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第三章
87.聞かなくちゃだめか?
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リリィの話は、今後人間をどう管理するかという内容だった。身構えるほどの内容ではなかったことに、ほっとする。作戦については一任されたので、もう少し考える時間ができた。気持ちに余裕のできたオレは、かっこむように飯を食った後でエイシェットと戯れついていた。
ドラゴンと戯れる。言葉にするとペットと遊んだり、恋人とイチャつくように聞こえるが、実態はハードだった。拗ねた彼女の機嫌を取るため、ある程度自由にさせたところ……高い空から落とされ空中キャッチ、崖の上に座って膝枕。挙句に水浴びと称して滝壺に沈められた。ドラゴンの体と頑丈さがあれば、戯れで済むのだろう。普通の人間なら間違いなく死んでいる案件だった。
半死半生で戻ったオレに、フェンリル達が気の毒そうな視線を向ける。滝壺で冷えた体を、彼らは毛皮で温めてくれた。人心地ついたところで、ずっと思わしげな視線を向ける主に声をかける。
「ヴラゴのおっさん、どうしたよ」
「ヴラゴ様だ」
「はいはい。ヴラゴ様、何かお話があるんですか?」
慣れたやり取りに、いつもなら彼の表情は和らぐ。だが今日は強張ったままだった。迷うように口ごもる彼は、ちらりと城を窺ってから手招きする。這って近づいたオレの首根っこを掴むと、彼は森の奥へ飛んだ。昼寝中のエイシェットの上を越え、とんでもない距離を移動させられた。普段なら騒ぐフェンリル達も、大人しく座って見送ったのだから……ある程度話がついていたようだ。
森の奥にある切り立った崖の中腹に空いた洞窟に放り込まれ、転がりながら受け身を取る。
「いてて、擦りむいたぞ」
文句を言うが、ヴラゴは何かを警戒している。吸血種は魔族の中でも強者に分類される上、彼はその長だ。実力は魔族でも上から数える位置にいた。そんなヴラゴの警戒に、オレの笑みが引き攣っていく。嫌な予感がした。
「話がある」
「……聞かなくちゃ、だめか?」
聞いてはいけない。取り返しがつかなくなる気がする。なのに、聞かないと後悔すると告げたヴラゴに、頷くしかなかった。
口も態度も悪いが、彼は懐に入れた身内に甘い。最初は人間だからと餌扱いされたが、今ではそれなりに認めてくれていた。だから、ここまで用心する話をオレに聞かせるのだ。きっと話さなくても彼に害はないだろうに。オレの為に話す彼の緊張感は、身を引き締めた。
洞窟の奥へ入り、冷たい地面に正座する。
「これから話すことはすべて真実だ。他に知っているのは、エルフの長老くらいか。サクヤ、お前はこの世界の理の外に生きている。だから知らなくてはならない」
己を守るための知識だ。そう言われて、首をかしげた。すでにリリィが教えた知識以外に、何かがあるのか? ヴラゴがここまでして伝えるなら、それはリリィが秘密にしている部分だろう。何度か誤魔化された話かも知れない。
「あの……リリィが隠してる話なら」
後で本人から聞くから……そう言いかけたオレの口をヴラゴが押さえた。
「黙って聞け、いいな?」
血走った目に気圧される形で、頷いた。
ドラゴンと戯れる。言葉にするとペットと遊んだり、恋人とイチャつくように聞こえるが、実態はハードだった。拗ねた彼女の機嫌を取るため、ある程度自由にさせたところ……高い空から落とされ空中キャッチ、崖の上に座って膝枕。挙句に水浴びと称して滝壺に沈められた。ドラゴンの体と頑丈さがあれば、戯れで済むのだろう。普通の人間なら間違いなく死んでいる案件だった。
半死半生で戻ったオレに、フェンリル達が気の毒そうな視線を向ける。滝壺で冷えた体を、彼らは毛皮で温めてくれた。人心地ついたところで、ずっと思わしげな視線を向ける主に声をかける。
「ヴラゴのおっさん、どうしたよ」
「ヴラゴ様だ」
「はいはい。ヴラゴ様、何かお話があるんですか?」
慣れたやり取りに、いつもなら彼の表情は和らぐ。だが今日は強張ったままだった。迷うように口ごもる彼は、ちらりと城を窺ってから手招きする。這って近づいたオレの首根っこを掴むと、彼は森の奥へ飛んだ。昼寝中のエイシェットの上を越え、とんでもない距離を移動させられた。普段なら騒ぐフェンリル達も、大人しく座って見送ったのだから……ある程度話がついていたようだ。
森の奥にある切り立った崖の中腹に空いた洞窟に放り込まれ、転がりながら受け身を取る。
「いてて、擦りむいたぞ」
文句を言うが、ヴラゴは何かを警戒している。吸血種は魔族の中でも強者に分類される上、彼はその長だ。実力は魔族でも上から数える位置にいた。そんなヴラゴの警戒に、オレの笑みが引き攣っていく。嫌な予感がした。
「話がある」
「……聞かなくちゃ、だめか?」
聞いてはいけない。取り返しがつかなくなる気がする。なのに、聞かないと後悔すると告げたヴラゴに、頷くしかなかった。
口も態度も悪いが、彼は懐に入れた身内に甘い。最初は人間だからと餌扱いされたが、今ではそれなりに認めてくれていた。だから、ここまで用心する話をオレに聞かせるのだ。きっと話さなくても彼に害はないだろうに。オレの為に話す彼の緊張感は、身を引き締めた。
洞窟の奥へ入り、冷たい地面に正座する。
「これから話すことはすべて真実だ。他に知っているのは、エルフの長老くらいか。サクヤ、お前はこの世界の理の外に生きている。だから知らなくてはならない」
己を守るための知識だ。そう言われて、首をかしげた。すでにリリィが教えた知識以外に、何かがあるのか? ヴラゴがここまでして伝えるなら、それはリリィが秘密にしている部分だろう。何度か誤魔化された話かも知れない。
「あの……リリィが隠してる話なら」
後で本人から聞くから……そう言いかけたオレの口をヴラゴが押さえた。
「黙って聞け、いいな?」
血走った目に気圧される形で、頷いた。
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