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95.大公妃であり女侯爵の未来へ
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黒銀の刺繍が入った白い絹のドレス。純白の結婚衣装を選ばなかったのは、私もヴィルも同じだった。大公家は呪術を扱う一族の総領で、分家の数が非常に多い。一国を形成できるほど、家臣や分家を抱えた本家の財産も権力も大きかった。
ヴィルの両親も祖父母も、その前のご先祖様も。結婚式は身内のみで行い、外部から招待したことはない。それは王族であっても同じだった。そのため結婚式では秘儀が執り行われ、花嫁は何らかの呪術の贄である――なんて噂まである。
おかしなことよね。妻に呪術をかけたら、我が子にも累が及ぶじゃない。政略結婚でも恋愛結婚でも、あり得ない話だった。政略なら利用する妻に呪術をかける必要はないし、恋愛で一緒になる妻を害する理由がない。噂が独り歩きして、勝手に子や孫を増やしていた類ね。
用意されたドレスに手を滑らせる。何度見ても美しいわ。シンプルな色だからこそ、私の赤毛が映える。モノクロの世界に色を足すように。命を象徴する赤、打ち消すような青、白と黒に似た相反する色が加わることで華やかさを纏う。用意された宝石はすべて金剛石だった。
わずかに青を帯びたブルーダイアモンドが、きらきらと月明かりを反射する。私が親指と人差し指で作る輪より大きな、青いダイアを囲む銀鎖の首飾り。鎖の至る所にダイアモンドが輝く。散りばめられた宝石の額は想像するのも恐ろしいわ。耳飾りも大粒で親指の爪ほどもあった。左右の色も同じ大粒なんて、よく見つかったと感心してしまうほど。
これらを身につけて、明日、私はヴィルのお嫁さんになる。ヴィクトール・ラ・ヒ・ルドルフ・フォン・ウント・ツー・アルブレヒツベルガー大公の夫人。今度は過去の結婚とは違った。私はローザリンデ・フォン・アウエンミュラー侯爵として嫁ぎ、両方の称号を手にする。女侯爵であり、大公妃としてヴィルの隣に立つの。
「侯爵様、やっぱりこちらにおられたのですね」
灯りを持ったアンネが近づいて、私は「ごめんなさい」と謝る。美容のために早く寝るように言われたのに、こうして隣の続き部屋で衣装を確認しているなんて。彼女達の準備や手際を信用していないように思われても仕方ないわ。
「嬉しくて仕方ないのは分かります。でも今夜はお休みください。明日の夜は休めませんでしょうから」
後半を友人の言葉として付け足したアンネに、私は笑ってしまった。
「ベッドに戻るわ」
そうね、明日は初夜ですもの。ヴィルと初めて肌を重ねる日、名実ともにあの人の妻になれる。今回のやり直しでレオナルドを拒んだ夜が、こんな幸せな形で返ってくるなんて。
アンネに促されてベッドに横たわったものの、感情が落ち着かない。わくわくする気持ちと、少し気恥ずかしい不思議な感情。どちらも大切に抱き締めて、いつの間にか私は眠っていた。
ヴィルの両親も祖父母も、その前のご先祖様も。結婚式は身内のみで行い、外部から招待したことはない。それは王族であっても同じだった。そのため結婚式では秘儀が執り行われ、花嫁は何らかの呪術の贄である――なんて噂まである。
おかしなことよね。妻に呪術をかけたら、我が子にも累が及ぶじゃない。政略結婚でも恋愛結婚でも、あり得ない話だった。政略なら利用する妻に呪術をかける必要はないし、恋愛で一緒になる妻を害する理由がない。噂が独り歩きして、勝手に子や孫を増やしていた類ね。
用意されたドレスに手を滑らせる。何度見ても美しいわ。シンプルな色だからこそ、私の赤毛が映える。モノクロの世界に色を足すように。命を象徴する赤、打ち消すような青、白と黒に似た相反する色が加わることで華やかさを纏う。用意された宝石はすべて金剛石だった。
わずかに青を帯びたブルーダイアモンドが、きらきらと月明かりを反射する。私が親指と人差し指で作る輪より大きな、青いダイアを囲む銀鎖の首飾り。鎖の至る所にダイアモンドが輝く。散りばめられた宝石の額は想像するのも恐ろしいわ。耳飾りも大粒で親指の爪ほどもあった。左右の色も同じ大粒なんて、よく見つかったと感心してしまうほど。
これらを身につけて、明日、私はヴィルのお嫁さんになる。ヴィクトール・ラ・ヒ・ルドルフ・フォン・ウント・ツー・アルブレヒツベルガー大公の夫人。今度は過去の結婚とは違った。私はローザリンデ・フォン・アウエンミュラー侯爵として嫁ぎ、両方の称号を手にする。女侯爵であり、大公妃としてヴィルの隣に立つの。
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「嬉しくて仕方ないのは分かります。でも今夜はお休みください。明日の夜は休めませんでしょうから」
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「ベッドに戻るわ」
そうね、明日は初夜ですもの。ヴィルと初めて肌を重ねる日、名実ともにあの人の妻になれる。今回のやり直しでレオナルドを拒んだ夜が、こんな幸せな形で返ってくるなんて。
アンネに促されてベッドに横たわったものの、感情が落ち着かない。わくわくする気持ちと、少し気恥ずかしい不思議な感情。どちらも大切に抱き締めて、いつの間にか私は眠っていた。
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