上 下
28 / 530
第2章 学校のお披露目が近づいて

27.獣耳の魔法陣で違うモノも生えた!

しおりを挟む
 魔法陣を投げられた先で、偶然通りかかった兎獣人に猫耳が生える。可愛いんだが、耳が増えるのは何か違うな。慌てて解除して、今度は身内で試すことにした。生える耳がランダムなのは、この魔法陣がお祭り用だからだ。どんな耳か、生えてのお楽しみだった。

「私から行く?」

 立候補するリリスだが、彼女には重要な役目がある。魔力の動きを色で確認するため、今回は辞退してもらおう。代わりにベールを指名したら威嚇されたので、諦めた。残るのはアスタロトとルキフェル……ここは危険が少ない方を選ぼう。

「ルキフェル、その」

「僕はダメだよ。緊急時の対策担当だし、そもそも僕は解析魔法陣を使うんだから」

「……仕方ない。アスタロトに」

 頼むとしようか。向き直った先で、イイ笑顔を向けられて固まる。頼む前から断られる気しかしない。いざとなればこの身を実験材料に差し出すか。迷うルシファーへ、アスタロトは声を掛けた。

「ルシファー様、私に頼むのはのですか? なんとも悲しいですね」

 全然悲しそうに見えない。全員がそう思った。しかし口にする勇者はいない。八つ当たりされる危険を避けて通るのは、本能だった。

「い、いや……その、ほら。アスタロトに頼むのは悪いなと思って、えっと、オレが代わりになろうか」

 曖昧に誤魔化す間に、リリスは複製した獣耳発生の魔法陣を投げた。何の躊躇もなく飛んで来る魔法陣を、ルシファーはひょいっと避けた。が、リリスの魔力はアスタロトの結界に弾かれ、ルシファーに直撃する。彼女の魔力は魔王ルシファーと限りなく近いため、するりと結界を通過した。

「うぎゃああああ!」

「ご安心ください、お似合いですよ」

 にっこり笑う側近アスタロトが手鏡を取りだし、ルシファーへ示す。立派な耳が生えたが、なぜか一緒にツノも現れた。鹿、だろうか? 小さな茶色の耳がぴるぴると揺れる。その脇に牡鹿を思わせるツノがにょきっと……。

「なに、これ。え? なんで」

 驚き過ぎて言葉がない魔王を、イヴが「あぁ!」と指さした。直後、鹿耳が消える。

「水色の魔力だわ、やっぱりイヴだったのね」

 魔力を掻き消したのが娘だと分かり、リリスは安心した。だがルシファーはそうはいかない。魔王の頭の上に生えた枝のようなツノは見事だが、似合うかと言われたら首を傾げる微妙さだった。

「イヴ、これも消してくれ」

 自分で消せばいいのに混乱したルシファーが頼み、イヴは母の首筋に頬を押し当てながら「うぅ゛」と唸る。ぶんぶんと手を振って、ツノを消した。やはり彼女の魔力は魔王や魔王妃の魔法を消滅させるらしい。

「これで検証は終わりましたね。話が事実だと分かったので、どの規模まで消せるのか試しますか?」

「やめて。大陸が壊れるじゃん」

 揶揄う口調のアスタロトへ、ルキフェルは首を横に振った。確かに危険はあるが、その前に止めればいいと考える辺り、アスタロトやベールは危険だ。大公3人でバランスが取れていたのに、新しい大公を魔の森が求めた要因のひとつが、コレだろうか。

「イヴぅ……愛してる、ありがと」

 ちゅっと頬にキスをした途端、ぱちんとリリスの平手がルシファーの頬を張った。何度も言うが、彼女は魔王の結界をスルー出来るので、直撃だ。

「いてっ……ごめん、リリスも大好きで愛してる」

「そうじゃないわ! 赤子のうちはキスしちゃダメって言われたでしょう? イヴが病気になってもいいの?!」

 大人の持つ菌を近づけないというアンナの方針を受け継いだリリスは、ぷりぷりと愛らしい仕草で怒りながら指摘する。だがルシファー達魔族に、そういった概念はなかった。勝手に子どもは成長するし、ある程度危険を遠ざければ病気になることも少ない。

「大丈夫だと思う」

「思うじゃダメなのよ!」

「ごめん」

 最終的に魔王が負けるのは分かっていたので、側近達は顔を突き合わせて別の心配をしていた。この世界で最強のはずの魔王の魔法を打ち消す。イヴのこの能力は、うっかり他の貴族に漏れると危険だった。安全対策を兼ねて、一時的に魔力を封じるのはどうか。

「力がなくても困りますが、多すぎても困るものですね」

 ルシファーを育てた時の苦労を思いだし、アスタロトとベールが肩を竦めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

【柴犬?】の無双から始まる、冒険者科女子高生の日常はかなりおかしいらしい。

加藤伊織
ファンタジー
累計150万PV突破。へっぽこ+もふもふ+腹黒学園ファンタジー。 《毎日7・11・17時更新》サンバ仮面、ダメステアイドル、【柴犬?】いいえ、一番おかしいのは主人公! これは、ダンジョンが当たり前にある世界の中で、冒険者科在籍なのにダンジョン一辺倒ではない女子高生の、かなーりおかしい日常を描いています。 県立高校冒険者科の女子高生・柳川柚香(やながわ ゆずか)は友人と訪れたダンジョンで首輪を付けていない柴犬に出会う。 誰かが連れてきたペットの首輪が抜けてしまったのだろうと思った柚香は、ダンジョン配信をしながら柴犬を保護しようとするが、「おいで」と声を掛けて舐められた瞬間にジョブ【テイマー】と従魔【個体α】を得たというアナウンスが流れた。 柴犬はめちゃくちゃ可愛い! でもこれ本当に柴犬なの? でも柴犬にしか見えないし! そして種族を見たらなんと【柴犬?】って! なんでそこにハテナが付いてるの!? ヤマトと名付けた【柴犬?】は超絶力持ちで柚香を引きずるし、魔物の魔石も食べちゃうなかなかの【?】っぷり。 見ている分には楽しいけれど、やってる本人は大変なダンジョン配信は盛り上がりを見せ、なんと一晩で50万再生というとんでもない事態を引き起こす。 アイドルを助けたり謎のサンバ仮面が現れたり、柚香の周囲はトラブルだらけ。(原因として本人含む) しかも柚香は、そもそも冒険者になりたくて冒険者科に入ったのではなかったのです! そこからもう周囲に突っ込まれていたり! 過激な多方面オタクで若俳沼のママ、驚きの過去を持ってたパパ、そしてダメステータスすぎてブートキャンプさせられる口の悪いリアル癒やし系アイドル(♂)に個性の強すぎるクラスメイトや先輩たち。 ひよっこテイマーの日常は、時々ダン配、日々特訓。友達の配信にも駆り出されるし、何故かアイドル活動までやっちゃったり!? 悩みがあれば雑談配信で相談もします。だって、「三人寄れば文殊の知恵」だからね! 夏休みには合宿もあるし、体育祭も文化祭も大騒ぎ。青春は、爆発だー! 我が道を行くつよつよ【柴犬?】、本当はアイドルしたくない俳優志望のアイドルたちと共に、「50万再生の豪運シンデレラガール・ゆ~か」は今日も全力で突っ走ります! この作品は、他サイト(ハーメルン様、カクヨム様、小説家になろう様)でも連載しております。 ※イメージ画像にAI生成画像を使用しております。

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~転生赤ちゃんクマちゃんのもふもふ溺愛スローライフ~

猫野コロ
ファンタジー
転生したもこもこは動揺を隠し、震える肉球をなめ――思わず一言呟いた。 「クマちゃん……」と。 猫のような、クマのぬいぐるみの赤ちゃんのような――とにかく愛くるしいクマちゃんと、謎の生き物クマちゃんを拾ってしまった面倒見の良い冒険者達のお話。 犬に頭をくわえられ運ばれていたクマちゃんは、かっこいい冒険者のお兄さん達に助けられ、恩返しをしたいと考えた。 冷たそうに見えるが行動は優しい、過保護な最強冒険者の青年ルークに甘やかされながら、冒険者ギルドの皆の助けになるものを作ろうと日々頑張っている。 一生懸命ではあるが、常識はあまりない。生活力は家猫くらい。 甘えっこで寂しがり屋。異世界転生だが何も覚えていないクマちゃんが、アイテム無双する日はくるのだろうか?  時々森の街で起こる不思議な事件は赤ちゃんクマちゃんが可愛い肉球で何でも解決!  最高に愛らしいクマちゃんと、癖の強い冒険者達の愛と癒しと仲良しな日常の物語。 【かんたんな説明:良い声のイケメン達と錬金系ゲームと料理と転生もふもふクマちゃんを混ぜたようなお話。クマちゃん以外は全員男性】 【物語の主成分:甘々・溺愛・愛され・日常・温泉・お料理・お菓子作り・スローライフ・ちびっこ子猫系クマちゃん・良い声・イケボ・イケメン・イケオジ・ややチート・可愛さ最強・ややコメディ・ハッピーエンド!】 《カクヨム、ノベルアップ+、なろう、ノベマ!にも掲載中です》

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

処理中です...