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75.さらにアレンジした作戦です
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作戦会議のために実家へ向かいます。もちろん「帰ります」と連絡しておきました。玄関先でお父様とお母様、お兄様とお義姉様が並んで迎えてくれます。
同行するアレクシス様と腕を組み、客間ではなく居間へ向かいました。もう家族ですもの。当然ですね。
「私、囮になります」
ずばっと作戦を説明したところ「はぁ……」と間抜けな返答がありました。お兄様ですね。隣のお義姉様は目を丸くしましたが、すぐに立ち直りました。
「作戦が決まったのね。最初から説明してください」
私ではなくアレクシス様に問うところが、とても有能ですわ。合理的なミランダ様らしいです。考え込んだお父様は作戦に気付いたようですし、お母様はドレスを選ばなければと呟きました。
私の突拍子もない一言から、きちんと内容を受け取れるのは、さすが両親です。いつも結論だけ説明する私に慣れてしまわれたのかしら。
「補足します」
アレクシス様が説明を始めました。敵が要求しているのは、妖精姫である私です。渡せば攻撃しないと言った。その言葉はすでに各国に広がっています。ならば私が一度あちらの船に移動すれば、そこで成約でした。その後のことまで要求されておりませんもの。
帰る敵が港を出る直前、私は妖精王様のお力で消えます。夜でなくとも、昼間に動ける妖精はおりますので。このくらいの芸当は造作もないと請け負ってくれました。妖精王様の加護を受けたアレクシス様の元へ送ってもらうのです。後はヘンスラー帝国にお帰りいただくだけ。
実はアレクシス様の考えた作戦は別物でした。私を囮に使う気もありませんでした。話を聴いた妖精王様が変更を求めたのです。港から出た船をヘンスラー帝国まで強風で追い返す、と。
ここまで一気に話して、やや温いお茶を飲み干します。そんなアレクシス様にうっとりした目を向ける私へ、視線が集中しました。
「囮……派手な姿がいいわね」
「言い出したら聞かない。妖精王様が守ってくださるなら、お任せしよう」
賛成派の両親に対し、お兄様は渋い顔で指摘しました。
「妖精の力を無効化される心配はないのか」
「ございません」
そんな都合のいい魔法や物質は存在しません。なぜなら、妖精はすべての魔法の根源だからです。もし妖精を制限したり排除する魔法を作れば、原動力となる妖精がいないので発動しません。この辺は妖精王様のお話なので確実でしょう。
お兄様が心配なさったのは、妖精の悪戯を防止する隣国の「妖精避け」の粉ですね。あれは妖精達の好きな粉を撒いて機嫌をとり、お帰りいただくものです。名前ほど物騒な効果はありませんわ。
「だが心配だ」
「侍女として私がついて行きます」
まさかのミランダ様、参戦希望です。驚いた顔をするアレクシス様をよそに、私とお兄様は頷きました。ミランダ様は王妃殿下の護衛として近隣国へ赴いたほど、腕が立つ女性騎士です。お兄様と結婚しなければ、今も護衛騎士筆頭だったでしょう。
私と抱き合っていれば、一緒に回収してもらえます。以前に迷子になった私を回収した際、手にしていたお店の花瓶も一緒に移動しました。でも、念のために触れていなくても帰れるよう、妖精王様にお願いしましょう。
「お願いします、お義姉様」
「当然です。私の可愛い義妹ですもの。取られてなるものですか」
頼もしいです。これで準備万端ですね。周辺国からの圧力や、他国の王族の立ち会いもあるので……引き渡しだけ見せれば、それ以上動けなくなります。ヘンスラー帝国も面目がありますから、非力な美女一人守れず逃げられたなんて。
恥ずかしくて言えませんわ。もし文句をつけられても、渡した状況を他国の王族が証言すれば終わりです。二度目は応じられないと断る理由になります。妖精姫はこの国の宝なので、本来持ち出し厳禁ですのよ。
同行するアレクシス様と腕を組み、客間ではなく居間へ向かいました。もう家族ですもの。当然ですね。
「私、囮になります」
ずばっと作戦を説明したところ「はぁ……」と間抜けな返答がありました。お兄様ですね。隣のお義姉様は目を丸くしましたが、すぐに立ち直りました。
「作戦が決まったのね。最初から説明してください」
私ではなくアレクシス様に問うところが、とても有能ですわ。合理的なミランダ様らしいです。考え込んだお父様は作戦に気付いたようですし、お母様はドレスを選ばなければと呟きました。
私の突拍子もない一言から、きちんと内容を受け取れるのは、さすが両親です。いつも結論だけ説明する私に慣れてしまわれたのかしら。
「補足します」
アレクシス様が説明を始めました。敵が要求しているのは、妖精姫である私です。渡せば攻撃しないと言った。その言葉はすでに各国に広がっています。ならば私が一度あちらの船に移動すれば、そこで成約でした。その後のことまで要求されておりませんもの。
帰る敵が港を出る直前、私は妖精王様のお力で消えます。夜でなくとも、昼間に動ける妖精はおりますので。このくらいの芸当は造作もないと請け負ってくれました。妖精王様の加護を受けたアレクシス様の元へ送ってもらうのです。後はヘンスラー帝国にお帰りいただくだけ。
実はアレクシス様の考えた作戦は別物でした。私を囮に使う気もありませんでした。話を聴いた妖精王様が変更を求めたのです。港から出た船をヘンスラー帝国まで強風で追い返す、と。
ここまで一気に話して、やや温いお茶を飲み干します。そんなアレクシス様にうっとりした目を向ける私へ、視線が集中しました。
「囮……派手な姿がいいわね」
「言い出したら聞かない。妖精王様が守ってくださるなら、お任せしよう」
賛成派の両親に対し、お兄様は渋い顔で指摘しました。
「妖精の力を無効化される心配はないのか」
「ございません」
そんな都合のいい魔法や物質は存在しません。なぜなら、妖精はすべての魔法の根源だからです。もし妖精を制限したり排除する魔法を作れば、原動力となる妖精がいないので発動しません。この辺は妖精王様のお話なので確実でしょう。
お兄様が心配なさったのは、妖精の悪戯を防止する隣国の「妖精避け」の粉ですね。あれは妖精達の好きな粉を撒いて機嫌をとり、お帰りいただくものです。名前ほど物騒な効果はありませんわ。
「だが心配だ」
「侍女として私がついて行きます」
まさかのミランダ様、参戦希望です。驚いた顔をするアレクシス様をよそに、私とお兄様は頷きました。ミランダ様は王妃殿下の護衛として近隣国へ赴いたほど、腕が立つ女性騎士です。お兄様と結婚しなければ、今も護衛騎士筆頭だったでしょう。
私と抱き合っていれば、一緒に回収してもらえます。以前に迷子になった私を回収した際、手にしていたお店の花瓶も一緒に移動しました。でも、念のために触れていなくても帰れるよう、妖精王様にお願いしましょう。
「お願いします、お義姉様」
「当然です。私の可愛い義妹ですもの。取られてなるものですか」
頼もしいです。これで準備万端ですね。周辺国からの圧力や、他国の王族の立ち会いもあるので……引き渡しだけ見せれば、それ以上動けなくなります。ヘンスラー帝国も面目がありますから、非力な美女一人守れず逃げられたなんて。
恥ずかしくて言えませんわ。もし文句をつけられても、渡した状況を他国の王族が証言すれば終わりです。二度目は応じられないと断る理由になります。妖精姫はこの国の宝なので、本来持ち出し厳禁ですのよ。
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