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第2章 学校のお披露目が近づいて

27.獣耳の魔法陣で違うモノも生えた!

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 魔法陣を投げられた先で、偶然通りかかった兎獣人に猫耳が生える。可愛いんだが、耳が増えるのは何か違うな。慌てて解除して、今度は身内で試すことにした。生える耳がランダムなのは、この魔法陣がお祭り用だからだ。どんな耳か、生えてのお楽しみだった。

「私から行く?」

 立候補するリリスだが、彼女には重要な役目がある。魔力の動きを色で確認するため、今回は辞退してもらおう。代わりにベールを指名したら威嚇されたので、諦めた。残るのはアスタロトとルキフェル……ここは危険が少ない方を選ぼう。

「ルキフェル、その」

「僕はダメだよ。緊急時の対策担当だし、そもそも僕は解析魔法陣を使うんだから」

「……仕方ない。アスタロトに」

 頼むとしようか。向き直った先で、イイ笑顔を向けられて固まる。頼む前から断られる気しかしない。いざとなればこの身を実験材料に差し出すか。迷うルシファーへ、アスタロトは声を掛けた。

「ルシファー様、私に頼むのはのですか? なんとも悲しいですね」

 全然悲しそうに見えない。全員がそう思った。しかし口にする勇者はいない。八つ当たりされる危険を避けて通るのは、本能だった。

「い、いや……その、ほら。アスタロトに頼むのは悪いなと思って、えっと、オレが代わりになろうか」

 曖昧に誤魔化す間に、リリスは複製した獣耳発生の魔法陣を投げた。何の躊躇もなく飛んで来る魔法陣を、ルシファーはひょいっと避けた。が、リリスの魔力はアスタロトの結界に弾かれ、ルシファーに直撃する。彼女の魔力は魔王ルシファーと限りなく近いため、するりと結界を通過した。

「うぎゃああああ!」

「ご安心ください、お似合いですよ」

 にっこり笑う側近アスタロトが手鏡を取りだし、ルシファーへ示す。立派な耳が生えたが、なぜか一緒にツノも現れた。鹿、だろうか? 小さな茶色の耳がぴるぴると揺れる。その脇に牡鹿を思わせるツノがにょきっと……。

「なに、これ。え? なんで」

 驚き過ぎて言葉がない魔王を、イヴが「あぁ!」と指さした。直後、鹿耳が消える。

「水色の魔力だわ、やっぱりイヴだったのね」

 魔力を掻き消したのが娘だと分かり、リリスは安心した。だがルシファーはそうはいかない。魔王の頭の上に生えた枝のようなツノは見事だが、似合うかと言われたら首を傾げる微妙さだった。

「イヴ、これも消してくれ」

 自分で消せばいいのに混乱したルシファーが頼み、イヴは母の首筋に頬を押し当てながら「うぅ゛」と唸る。ぶんぶんと手を振って、ツノを消した。やはり彼女の魔力は魔王や魔王妃の魔法を消滅させるらしい。

「これで検証は終わりましたね。話が事実だと分かったので、どの規模まで消せるのか試しますか?」

「やめて。大陸が壊れるじゃん」

 揶揄う口調のアスタロトへ、ルキフェルは首を横に振った。確かに危険はあるが、その前に止めればいいと考える辺り、アスタロトやベールは危険だ。大公3人でバランスが取れていたのに、新しい大公を魔の森が求めた要因のひとつが、コレだろうか。

「イヴぅ……愛してる、ありがと」

 ちゅっと頬にキスをした途端、ぱちんとリリスの平手がルシファーの頬を張った。何度も言うが、彼女は魔王の結界をスルー出来るので、直撃だ。

「いてっ……ごめん、リリスも大好きで愛してる」

「そうじゃないわ! 赤子のうちはキスしちゃダメって言われたでしょう? イヴが病気になってもいいの?!」

 大人の持つ菌を近づけないというアンナの方針を受け継いだリリスは、ぷりぷりと愛らしい仕草で怒りながら指摘する。だがルシファー達魔族に、そういった概念はなかった。勝手に子どもは成長するし、ある程度危険を遠ざければ病気になることも少ない。

「大丈夫だと思う」

「思うじゃダメなのよ!」

「ごめん」

 最終的に魔王が負けるのは分かっていたので、側近達は顔を突き合わせて別の心配をしていた。この世界で最強のはずの魔王の魔法を打ち消す。イヴのこの能力は、うっかり他の貴族に漏れると危険だった。安全対策を兼ねて、一時的に魔力を封じるのはどうか。

「力がなくても困りますが、多すぎても困るものですね」

 ルシファーを育てた時の苦労を思いだし、アスタロトとベールが肩を竦めた。
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