んだとしても、海の中で溺れる心配は要らない。
「人魚の子って、人魚じゃないかしら」
「ん?」
思わぬ発言をしたリリスに首を傾げる。海の底にも魔の森は広がっているから、何か情報を持っているのかと期待したが、彼女の話は推論だった。
「知ってるわけじゃないの。ただ、ラミアはラミアしか産まないでしょう?」
下半身が蛇な時点で共通点が多そうな種族だが、蛇女族と人魚には大きな違いがある。
「ラミアの交配相手は、ラミアだぞ?」
若い個体が繁殖期に性転換するため、ラミアの父も母もラミアなのだ。人魚のように他種族との間に子を成すわけではない。指摘されたリリスが「そっかぁ」と残念そうに呟いた。いい着目点だったが、確証がないので仕方ない。
「人魚に聞いたら早いけど」
「今はやめておきなさい」
好奇心からルキフェルが呟くと、アスタロトは淡々と止めた。ここでうっかりルキフェルが魅了されて、人魚に子を宿した場合……幻獣霊王であるベールが怒り狂うだろう。まだ手を引く幼子の感覚でルキフェルを甘やかす男だ。幼子から種を搾り取るなど許さないと、攻撃する未来が確定だった。
「あ、不思議なことに余らないんだな」
全員が人魚に選ばれたのは不思議だ。人魚の数の方が少なかったのだが? 首を傾げたルシファーは、複数のオスを侍らせる人魚に気づいた。なるほど、余らせるくらいなら私がもらう……の精神らしい。繁殖期は数年に一度らしいが、ルキフェルの観察結果を踏まえ、今後の対策が必要だ。
野放しにするのは危険すぎる、人魚の習性だった。
20
お気に入りに追加
746
あなたにおすすめの小説
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
クソガキ、暴れます。
サイリウム
ファンタジー
気が付いたら鬱エロゲ(SRPG)世界の曇らせ凌辱負けヒロイン、しかも原作開始10年前に転生しちゃったお話。自分が原作のようになるのは死んでも嫌なので、原作知識を使って信仰を失ってしまった神様を再降臨。力を借りて成長していきます。師匠にクソつよお婆ちゃん、騎馬にクソデカペガサスを連れて、完膚なきまでにシナリオをぶっ壊します。
ハーメルン、カクヨム、なろうでも投稿しております。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる